「バッツリと切り替わる編集」パラレル・マザーズ TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
バッツリと切り替わる編集
私が子供だった70年代、題名こそ覚えていませんが「事件物」のスペシャルドラマに多かった印象のある題材として「身代金を要求する誘拐」と「子供の取り違え」があります。要するにこれらは「古典」と言っていい題材なのですが、アイデア次第ではまだまだ新しい作品も作られ続けています。
例えば邦画だと、まだ記憶に新しい是枝裕和監督の『そして父になる(13)』。
或いは、パレスチナ問題をそのまま取り込んだ衝撃作『もうひとりの息子(12)』。
そして、本作『パラレル・マザーズ』も後年まで記憶に残るなかなかの良作と感じます。
スペイン内戦と歴史記憶法の話に始まり、ジャニス(ペネロペ・クルス)の曽祖父母にまで遡るファミリーツリー。そして曾祖父たちの遺骨採掘のことで繋がる新しい関係アルトゥロ、アナ、またその家族たち、そして生まれ来る娘たち、とそれぞれの関係性がどれも「ドラマ」として面白く、次々と起こることに夢中になります。
そんな展開を活かす意外な「良さ」が、起きていることの衝撃に対して「余韻」を殆ど残さない、バッツリと切り替わる編集。そう聞くとなんだか勿体ないと思うかもしれませんが、むしろ、このテンポ感がペネロペの名演と相まって、悲しみを乗り越え、未来への希望を感じさせてくれます。
そして、最後のシーン「共同墓穴発掘現場」の様子とそこに集う人々の表情が、繋がりと絆を強く感じさせてくれます。
流石、名匠ペドロ・アルモドバル監督の仕事、、とか言って私実は、同監督の古め作品はまだ未見のものが多いです。すみません。でも取り敢えず今作は、好みの一作でした。恐れ入りました。
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