「シュレイダー×スコセッシ作品の系譜につながる作品」カード・カウンター 和田隆さんの映画レビュー(感想・評価)
シュレイダー×スコセッシ作品の系譜につながる作品
「タクシードライバー」(1976)、「レイジング・ブル」(1980)の脚本ポール・シュレイダーと監督マーティン・スコセッシという名コンビが再び手掛ける“復讐と贖罪”の傑作スリラーというキャッチコピーを目にしただけで、映画ファンは背中がゾクッとするのではないでしょうか。「カード・カウンター」ではシュレイダーが監督・脚本、スコセッシが製作総指揮を手掛け、怒りに満ちた現代社会に再び“魂の銃弾”を撃ちます。
主人公の元上等兵ウィリアム・テルは、アブグレイブ捕虜収容所での特殊作戦の罪で投獄され、出所後はギャンブラーとして生計を立てていますが、罪の意識にさいなまれ続けています。静謐で暗く重たい作品をイメージするかもしれませんが、ホテルのカジノが舞台であり、カードゲームのシーンなどは、スコセッシ監督の「ハスラー2」(1986)や「カジノ」(1995)のカメラワークや編集、プロダクションデザインを想起させ、エンタテインメント性もあるのが本作の見どころのひとつとなっています。
これまでのシュレイダー×スコセッシ作品の系譜につながる作品であり、ファンの心をくすぐりますが、彼らの作品を見ていなくても充分に見応えのある映画です。過去に犯した罪やトラウマを人は乗り越えることができるのか。他人を、自らを許すことはできるのか。現代社会に満ちている見えない怒りは、幅広い世代に響き、確実に刺さるはずです。
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