パラレル・マザーズのレビュー・感想・評価
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運命に翻弄される女性たちの悲しみ
赤ん坊を取り違えた二人のシングルマザーの数奇な運命をスペイン内乱の歴史を交えて描いた作品。
監督、脚本はペドロ・アルモドヴァル。かつてのキッチュな露悪趣味を封印し、今や完全にベテランの貫禄で堅牢な手腕を発揮している作家だけに今回も安定した力量を見せている。
まず何と言っても、服飾や小物、内装を含め、スタイリッシュにコントロールされた色彩感性は相変わらず素晴らしい。
また、部屋のドアを介した時制の切り替えにも唸らされた。こうした意表を突いたテクニカルな演出は氏の作品では珍しいのではないだろうか。新鮮に思えた。
一方、物語も二人のシングルマザー、ジャニスとアナの関係を軸にスリリングに展開されており、最後まで面白く観ることが出来た。すでに予告編でネタバレされているが、赤ん坊の取り違えを物語のフックにしながら、ジャニスとアナの運命がドラマチックに筆致されている。
ちなみに、赤ん坊の取り違えと言えば、是枝裕和監督の「そして父になる」や、イスラエルを舞台にした「もうひとりの息子」といった作品が思い出される。現実的にはありえなさそうな話であるが、映画としてみれば非常に面白い”仕掛け”のように思う。この手の問題は夫々の家族がどのように解決していくか…という所が見所なわけだが、今回も正にそこがクライマックスとなっている。
ただ、本作は終盤にかけて物語が若干予想外の方向へと進んでいき、これには正直少し戸惑いを覚えた。
運命に翻弄された女性の悲劇を、過去の<死>と現在の<生>を対比させることによって表現したかったのかもしれない。その作劇的な狙いは理解できるのだが、そうであればこの結末に持って行くための”お膳立て”は周到に積み上げるべきだったのではないだろうか。やや取って付けたように思えてならない。
尚、今回のドラマはスペイン内戦の歴史を知らないとピンと来ない人も多いかもしれない。できれば、そのあたりの歴史的背景を頭に入れてから観た方が理解しやすいだろう。
キャストでは、ジャニスを演じたペネロペ・クルスの好演が素晴らしかった。特に、終盤の憔悴の表情に見応えを感じた。
また、アナ役の女優も独特の中性的なルックスが上手くハマっていたように思う。
血に纏わる映画
スペイン内戦で殺された祖父の遺骨の発掘に80年という歳月をも超えて拘るジェーン(ベネロペ・クルス)は娘を取り違えられたシングルマザーでもある。どちらも血に纏わる問題である。
赤ちゃんの取り違えでは、取り違えられた相方の若い母親アナとの関わり、やりとりがいろいろなことを考えさせられる。アナの行動は若さゆえか、国民性の違いか分からないけど、ジェーンに対する気遣いがなく、直接的に怒りを表現していたのには驚かされた。しかし、すぐに和解し、よい人間関係を回復できたのは見習うべきなんだろうなと感じた。日本人だったらあのように振る舞えるか、あるいはわだかまりなく関係を修復できるだろうかと考えながら観てました。遺骨の回収、ジェーンとアナ、ジェーンとアルトゥロとの関係を含め、題材は重いものの、ハッピーエンドの楽しい映画でした。
アルモドバル監督の撮る映像は、どれも vivid な Color が美しい。この映画も例外ではなく、とりわけ血を意識してか、赤の美しさが印象的でした。
DNAと愛情の狭間で。
産院での取り違えものは数あれど「取り違え先の母親に出会えたときにはそちらの子(自分の実子であったはずの子)は亡くなっていた」という何重にも辛い状況を描いた作品。
死のショックと、この子(本当は相手の女性の実子)まで手放せるのか…重い設定ながら納得いくラストまで描き切った。
写真家のジャニス(ペネロペ・クルス)は、故郷の村にあるスペイン内戦...
