あのことのレビュー・感想・評価
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メッセージ性に優れ、サスペンスとして秀逸だが、主人公には同情できない
映画が始まって、スクリーンが「スタンダード」サイズであることに戸惑うが、やがて、その窮屈な画面から、主人公の置かれた八方塞がりな状況と、閉塞感や息苦しさがひしひしと感じられて、このフォーマットが高い効果を上げていることに気付く。
中絶を違法とする社会制度を声高に非難するような映画ではないが、女性が心身に被るダメージの大きさを生々しく描くことにより、その理不尽さと非人道性が肌で感じられるようになっている。
孤独や不安や焦りに苛まれながら、自らの未来を命をかけて掴み取ろうとする女性の、スリルとサスペンスの物語としても、非常に良くできている。
ただし、危険を承知していながらそのような事態を招いた主人公の行動は、軽はずみだと言わざるを得ないし、妊娠の発覚後も、避妊の必要はないと夜遊びを続けるその姿からは、やはり「自業自得」という言葉が思い浮かんでしまう。何よりも、胎児の命を奪うことに一切のためらいも罪悪感も感じていない主人公には、どうしても感情移入することができなかった。
ラストも、一応、ハッビーエンドになっているが、敢えて「学業の道も閉ざされ、何もかも失った」みたいなエンディングにした方が、主人公の置かれた過酷さや、当時の社会制度の非情さが、より際立ったのではないだろうか?
コレはキツい…
コレはキツい
正直なところ
見てられなかった
場面も多々あった
それは自分が男だからか?
でも自分の夢を叶える為に
今は仕方なかった…
たとえ産んだとしても
愛せず憎しみが出る可能性も
なきにしもあらず
望まない妊娠
世界中でいろいろ
ニュースになってるが
難しいですね〜
新聞売りの紹介で。
先日観た「わたしは最悪。」と同じ印象を持った。とても主人公の言動に同意できない。たぶん、彼女が自分の娘だったら思うと胃がキリキリしてくる。あの親父のように呑気にラジオなんて聴いてる場合じゃない。・・あ、そうだこれは1960年代の話だった。中絶が違法だった時代のことだ。はじめにそれを理解してたはずだった。だけど、どこか純真に見えない彼女を応援する気分は湧いてこない。ほう、最後はそれで人生の軌道修正ができたつもりとでも?
テーマは若さ(バカさ)の特権?
1960年のフランスの女子大学生が妊娠する話とのことで、渋谷のBunkamuraまで行きました。だいぶ外国人が増えてきました。スクランブル交差点の何がいいんだか?さっぱりわかりません。相手は消防士とのこと。これは八百屋お七みたいに逢いたさ余りに放火を繰り返すのか?と期待しておりました。
映画では字幕で何週間後とかご丁寧に出ますが、1960年の妊娠反応検査は今と違って簡単ではありません。妊娠かもと気がつくのも6週過ぎでしょう。医師が妊娠の徴候を疑うことができるのも8週過ぎでしょう。超音波検査なんてありません。妊娠証明書が送られてきたのは、今の日本で合法的な堕胎が認可されている12週をとうに過ぎてしまっていていたと思われます。1960年代の妊娠反応検査は今と違って、ウサギに妊婦の尿を注射して確かめるのが一般的で、ウサギが排卵したかどうか一定の時間をおいてから開腹して確かめるのです。ウサギはヒトとは違って、性交すると排卵するので、メスのウサギだけ飼って実験室で行うのです。ヒトでもウサギのように性交するとその刺激で排卵する原始的(失礼)な方も結構いますけど。
