劇場公開日 2021年11月19日

「強烈な臭いを放つ心理サスペンス」パワー・オブ・ザ・ドッグ とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0強烈な臭いを放つ心理サスペンス

2021年12月1日
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《障害物》= 男を強くするのは苦悩と忍耐 ---【男"らしさ"】(社会における固定観念)に囚われてベネディクト・カンバーバッチ × ジェーン・カンピオンが凄い!

最後ゾッとした…けど何より怖かったのはまだ始まって1時間くらいしか経っていないと思っていたらもう2時間経っていたこと!正直(一見シンプルながら)難しかった!まだうまく言い表せられないけど凄かった。拒むことなど到底できない力強さで迫ってくる。
時に背筋の凍るような、ただならぬ雰囲気が作品全体を包み込む。胃のキリキリするような、けど目の離せない不穏な空気を演出する。その荘厳さに畏怖の念すら覚えてしまいそう。その中心にいるのは頭が良くて、臭くて、異様な威厳に満ちては、周囲に一目置かれ恐れられる牧場主ベネディクト・カンバーバッチ。出てくると緊張感が走り、作品全体から始終''ただ者じゃない"感えぐい(ex.『ジェシー・ジェームズの暗殺』ブラピ)。と、今回こそベネディクト・カンバーバッチがオスカーに輝く(かもしれない)!英国が誇る演技派 & 人間としても尊敬できる彼だけど、本作でも徹底した役作りをし、キャリアトップレベルの演技を見せている。例えば…
・キルスティン・ダンストとは話し合い、撮影現場で互いに話さないようにしていた。
・バンジョーの練習にも力を注ぎ、作中では(予期せぬタイミングで?)見事な演奏を披露している。
・フィルのように常に体から悪臭を放つため風呂に入らなかった。
・フィルのようにフィルター無しの手巻き煙草をとにかく吸い続け、ニコチン中毒に撮影中3回もなっていた。

「母さんは僕が守る」抑圧。そんな強烈フィルの弟とフィルの嫌がらせに遭う未亡人には、『ファーゴ』シーズン2以来の共演となるジェシー・プレモンスとキルスティン・ダンスト演技派夫婦(実生活でもパートナー)。彼女はフィルの執拗な嫌がらせによりアルコール依存症になっていき…。それを見守る少年の眼差し。タイトルが指す"犬の力"とは何なのだろうか?それは野性的な何か。フィルもローズも"こうあるべきだ"という"らしさ"に囚われている。ジェーン・カンピオン監督が得意の、きれいな風景と(弱く脆く)醜い人間の内側を克明に映し出していく。プロットあらすじなど一見説明することの多くないシンプルさの中に、章立てられた本作のように、幾重にもなり複雑に絡み合った人間模様が混在している。ジョニー・グリーンウッド(レディオヘッド)による音楽スコアは今回もまた素晴らしかった。戦慄。

P.S. ずっと楽しみにしていた本作だったけど、これは確かに映画館でも見たいと普段以上に感じた

いいことだな、ひとりじゃないって
いい旅でした
炭疽症
ロープ
吠えてる犬 You just saw that?!
皮 I needed them. They were mine!
剣と犬の力から私を解き放て

とぽとぽ