ある男のレビュー・感想・評価
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幽霊の正体見たり枯れ尾花
2022年劇場鑑賞265本目。
結婚した夫の名前や経歴がでたらめだったことを知り、じゃこの人誰よ?という話。
謎を追う弁護士が妻夫木聡、妻が安藤サクラ、夫が窪田正孝です。
最初窪田正孝が成りすましているのが妻夫木聡かと思ったら全然違ったぜ!
安藤サクラは役によって美人と不細工を演じ分けられるのですごいですね。今回は思わず恋に堕ちてしまうような美人の役でした。
劇中妻夫木聡が在日の顔をしていると言われるシーンがあるのですが、実際はそういうことはないのでまぁセリフだから仕方ないけどちょっと無理あるなぁと思いましたね。
謎が謎を呼ぶ展開なのですが、真相が分かるにつれて期待が大きすぎたのか、そういうことなんだ、ふーんという感じになってしまい、カタルシスは低めでした。
もっと不安になりたかった
石川慶監督とは相性が合わない。とても面白そうな導入部、そして決してミステリーと解決のためだけのフックでなくて、存在の不安や文学的な問いかけのある貴重な作品だと思うのだけど、やっぱりまったりし過ぎる。「愚行録」もそんな印象なのだけど、なんか文学を映画的魅力に落とし切れてない感じがしてしまう。モラビアを映画にするパゾリーニ、ゴダール、ベルトルッチとか、モラビアじゃないけどポランスキーなどのもっと幻惑的存在論を展開してきたものが過去にあるので直線的なセリフやわかりやすい回想でなく、もっと不安を感じたかった。中盤以降のいよいよXの正体のわかってくる辺りは説明を後押しするようなものだけにみえて映画としては停滞しているように見えてしまった。そして、「アーク」もそうだったけど、豪華すぎるキャストもかえってわかりやすさを演出してしまってる気がする。この辺りは深田晃司の映画のほうが圧倒的に面白みがある。
柄本明さんが表現する闇の深さは見る者の心の闇にも迫ってきます
ええ、そうなんですよ。
高校時代はドラフト候補にも名前が上がったんですが、三年生の県予選で肘を壊して甲子園は諦めました。
その後、猛勉強で地元の国立大学に入り、研究室とちょうど立ち上げたばかりの地元の産直店のネット販売やふるさと納税とのコラボ事業を軌道に乗せたところで事業を後輩に譲渡しまして…
今度はその資金を元手に、自分の好きな映画でも作ろうかなと。主演の姉妹は長澤まさみさんと広瀬すずさん、監督はもちろん是枝裕和さんで…
(いや、それもうあるから❗️)
なんてなりすました人生を半年でいいから送ってみたい。
原作の良さをちゃんと活かしつつ、弁護士城戸の人生とある男の人生(この人生を架空と捉えるのか、3年9ヶ月の〝事実〟を含む本当の人生なのかは鑑賞者それぞれに委ねられる)をパラレルに進行させる。そして、戸籍ブローカー(柄本明さんが強烈に真骨頂を発揮❗️)を通して、この社会の闇の深さとおぞましさもまた強く印象に刻まれる。
要所要所に適材適所の実力者俳優を贅沢に配置しているから、雑と思われるようなとってつけた描写にはならないし、むしろ完成度を高めている。
(勿体なくも嬉しい限り‼️)
原作既読の上で、大変満足度の高い映画でした。
愛の物語としては、熱量が足りない
ミステリーとして捉えれば、想定の範囲内の真相で特に目新しさはない。盛り上がる箇所が少なく、愛の物語として消化しようにも熱量が足りない。
韓国籍日本在住の人を揶揄する『在日』という言葉が出てくるが、ネトウヨはともかく、エスタブリッシュメント層の人間が、あからさまに口にしたり、面と向かって差別するなんてことはまずない。もっと巧妙に排除する方法をとっているのが現実で、ステレオタイプな差別主義者が登場すると鼻白んでしまう。
ついでに言えば、死刑反対論と加害者家族の問題がごっちゃになっていて、どうも感情移入しづらい。
身寄りのないホームレスの戸籍を買うというならわかるが、戸籍を交換して兄弟がバッチリいる人間になりすます意味がよくわからない。
ラストは、なんのために足したんでしょうね。
小説を一旦解体して映画として再構築した点では成功している。一部不満点はあるとしても。重層的に問題提起が為されているが、突き詰めれば何が自分にとって“リアル”なのかを問う映画。