インチキ堕胎医のおばさんは最初は子宮の中にゾンデを入れるだけ。出血はしても堕ろすことは難しい。お金だけ取られた主人公が文句を言いにいくと、さらに強力な器械を入れますが、とっても危険。結局、ちゃんとした医療機関に送られて、完璧な堕胎術が施され、自然流産と診断されて、処罰の対象を逃れることができましたが、たくさんの人に迷惑をかけて、命を救ってもらえたからいいようなもの。主人公は複数の男性と付き合って、何回もしていたのに、初めてのたった一回で妊娠したと男性医師に嘘ついてましたから、なかなかしたたかで、強情な女でした。新川優愛さん似の純情派の女優さんでしたが、共感はしづらいですね。実際、寮のトイレでかなり太い臍帯がぶる下がっていて、友達にハサミで切ってと頼む場面があり、20週(5ヶ月)は軽く越えていて、非常に危険な状態でした。それでも鬼の形相で友達に指図する主人公の決意の強さは伝わりますが、地方出身の文学部のお嬢さんですから、医学部や法学部で弁護士希望とかとは違って、学業優先の目的は個人的なもので、共感はしづらく、命を粗末にしているだけと思う人も多いでしょうね。ベネチア国際映画祭での金獅子賞は強くなった女性たちと原作者がノーベル賞作家であることにかなり忖度しているような気がします。妊娠週数ばかり気になって、映画を楽しめなかったです。寮のシャワー室の女子大生達の裸体は悪くはなかったですが、時間ですよの銭湯の脱衣場シーンの方が刺激的だったような。妊娠して落ち込んでいる主人公に騎乗位でイク妙技を指南する3人娘のひとりの熱演はなかなかすごいものがありましたけど。若さの特権の映像表現という点では評価に価するってことでしょうか。自分の都合で実家に帰ってくる娘を迎える両親役の俳優さんの方が共感できてしまいました。
アマゾンやオークションなどで手頃な堕胎器具を自分で買って、やってみようなんて思って真似する人が出て来ないかすごく心配しております。
本当に大切なのはどのことよ?
中絶が違法だった1960年代のフランス。望まぬ妊娠をした女子大生アンヌがお腹の子を“なんとかしよう”と奮闘する話。
いや、いや。アンヌしっかりせえよ。そもそも気持ちのない男遊びが原因で、どちらにも等しく責任がある。確かに中絶できずに女性側だけが痛みを負って傷付くのは残酷だけどどうしても同情できなかった。しかも誰ひとりとしてお腹の子に対する想いが微塵もない。一番かわいそうなのは誰なのか。
これだけ身を削る思いをしても結局アンヌの価値観は何も変わっていないんだろうな。どれだけ優秀か知らんけど、せめて小さな命に詫びて自分を見つめ直して生きていってほしい。
すごい緊張感。孤独。作家になるという決意。エルノーの原作も素晴ら...
すごい緊張感。孤独。作家になるという決意。エルノーの原作も素晴らしいんだと思う。母親は愚か。男たちのダメさ加減。
正視できませんでした。。。
1960年代のフランスでは、中絶が犯罪なのだと初めて知った。
中絶した本人のみならず、処置した医師まで逮捕されるなんて・・・ほんの半世紀前のヨーロッパで、とホントに驚いた。
20代で、内田春菊さんの「ファザーファッカー」を読んだ時の衝撃を思い出した。
この中では、言葉で中絶の過程が記してあった。
創造力豊かな私は、精神的貧血になり、自分に中絶という選択肢はさせないようにしようと決めた。
つまり、結婚前提の相手としか、セックスしないということ。
今回は、映画で、小説よりも中絶の現実が迫ってきた。
ラスト近くのシーンは、今までの体験の中で一番のホラーだった。
私は、はさみでへその緒を切れない。
これは、殺人なのか、女性の権利擁護なのか、判断できなかった。
セックスをすれば、避妊をしていても、妊娠する可能性はあるということ。
その危険性は、女性が100パーセント背負うということ。
中絶するにしろ、出産するにしろ、自分の人生が大きく変わるということ。
それを実感する映画だった。
今年私のNO1映画は、「アプローズ、アプローズ!」だった。
フランス語の響き、おしゃれな映像、人生に与える影響。
フランス映画は、やっぱりすごいな。
しかし、ライブ行く前に観る映画ではなかった…。
そこは、スラムダンクにした方がよかったかな???
