劇場公開日 2022年11月3日

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「アドモドバルらしい愛の世界」パラレル・マザーズ ジョーさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5アドモドバルらしい愛の世界

2023年9月17日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

苦悩とか葛藤とかは個人的な体験だ、と誰しも決めつけている。
だが、アルモドバルにかかるとそうじゃない。いつのまにか民族や国家にまで発展していく。
愛一つとってもそう。彼にかかると男女とか超えて、全人類的な愛へと発展していく。
そこが逆に理解しにくいところなのだが、観終わるとその裾野の広さにぐっとくる。

乳児の取り違えと言えば、普通はその取り違えたという事実に重きが置かれる。取り違えられた同士の葛藤が半端じゃないからだ。
だが、本作は取り違えた後の母親同士の不思議な交流が続く。
アドモドバル風に、葛藤が全人類的な愛に昇華していく。

アドモドバル作品に数多く出演している、ペネロペ・クルスが、その独特な愛の世界を熱く演じている。
ある意味、「トーク・トゥー・ハー」にも通じる、危険で、一見常識外れと言われがちな愛の世界を。
夫は、妻子があるにもかかわらず、ペネロペ演じる女性に子供を産ませ、クズと言われてもしょうがない。が、私生活ではクズな彼が、スペイン内戦で無念にも亡くなった人たちを新たに弔うナイスガイの一面を見せるのだ。
何がクズで何がクズじゃないのか。それは実は答えがなかったりする。

アドモドバルの愛の世界はやはり裾野が広い。

ジョー