(原作既読)①映画化に際して一番興味があったのは、原作では城戸の追跡の中や理枝の記憶の中でしか語られない大祐をどう映像化するかと言うこと。そういう意味では窪田正孝の好演もあって成功している。というか、ほとんど窪田正孝が主演の印象。その分、この物語が提起する他の問題が後ろに追いやられたきらいもあるが。
②妻夫木聡は在日三世には見えないが(ここ、私のバイアスかかってます。認めます。人に対するこのバイアスもこの映画の主要なテーマの一つ)、能動的な主演よりも傍観者というか映画の中で起こる事柄を距離をおいて見ながらいつしか自分もその事件に影響されている役柄の方が向いている、ということがこの映画を見ても良くわかる。
③安藤サクラは相変わらず上手いが(定番の泣き演技も)、上手すぎて殆ど映画の背景と言ってもいいくらい映画に溶け込んでいるのが痛し痒し。
④柄本明の怪演が凄い。妻夫木聡の受けてたった演技も大したものだがやはり貫禄負けは否めない。役柄の上でも城戸を翻弄し価値観を嘲り揺さぶる。
城戸が在日だということを顔を見ただけで分かり(ここ、私の父親が私の子供の頃、“被差別部落の人間は顔を見れば分かる”といい放ったことを思い出させる)、“在日なのに在日に見えないようにしているのが在日の証拠なんだよ”というある意味真理を突いたことをいい放つ。それに対して城戸は図らずも“もう帰化して日本人です”と返してしまい、城戸の中にあるアンコンシャス・バイアスを露呈させてしまう。
また、“あんたの一番アホなところは、私がホンモノの小見浦憲男というのがどうして分かる、というところや”という台詞。
社会生活を送る上では名前・戸籍や肩書き(仕事をしてる間だけだけど)等は必要だが、それがどれだけ脆いものか、我々がどれだけそれに依存しまた疑いを抱いていないかという現代人の認識の危うさを突いたキツイ一言。この映画の主要テーマを一言で表している台詞だ。
⑤バイアスだらけの人間も多く登場するが私たちにとって決して他人事ではない筈。
⑥あと、偽の大祐から原誠を突き止める事に殆どの尺を使ってしまったので本物の大祐の方の話がはしょられてしまって中途半端に終わってしまった。
⑦山口美也子も歳とったねえ。昔日活ロマンポルノで活躍していたのが嘘みたいなホントにそこら辺のお婆ちゃんみたいになってしまった。
池上季実子も城戸の妻の母親として1シーンだけの出演だが、“まだ映画に出てるんだ”と妙に懐かしい。
⑧真木よう子は、少ない出番ながら城戸の冷たいのか優しいのかわからない妻を演じて存在感があった。
なぜ身分を偽らなければならなかったのか
【注意・少しネタバレアリ】人間ドラマが分かりやすく、感情移入しやすい展開もミステリアス。合格点。ただ最後のオチと関西の闇は評価微妙
違ってたらごめん 有料パンフ購入して眺めたけど、読んでない。
しかし安藤サクラのセリフ「・・あの人と幸せに過ごした事実は事実」が全て
映像のテンポが非常に良い好作品
【あとネタバレ気にする人はコレ以降読まない方がいい。
作品観た人だけでお願いします。】
妻夫木君が関東の人か関西人なのか不明。
後半の関西の話は平成前半までの話ね。
今の時代、属性で差別すること自体が東日本人、関西人共通認識であり得ない
ヘイトスピーチする人は「自分は変わり者」と自覚した方が良い
なんか場所の展開が、大阪→宮崎県みたいだから、あと名古屋
【傲慢な気取った東日本人】としては分かりにくい
ただ、それを補ってあまりあるくらい
導入は【ある男】に感情移入しやすくなっている。
一瞬、「幸福の黄色いハンカチ」高倉健・倍賞千恵子のやりとりと被る。
宮城県?宮崎県に聞こえたなぁ。
後半は映画、テレビシリーズ含めて「砂の器」に近い。
もっとも、「窪田正孝演ずる ある男」が求めているのは
ささやかな温もり、幸せだからこちらの方がマシ。
俺、関西ノリ大好き人間なんだけど
在日の人、被差別部落の人への差別が露骨なのはいただけない。
もっとも「東日本人は気取っていて表立っては差別を口にしない」だけで本質は同じ。
ツーか主人公の妻夫木くんと小籔さんは東京の弁護士事務所かな?