写真家のジャニス(ペネロペ・クルス)は、故郷の村にあるスペイン内戦初期の遺骸の発掘を通じて法医人類学者のアルトゥロ(イスラエル・エレハルデ)と知り合う。
アルトゥロは妻帯者であったが互いに惹かれ、ジャニスは妊娠する。
出産を控えて入院した病院で同室になったのは17歳のアナ(ミレナ・スミット)。
ともに予想外の妊娠だったが、シングルマザーとなることを決意したふたり。
同じ日に、ふたりとも無事に出産。
出産をしたジャニスのもとへ、妊娠後に疎遠となったアルトゥロが現れ、ジャニスが産んだ女児をみるが、ふたりのどちらにも似ていないことに気づく。
産みの親のジャニスはにわかには信じられななかったが、不安からDNA鑑定をしたところ、血縁関係は否定されてしまう・・・
といったところから始まる物語は、是枝裕和監督『そして父になる』などでも描かれた「予期せぬ取り換えっ子」の物語で目新しさはありません。
(ここのところ、目新しさはありません、と頻繁に書いている気がしますが)
で、目新しくなくても面白ければいいんです。
が、あまり面白くないんだなぁ、これが。
よくある「取り換えっ子」物語だと、子どもたちが産みの親のもとへ戻ってチャンチャンとか、産みの親より育ての親だということで取り換えられたままでチャンチャンとかなのだが、この映画ではジャニスが産んだ子どもは乳幼児突然死症候群で亡くなってしまうにもかかわらず。
たぶん、ふたりの取り換えっ子物語よりも、冒頭に語られるスペイン内戦初期の惨状や、そんな悲惨な中でもシングルマザーとして生き抜いてきたジャニスの母や祖母の物語に気を奪われてしまったせいでしょう。
なので、終幕近くの、遺骸発掘と生存者たちの語りのシーンのほうが俄然興味深く、いやぁ、こちらの方をメインで描いてほしかったなぁ、というのが鑑賞後の正直な感想でした。
血の繋がりか、親の愛か
「そして父になる」ならぬ「そして母になる」か。
だが、乳児の取り違えの問題がメインではあるが、そこにとどめず、地域での血の繋がり、そして、過去にあった惨事を風化させてはいけない、という社会派の映画であった。
ペネロペ・クルス演じる働く女性像も現代的であるし、ありきたりのテーマに現代の世相を映している。
急にアナにカミングアウトするシーンに、違和感を感じたが、今回のテーマである、「血の繋がり」を考えたとき、血縁を意識した曽祖父の遺骨発掘に望むまえに、自分に嘘はつけなかったのだろう。
騙し通しても、自分がやっていることは、ある意味、真実をうやむやにし、血縁を途絶えさせるという点で内紛時代と同じことをやってしまっていることになる。
「取り違え」と「過去の内乱」2つのテーマを一つの作品にまとめている試みは面白いが、あまりに違うシーン構成になっているため、もっときれいに接続はしてほしかった。
わかんない。
シングルマザーとして生きると決めた女性。同じ病室で20も違う若い母親と同室になりお互い励まし合い出産。。。
どうもお話の大筋が内戦の歴史なのか母親である意味なのか、そのへんが曖昧な上に、家庭のある人との子供、若い女性の強要による妊娠。同性の愛、血の繋がり、家族、色んなものをちょっとずつかいつまんでひとつの箱の中に押し込めたような。。。なので最後のシーンは違和感アリアリ。
日本にも子供の取り違えの映画はあり、それはどう折り合いをつけるかがテーマだったけど、本作は結局男も女も愛し合っちゃってみんな家族!!、オジィもオバァも友達もみんな家族!! 結局家族!! って感じだった。
自分には理解不能なお話。
作品の構成自体はシーン毎にうまぁく話を切って、見やすく入り込みやすくなっててあきはしなかった。
面白かったです。
血筋が大事。
自分と同じ日に出産をした若い母親アナの子供と自分の子供が取り違えられたことを知りつつ、それを隠しながら若い母親と共同生活を送る話。
今作、今の映画には珍しくめちゃくちゃ血の繋がりを大事にする映画。単純に取り違えられた子供をどうする?という話だけでなく、やたら子供が誰に似てるか気にする登場人物達や(ほぼレイプなのにその中から誰に似てるか探すのはちょっとさすがに引いた)、自分の本当の子供だとわかった瞬間あっさり連れて帰りやがるアナ。
さらに、毒親でも母親との繋がりを途絶えさせないようにアナに説得する主人公など、血の繋がり否定派な私にとってはちょっと合わない部分もあった。