欲望と学業への忠誠(男ではなく)。
2021年。オドレイ・ディワン監督。今年のノーベル文学賞を受賞した作家アニー・エルノーの原作を映画化。セックス自体がタブー視される社会風潮のなか、優秀な女子大学生が妊娠する。中絶が違法だった当時、親にも友人にも相談できないまま、学業を優先するためになんとか中絶の方法を探すが、、、という話。2021ヴェネチア金獅子賞。
うっかり冒頭で誘ってくる消防士が相手の男かと思いきや、中盤になって別の幼馴染らしき若い男だと判明。それでも消防士は主人公を誘い続け、主人公もまんざらではない様子なのだ。ここで問題なのは、妊娠ごときで欲望を断念したりしないということだ。しかもその欲望に男は誘惑する者としてしか必要なく、かけがえのない存在ではありえない。学業でも同じ構図で、ある男性教授との関係からわかるのは、教授のようになることではなく、教授が関与している学問・知識を吸収したいという思いなのだ。欲望や学業にはどこまでも忠誠を誓うのだが、人(男)の関与は求めていない。
主人公側からの目線、その主人公を見る目線、主人公側からの目線、という古典的ともいえるカットバックで主人公の苦境への没入感を高めている。男たちがみな間抜けにみえる。
女性に選択させなかった時代
原作を読んでいたので、衝撃的とは言えなかったが、原作の世界観をよく表した俳優たちは力演している。1960年代は、フランスだけでなく同じカトリック国のイタリアなども同様に女性に選択させなかった、ひどい時代である。この後にフェミニズム運動が高揚するのも分かる。日本の場合は戦後早々と経済的理由の中絶を認めたのだが、ピル解禁は遅かった。いずれにしても、女に選択させなかったのである。昔のフランスの大学の文学の授業風景も何か日本と違って面白い。意外にスパルタなんだなと。
凄まじい鑑賞体験
フランスで中絶が違法とされた時代、様々な障壁にぶつかりながらも、主体的に人生を選び取ろうと、もがき苦しみ、最後は命を懸けて自由を勝ち取る女子大生の話。
女性の欲望を、否定も隠しもせず、自然にあるものとして描いている。
少し前にマツコが言っていた、「人は「性」からは逃れられないし、それに対してどう距離を取るのか、眼差すのかがその人の人格形成に大いに影響している」という言葉を、見ている間ずっと考えていた。その意味では、主人公は主体的に性を選ぼうとするし、自分からバーに出掛け、セックスもする。
そこで受ける、男たちからの性的眼差しや偏見の渦、(当時の時代性もあるだろうが)絵に描いたような無理解。
「性」はいくら剥ぎ取ろうとしても脱げない仮面であり、引き剥がそうとしてはこびり着いて執着して回る、脅迫観念のようなものである。
この映画で印象的なのは、音と息づかいである。決定的な場面こそ見せないが、主人公視点からの苦しい表情や痛みに悶え苦しむ声、押し殺しながらも耐え切れずに漏れる息づかいで、観客を深い深い身体の海に引き摺り込む。
最後に、ある場所で静寂を破るように、静かに、確かに響く、ある音。そこで観客の緊張に決着が着き、一瞬、終止符が打たれる。からの、ブレながら何が起こったか見せようとするカメラワークと主人公の一言で、それまで緊張を続けてきた観客の鼓動の速さにドライブがかかる。あー、これはまだ終わりではない。
最後も、晴れてよかったでは終わらない苦さが残る。苦さというより、非常にひりついた痛みである。
凄まじい鑑賞体験。覚悟が出来れば、ぜひ劇場で見て欲しい作品。
望まない妊娠は救済されるべきか?
