「オスカー・アイザックの抑えた演技と緊迫感に満ちた映像、音楽が、物語に強い吸引力を与えている一作」カード・カウンター yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
オスカー・アイザックの抑えた演技と緊迫感に満ちた映像、音楽が、物語に強い吸引力を与えている一作
カードゲームに精通した元軍人が、自らを罠にはめた元上官の復讐を企む、という予告編から受けた印象から、いわゆるコンゲームと呼ばれる犯罪サスペンスの展開を想像していました。
さらに序盤でカードゲームのルールを端的に解説するカットもあるため、じっくりゲームの駆け引きを見せるのか映画なのと思いきや、本編ではそうした描写はかなり控えめ(やたらUSA!USA!と騒ぐギャンブラーが異様に目立ってたけど)。そのため、手に汗握る神経戦を期待していると、結構意外に思うかも。
むしろ主人公、ウィリアム・テルを演じるオスカー・アイザックの演技自体がカードゲームのプレイヤーそのもで、彼の神秘的なまでに感情を押し殺した表情が、彼が命をかけて大勝負に挑んでいることを雄弁に語っています。
マーティン・スコセッシ監督の『タクシー・ドライバー』(1979)や『レイジング・ブル』(1980)で脚本を務めた(スコセッシは本作では製作総指揮)ポール・シュレーダー監督だけに、謎めいた映像、何を意図しているのかつかみがたい主人公の言動で物語を牽引していく手腕は見事の一言。
アレクサンダー・ディナンの撮影は、例えば3D映像を無理やり2Dで見せているかのような不思議な撮影手法を効果的に用いているし、ロバート・レヴォン・ビーンの音楽は、洗練さと退廃の両面を含んでおり、これら映像や音楽が、さらに作品の吸引力を強めています。ウィリアム・テルを、ある意味地獄に招く若者、カークの危なっかしさを、タイ・シェリダンが巧みに演じており、彼らの緊迫感溢れる対話は本作の一つのクライマックスになっています。
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