でも、ここまで血縁にこだわるのは根底に内紛によって無惨な死を遂げた先祖に対する思いがあるから。劇中に出てくる曾祖父や祖父の骨を探している人々は皆、当時幼かったのでほぼ神話のような人から聞いた家族の話を家族の思い出として大事にしている。
この人達と、家族との関係が上手くいっていないアナや子供のルーツを隠そうとする主人公が対比されてるのかなぁ。自分も実の親とはほぼまともな会話がないからね、反省したよ、少しはね。
自分の血筋から目を背けることは決して許されない、という強いメッセージが赤色で強調されてるけど、今年公開された、血筋を否定してる『ハウス・オブ・グッチ』とは真逆の使い方で面白かった。
重い話でもあるけど、普通にスペインの裕福な暮らしが見てて楽しかった。そして主人公イケすぎ。基本的にずっと股開いてる座り方なのもかっこよかったし、私には好意的に映った。
ジャニスの部屋に住みたい
映画の登場人物に正しさを求めてもしょうがないんだけど、アナにイライラする! 妊娠する顛末もそりゃ男どもが最低最悪だけどもう少しだけ賢明になれなかったのかと思ってしまうし、芋の皮むきができないって言い出すのいくら10代でもちょっと引くし、ジャニスを責めるのは意味が分からん。この私が、ペネロペ・クルスと美形女子の百合要素を楽しめないって相当だよ……(演じたミレナ・スミットは初めて観たけど素敵)。
それにしてもペネロペは今回もかわいいなー。綺麗な顔してるなー。ペネロペの顔見てるだけで2時間もつ。ルッキズムのそしりは甘んじて受ける。あとジャニスの部屋や服がとてもいい。アパレル系のカメラマン設定だから遠慮なくおしゃれ。
スペイン内戦のことは記憶からすっかり抜け落ちていたけど、極右のファランヘ党が反乱を起こして勝ってしまい、フランシスコ・フランコの独裁政治が始まったやつね。なるほど。
と復習してみたところで、祖父や曾祖父の魂を安んじることと、生まれてきた(くる)子どもと未来を生きることと、どっちも大切だね的なプロット、やっぱりちょっと粗いなあという印象にはなる。
歴史と向き合う
序盤の状況説明のスピーディーな鮮やかさと展開、終盤の転調と脚本が巧みだなあと思った。
アルモドバルは今までもスペイン内戦を必ず仄めかしてきたけど、今回はより直接的に描く。そういうことかーと思って、過去作も見返したくなった。直接的な同性愛描写は珍しいのでは。
母性礼賛ではなく、父親の不在、不在の裏にある歴史。子供より夢を優先する母性の薄い母も断罪することなく受け入れる。母と娘のように料理を教える。
ガラガラ、義眼、指輪、写真、そこにいた証。
50代のペネロペが30代を演じているけど違和感なし。タバコを吸う姿がかっこいい。人参を切るのが下手。
演劇をやるには金持ちに見えすぎるというセリフは笑った。
私も自国の歴史と向き合う頃なのかもしれないと思った。でもどうやって?
中庭のある家に住みたい。
いつも通りファッションもインテリアも素敵なのだけど、アナがスポーティな格好をしていてフレッシュだった。
理論的に間違っていても、人間的に正し選択がもたらす何か。
アルモドバルは好きな監督の一人。
タイトルを見ただけで期待値マックスです。
見始めてすぐ、これって関係性(の変化)に焦点を当てて観るのが良いのかな?と思った。
関係性に注意して観てみると、とてもスリリングだし、感情を揺さぶられます。
理論的には間違っているかもしれないけれど、人間的には(そして状況的にも)正しい選択をする。
そしてその選択が、時間が経つほどに深い影響を与えてしまうことを予感しながら、俯瞰している。
赤ちゃん、母、おばあさん、と続いて、俯瞰的な位置で見ている自分も、なんとなく母的な気持ちで見てしまう(男性ですが)。
これは期待値を軽く超えてきたな、と思っていたら、終盤になって登場人物が増えてしまった。
人物が増え、展開も早くて、関係性で見たくても追いつかなくなってしまった。
そして映画が終わってしまった。
体感では45分くらいの短さ。
集中してみることができたにしても、あっという間でびっくりした。
面白さを言葉にできないのがもどかしい。
今までアルモドバル作品の見方を間違っていたかもしれないと、自問自答しています。
終盤についてはいずれまた見直さねばと思います。
すごい映画だった。
終盤が理解できていたら、満点だったのに、悔しい!