本年度のノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーが、自らの体験を基に書いた小説『事件』を原作とする映画。中絶が法律により禁じられていた1960年代のフランスを舞台に、望まぬ妊娠をしてしまった女子大生が送る先の見えない日々を描いた作品だ。
原作でもかなりショッキングな場面が多々あり、映画は見送ろうかなと思っていたが、いやあ観てよかった。
女性のみが妊娠できるという当たり前の事実が、ある人達にとっては陥穽となること、中絶という最後の選択肢を取り上げられてしまった残酷さ、男という生き物のどうしようもない愚かさがこれでもかと晒される。
アメリカでは中絶問題でまた国が真っ二つに割れ、中絶は認められているものの薬物は禁止という我が国のような例もあり、なかなか一筋縄ではいかないようだ。
ホラーよりもよっぽどこわいシーンもあり万人には薦めないが、観て、感じて、考えてほしい映画だった。
痛いほどに女性目線が伝わってくる
ベネチア国際映画祭の金獅子賞を獲ったとのことで鑑賞。
終始、主人公のアンヌ目線で生活と苦悩を追っていく。
女子寮での生活、産婦人科などなど普段は描かないシーンが多く、
男性の自分にとっては最初から最後まで、本当に新鮮であり、刺激的であり、また疲れる映画であった。
自分の命を賭してまで自分の人生を生きるのだという意思、そしてそれをゆるなさい男性中心の社会を主人公目線を貫くことで鮮烈に描いていた。
比較的きれいな画、町並みが多く、「中絶が違法だった時代」ということぐらいで、
途中まで1960年くらいという設定がわからず、そこは少し違和感を感じたものの、
ただ、現代のものと見間違うくらい、どこか現代の問題とリンクしている感覚はあった。
日本では到底このような作品は表現できないと感じた。
女性側から見た女性の現実
男は辛いし、デートで鑑賞も辛い。こんな映画が商業的に受け入れられる時代になりました。主婦マリーとかフランス映画はこの話題随分昔から掘り下げ続けてますねー。(米も「17歳の瞳」とかあるか)
それでイオネスコさんですか。昔からあんまり変わってない気がするです。ルアナは「燃ゆる」でデジャブですね。個人的にはpartager du chewing-gumが壺
映画化は成功している。
今年のノーベル文学賞授賞作家が原作者。
中絶天国である日本では、ちょっと想像出来ない映画だ。もちろん、戦前の日本には刑法に堕胎罪があり、中絶手術が禁止されていたと思う。
戦後、廃虚となった敗戦国日本から復興する際の経済状況により、中絶が認められたと推測する。亡くなった母から食糧難は戦中より戦後が酷かったと聞いている。
予期せぬ妊娠をしてしまった主人公の意思の固い事に先ず驚く。当初から出産を拒否し、流産・中絶を選択する不安と苦悩がよく描かれていている。成功作品だ。私の好みではないけれど、鑑賞の価値はある。
Pain
意図せぬ妊娠という点では4月に公開された「TITANE」が見比べる作品になりました。あちらに比べるとエンタメには昇華できてなかったなという印象を持ちしました。
女性が感じる出産の痛さは映像を通してグロテスクな感じもあいまり直視するのも厳しいくらいのものが体感できました。語り文句の「彼女を体験する」は事実だったんだなと思いました。
ただ、それ以外が個人的に面白いと言えるまではいかず、少し身勝手だなと思ってしまう場面が多かったのが事実です。出産するのではなく、子供を堕ろすことを先に考えている割には行動が鈍く、そしてそこまで焦っていないように見えたのが要因だと思います。このテーマにそこまで精通していないというのも大きいとは思いますが。
刺さる人にはとことん刺さるんだろうなという作品でした。う〜ん金獅子賞との相性はイマイチかもしれないです。
鑑賞日 12/7
鑑賞時間 18:40〜20:30
座席 C-3
女性は強し
原題:L'evenement(エヴェヌマン)英題:Happening
訳:事件・出来事なので
「あの事」が正解か。
ずっと「あの子と」と思っていた。
作家アニーエルノーの実体験を元にした小説を原作とする。
フランスの歴史(ヴィシー政権あたり)を把握しておくと理解が深まる。
ナチスに屈服したヴィシー政権下、第1次大戦敗北の原因が「子どもと武器が少なすぎた」として、出生率向上を掲げ、堕胎施術常習者を「国家に対する殺人者」として死刑にできるよう法律を改悪した。
実際、1943年に普通の主婦だったマリー・ルイーズ・ジローがギロチンにて処刑されている。(この人を題材にした映画もある)
1975年に中絶が合法化する流れができるまで、何十年も中絶禁止の社会が存在し続けた。
このような世相の1963年がこの物語の舞台である。
が、主人公は普通に男遊びもしており、割としたたかである。
あらすじ以上の事はない。悪くもないけれど。一つ素晴らしい点は、フレ...
あらすじ以上の事はない。悪くもないけれど。一つ素晴らしい点は、フレームサイズをスタンダード(1:1.6)にしたこと。この演出は文句無しに良い判断。
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