「Escape」モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン ブレミンさんの映画レビュー(感想・評価)
Escape
次世代のタランティーノとかいう抜かした宣伝文句を作った人に多少の怒りは湧いていましたが、本編の不思議な魅力に翻弄されっぱなしでした。
突然覚醒した少女が人を操ってめちゃくちゃにするのかと思いきや、それは序盤だけで、途中からは助けた女性に利用されたり、その子供と一緒に逃避行したりと、超能力ものとはまた違う終着点になっていたのが面白かったです。
序盤、施設の職員にいびられている時に、突如人の行動を操る能力を手に入れて、職員の足を刃物でぶっ刺して行動不能にさせた上に手錠を解錠させたりと、能力を使いこなすスピードの早さには目を見張るものがありました。
監視員も操ってテレビに顔面を突っ込ませて、チーズスナックを奪って脱出というスムーズさ。チーズスナックに執着した後は、なんかヤンチャやってそうなグループが突然紛れ込んだモナ・リザをすんなり受け入れてビールをあげて、その上靴までくれて(半ば強引な形で仲間内で渡された)、街の行き方まで教えてくれるという、ここからこの作品にある優しさというのが存在していたんだなと思いました。
その街で出会ったこれまたチャラい青年のファズも、体目当てな節はありつつも、モナがお金を払わずに出て行こうとしたところの料金を払ったり、薄着のモナにTシャツをあげたり(半ば強制的だったけれど)、やってもキスだけというかわいらしさ。
後半で国外逃亡を目論んでいるモナと少年をなんの疑いもなく自分の家に招き入れて、その上目玉焼きをノリノリで作って振舞ってくれる優しさを見せてくれます。
たまたま腹を空かせたタイミングでハンバーガーショップで出会したバニーを助けたところで、バニーの悪事の手伝いをする事になるのが一つの機転になっていました。
最初はスプリットの客のチップを、モナの超能力で全額払わせるといったまだなんとかなりそうなものですが、ATMを使っている人を操って金を引き出すのはもう犯罪なので逃げ場がないですし、バニーもツメが甘く、監視カメラにバッチリ映っていて追われる始末、そんな最中でバニーの息子とヘドバンをはじめ、交流を深めていくごとになんとか現状を抜け出そうと2人で決意するシーンがとても良かったです。
ファズが車で空港まで送ってくれた時に、モナがありがとうと発するシーンは目に見えての成長が感じ取れますし、ファズがこれまた引き留める事なく、強く背中を押して行かせてあげるシーンがとても素敵でした。少年を送り出す時も守ってやれよ的な感じのグータッチとかもうマジで良いやつだなと思いました。
少年が自分を犠牲にして、モナ・リザを国外へと逃げさせる手を打ったシーンは中々感動的でした。状況を見極めてアジア系の人を捕まえて、警察の目をそちらに向けるという頭の回転の速さを見せつけますし、警察に対しても口を割らないカッコよさを見せてくれました。涙も笑顔もとても素敵で、将来良い俳優になるだろうなーと思いました。
少年とボニーの再会、心を入れ替えたボニーとの関係性は良いものになっていくと思いますし、結果的にモナが来たことの変化は大きかったんだなと思いました。飛行機で向かう新天地、モナはどうやって生きていくのか、余韻残しの最後もとても好みでした。
役者陣が本当に上手で引き込まれましたし、特にエバン・ウィッテンくんの喜怒哀楽の表現が最高でした。
今まで観た映画の中でも型にとらわれない不思議な魅力を発していた作品でした。アナー監督の次回作も気になりますし、過去作も見てみようと思いました。中々の掘り出し物でした。
鑑賞日 11/21
鑑賞時間 17:00〜18:55
座席 D-2