圧倒的感動で迷いなく今年のNO.1に、やっと巡り会えた喜び。過去・現在・未来と、父や夫のいないパラレル・マザー達の繋がりを通して紡がれる愛と家族の物語。
①ペドロ・アルモドバルは既に現代映画界の名匠だが、この映画で本当の巨匠になったように思う。
②映画の外枠として、スペイン内戦で殺された祖父や曾祖父の遺骨を発掘することを願う女達と遺骨がやっと発掘される話が、ブックエンドの様な形で真ん中の様々な母達・女達の物語を挟んでいる。
これにより、これまでの豊穣ではあったがどちらかと言えばパーソナルな話を描いてきたアルモドバルの映画の世界が更に拡がった。
戦争で夫や父を失った妻や娘の物語は、スペイン内戦にとどまらず世界共通の悲劇であり、現在進行中の悲劇でもあるからだ。
一国の独特な歴史の悲劇を描きながらそれがユニバーサルな視点を持ち得るという好例である。
日本も決して他人事ではない。私の母方の大叔父もインパール作戦でインドのアッサムで戦死し(餓死だったらしい)未だに遺骨を捜せない。捜そうにも未だに現地に日本人が入れないから仕方ないが(イギリス兵の墓地はあるのに)、大叔父の家族も四散してしまいほぼ忘却の彼方である。
それでも、南洋の島々では引き続き遺骨探しは続けられているし、世界の他の場所でも行われているだろう。非業に亡くなった家族を骨になっても引き取りたい、家族と同じ墓に葬ってあげたい、という想いは世界共通、人類共通のものなのだろう。
私は世間の人々ほど家族に拘泥しない人間だが(だから結婚しない。でも人生の大半を家族に尽くしてきたので世間からは良い息子だと評されている。世間ってチョロいとは思わないけれど)、そういう想いを軽んじるほど唐変木ではない。
③この映画に登場する女達も父、祖父、曾祖父の遺骨を何とか家族の墓に埋葬したいと願い、ラストやっと掘り出された骸骨たちとそれを感極まって眺める女達の姿は胸が震えるほど感動的である。
劇中ジャニスがアナに“自分の国の歴史くらい知りなさい”という台詞は今の日本でも耳が痛いのではないだろうか。
④間に挟まれた映画の本筋では夫や父のいない様々な女達・母達の物語―これまでのペドロ・アルモドバルの映画で描かれてきた母と娘、女達の物語の変奏曲―が奏でられていく。
中心となる嬰児取り違えは山口百恵の『赤いシリーズ』じゃあるまいし、2020年代ではちょっと無理気味な設定かとそこが気になったが(映画の大きな瑕疵になる程では無いが)、そう言えば我が日本でも数年前に公開された『そして父になる』も嬰児取り違えがテーマだったなぁ、と。この映画を観たことほぼ忘れてたが、それ程古いテーマでもないらしい。
④これまで数々のアルモドバル監督の映画で好演・名演を見せてきたペネロペ・クルスがここでも圧倒的な名演である。
予想外の妊娠ながら(避妊はしなかった?)40になる前に母になりたいという考えから(母になるという想いはそれ程強いものなのか残念ながら男の私にはよくわからないが)シングルマザーの道を選ぶが、生物学上の筈の父親の一言から疑惑が湧き、DNA鑑定の結果自分の娘だと思っていた赤ん坊は血が繋がっていないことが判った時のショック。もしかしたら自分の本当の娘かも知れない赤ん坊の死を知った時のショック。真実をなかなかアナに告げられない葛藤(もう一人の娘も失うかも知れない恐れ)。アナへの愛しさと羨ましさとが混ざった複雑な思い。
血脈
シングルマザー
あと子供がどうたらという情報だけで
鑑賞
子供の取り違え
までは良くある話だなぁ
自分の先祖に対する愛というか
執念というか
曽祖父の事をあんなに強く考えてなかったから、民族の違いを感じた
そして本当に私は平和ボケしてると感情が芽生えた映画
親子、
母娘、
血脈、
を描いた映画
ネトフリ映画
グッドナースもそうだけど
アップが多くて映画館向けに作られてないように感じた
ペネロペが本当に綺麗✨
ひとことReview!
