劇場公開日 2023年11月17日

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「自由へ!」モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0自由へ!

2023年11月29日
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鑑賞方法:映画館

名曲「モナ・リザ」と「ブラッドムーン」にインスパイアされたであろう一本。
ギレルモ・デル・トロの影響というか彼流のファンタジーに似たトーンではあるが脚本、演出ともにオリジナリティは高く見終えた後の満足度は高い。
いわゆる超能力少女の話ではない。統合失調症の患者として精神病院に収容されているモナ・リーはその不幸な生まれ育ちと虐待による不安と恐怖感から心を閉ざしている。対人関係は極めてぎこちなく自らの感情を上手く表すこともできない。つまり彼女は自閉と精神病院に閉じ込められる二重の拘束を受けている。脱走は成功するが彼女はファズに会うまでは拘束衣を取らない。これは精神的な俘囚の状態が続いていることを示している。(姿は日本映画の貞子に似ている。貞子もある意味現世の俘囚である)
異常能力はこの状況の見返りとしてGiftedされたものなのだろう。ただし、自分を守る時と、ボニー・ベルが利用したように、保護している人に要求された時にしか力は使うことができないようだ。
この物語は、このモナ・リーがボニー・ベルの息子であるチャーリーとの交流により、自分の心の壁を破って自由になっていく姿を描いている。チャーリーから音楽に合わせて踊ることを教わるところ、そして「モナ・リザ」のポーズと同じデッサンをチャーリーが描くところ(あの美しい歌が流れる)は感動的である。
一方で警察からの逃亡も映画では描かれていく。ファズに力を借りて、モナ・リーは空港から逃れようとするのだか最早、異能を発揮することはない。彼女は物理的にも精神的にも自由になるのだから。自由になればおそらく異能は失われる。
自由への希求はデル・トロ作品の共通テーマである。この点でもこの作品はデル・トロ作品と合い通じるところがあるのかもしれない。

あんちゃん