劇場公開日 2022年11月3日

  • 予告編を見る

「圧倒的感動で迷いなく今年のNO.1に、やっと巡り会えた喜び。過去・現在・未来と、父や夫のいないパラレル・マザー達の繋がりを通して紡がれる愛と家族の物語。」パラレル・マザーズ もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0圧倒的感動で迷いなく今年のNO.1に、やっと巡り会えた喜び。過去・現在・未来と、父や夫のいないパラレル・マザー達の繋がりを通して紡がれる愛と家族の物語。

2022年11月27日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

①ペドロ・アルモドバルは既に現代映画界の名匠だが、この映画で本当の巨匠になったように思う。
②映画の外枠として、スペイン内戦で殺された祖父や曾祖父の遺骨を発掘することを願う女達と遺骨がやっと発掘される話が、ブックエンドの様な形で真ん中の様々な母達・女達の物語を挟んでいる。
これにより、これまでの豊穣ではあったがどちらかと言えばパーソナルな話を描いてきたアルモドバルの映画の世界が更に拡がった。
戦争で夫や父を失った妻や娘の物語は、スペイン内戦にとどまらず世界共通の悲劇であり、現在進行中の悲劇でもあるからだ。
一国の独特な歴史の悲劇を描きながらそれがユニバーサルな視点を持ち得るという好例である。
日本も決して他人事ではない。私の母方の大叔父もインパール作戦でインドのアッサムで戦死し(餓死だったらしい)未だに遺骨を捜せない。捜そうにも未だに現地に日本人が入れないから仕方ないが(イギリス兵の墓地はあるのに)、大叔父の家族も四散してしまいほぼ忘却の彼方である。
それでも、南洋の島々では引き続き遺骨探しは続けられているし、世界の他の場所でも行われているだろう。非業に亡くなった家族を骨になっても引き取りたい、家族と同じ墓に葬ってあげたい、という想いは世界共通、人類共通のものなのだろう。
私は世間の人々ほど家族に拘泥しない人間だが(だから結婚しない。でも人生の大半を家族に尽くしてきたので世間からは良い息子だと評されている。世間ってチョロいとは思わないけれど)、そういう想いを軽んじるほど唐変木ではない。
③この映画に登場する女達も父、祖父、曾祖父の遺骨を何とか家族の墓に埋葬したいと願い、ラストやっと掘り出された骸骨たちとそれを感極まって眺める女達の姿は胸が震えるほど感動的である。
劇中ジャニスがアナに“自分の国の歴史くらい知りなさい”という台詞は今の日本でも耳が痛いのではないだろうか。
④間に挟まれた映画の本筋では夫や父のいない様々な女達・母達の物語―これまでのペドロ・アルモドバルの映画で描かれてきた母と娘、女達の物語の変奏曲―が奏でられていく。
中心となる嬰児取り違えは山口百恵の『赤いシリーズ』じゃあるまいし、2020年代ではちょっと無理気味な設定かとそこが気になったが(映画の大きな瑕疵になる程では無いが)、そう言えば我が日本でも数年前に公開された『そして父になる』も嬰児取り違えがテーマだったなぁ、と。この映画を観たことほぼ忘れてたが、それ程古いテーマでもないらしい。
④これまで数々のアルモドバル監督の映画で好演・名演を見せてきたペネロペ・クルスがここでも圧倒的な名演である。
予想外の妊娠ながら(避妊はしなかった?)40になる前に母になりたいという考えから(母になるという想いはそれ程強いものなのか残念ながら男の私にはよくわからないが)シングルマザーの道を選ぶが、生物学上の筈の父親の一言から疑惑が湧き、DNA鑑定の結果自分の娘だと思っていた赤ん坊は血が繋がっていないことが判った時のショック。もしかしたら自分の本当の娘かも知れない赤ん坊の死を知った時のショック。真実をなかなかアナに告げられない葛藤(もう一人の娘も失うかも知れない恐れ)。アナへの愛しさと羨ましさとが混ざった複雑な思い。

もーさん
マサシさんのコメント
2024年6月13日

意図的

マサシ