シングル・マザーの子供が取り違えられた件と、過去の内戦で亡くなった先祖について探る作りは、なんだか焦点が定まらない感じ。だがスペインの内情を知る意味を考えると、いい勉強か。
無知は恥ずかしい
「ペネロペ、最高の演技!」と称賛され
ベネチア国際映画祭ではボルピ杯を受賞し
(最優秀女優賞)
アカデミー賞でも主演女優賞にノミネートされた。
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スペイン内戦時の非人道的行為による
被害者たちをちゃんと特定し埋葬したいジャニス(ペネロペ)
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「歴史の記憶法(名誉回復法)」とは
内戦及び独裁政権下で迫害または
暴力を受けた人々の名誉を回復し
遺族への補償をする法律。
みんな当たり前のように知っているのだろうか。
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鑑賞中にはスペイン内戦の事も
恥ずかしながら知らなかったから、
もちろんこんな法制度があることも知らず…
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なので、予告から想像していた作品とは
全く異なったものだった故に、鑑賞中~直後の
評価は「5」であった(笑)
だって、内戦と取り違えがどう絡んでいくのか
ちんぷんかんぷんだったんだもの。
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鑑賞した後、ほかの方々のレビューを
読んでみて「あぁなんて浅はか」と気付いた。
これは、現代社会のいくつかもの問題点を
「血の繋がり(DNA検査)」を通じて
今もなお続く戦争(内戦)の愚かさについて
観る側に考えることを投げかけた作品なのだと思う。
たぶんw
スペイン巨匠監督が紡ぐ"現実に向き合う女たち"が死者と対話する映画
仕事で出会った一夜限りの関係の男性との子を身籠り年齢に鑑みてこれが母になる最後のチャンスと産み育てる決意をした女性と、クラスメイトの少年たちからの集団レイプによって身籠った子を悩んだ末に両親の反対も押し切って生かす決断をした少女、この二人のシングルマザーが見舞われる我が子の取り違えとそれに対する真実の希求の物語です。
こうした己の都合とモラルとの相克はドラマになり易く、おそらくは邦画や他の地域の洋画であれば、そのままジャニスが口を噤んでセシリアが大きくなってから真実が明るみに出る、あるいは真実に気付いたアナの口を封じようとジャニスが彼女を殺めてしまう…といった、いわば"秘する"ことによるドラマ作りの方向に流れるハズです。
しかしながら本作では主人公のみならず他の登場人物全てが、まるで真実を奉じることあるいは己に正直であることを至上命題にして生きているかのようです。
そこには「過去を忘れて(即ち、真実から目を背けて)未来には進めない」という監督の強烈なメッセージがあり、スペインがフランコ政権から民主化へ移行するなかで起こった反権威的な音楽・絵画・映像などの芸術活動に加わった70年代の過去からの自身の一貫したスタンスの顕れのようです。
主人公だけならまだしも登場人物みんなに己の信条を代弁させるのはフィクション作品としてはやりすぎな気もしましたが、だからこその力強い作品に仕上がっている、ということは言えるでしょう。
アルモドバルが次のステージへ
前作ペインアンドグローリーが自叙伝的な内容でしかも出来が良すぎて、もうこれで映画製作を終わりにしようとしてるのではと不安だったけど、また次のステージへとあがったんですね。彼の定番テーマ「母親」を描きつつ、そしてそれは物語として十分素晴らしいうえに、解決していない問題を世界に知らせる役割まで負っている。ただ日本人にはスペイン内戦てあまりにも関わりがなくて興味を持ってもらえないかも。
待望のアルモドバル監督、新作!
新作が待ち遠しい監督のうちの一人。リアルタイムで鑑賞できることに感謝です。
予告編で、赤ん坊取り違えストーリーなんだな、と思ってましたが、意外とそこはあっさり進んで(え?それでいいの?って感じはありつつ‥)スペイン内戦にまつわるストーリーに続く。
まとまりが悪い感じもありつつ、オープニングからグイグイ進んでいくし、飽きずに最後まで魅せられました。
アルモドバル監督の映像美、衣装やインテリアが美しく、色彩豊かで、それだけで、もう最高に満足です。ペネロペも、いい感じで貫禄みせつつ、可愛さも健在。素敵でした♪
全94件中、21~40件目を表示