妻夫木君、関西弁語ってないから。
窪田正孝演ずるある男が、ブローカー介してでも過去から脱却したいのは理解できる。
ワシもそうするよ!その立場だったら・・
しかし仲野太賀の温泉の次男坊の理由は理解できない
最後の妻夫木君も・・・たしなめればそれでいいじゃ無いか❓❓
「父親が殺人の死刑囚」のレッテルに比べれば、世の中大したことないよ。
昔と違うから平成で部落問題なんてもう消化して誰も気にしないし
刈り上げ将軍様は許し難いが、別に在日の人全然普通の「日本人と同じ」と感ずるが・・・
ラストのモヤモヤ
すごいドンデン返しとかない、このぐらいのあんばいが丁度良い。面白いと思います。その上で在日のエッセンスはいるのでしょうか、犯罪者の子供や在日は謂れのない差別を受けているということをいいたいのか分からないが、両者を同列に扱っていいの?在日のくだりは無理矢理入れ込んだ感がある。無くても成立するのではないかとも思う。在日差別をいうのであれば、在日特権も併記するべきだ。
ラスト、妻夫木さん演じる弁護士が酒場で、家族、子供の年齢を初対面の客に伝える。えっ
もしかして、というところで暗転エンドロール。それならそうとちゃんと描いてハッキリさせて欲しい。モヤモヤする。ハッキリさせたらさせたでモヤモヤするかもしれないけど。でもハッキリしたラストが観たい。
ちょっぴり思想色のついたミステリーサスペンス映画です
大人な映画
安藤サクラさんが凄い!
いくつもの人生が交錯する重厚なストーリー。観賞後、ずっしりと胸に溜まる。
それを、
一人ひとりの人生を思い返しながら
ゆっくり消化していく…
そんな作品だった
さすが、平野啓一郎。唸ったー
どうしても自分では剥がすことのできない「レッテル」を、貼り付けたまま生きていかなければならない人がいる
それは、
「加害者家族」、「在日韓国人」ということだったり、「大きな事業の創業者家族」ということだったり…
「自分ではない自分になりたい」「違う人生を生きたい」と願いながら、
懸命に自分の人生を生きようとする姿が胸を打つ
最愛の夫の突然の死と戸籍詐称という真実に
苦しみながらも、
一緒に過ごした時間の幸福を信じ、
愛し続ける里枝の一途さにも、胸を打たれた
登場人物も多く、複雑に絡む原作のストーリーを
すっきり、うまくまとめたなー
という印象だった
全体がミステリー的な展開の中に
様々な人生の物語があり、
そこにまた社会的な問題もさり気なく織り交ぜた
秀作だと思う
窪田正孝、熱演だった
妻夫木聡と安藤サクラもよかった
まだ、この作品を消化中…
3.6個々の役者さんの感情が見れてとれて😄
実は誰なの?ミステリー映画
ユナイテッドシネマ浦和にて鑑賞。
夫が死亡したら「実は別人だった。じゃあ、いったい死んだ夫は誰?」という予告編が面白そうだったので観に行ったら、次から次への展開に驚かされる面白い映画だった。
しかし、本当に、安藤サクラは演技が上手すぎて、安藤サクラが涙を流しはじめた瞬間に「男」が入って来る…といった石川慶監督の演出も上手い!
町の文房具屋で店番をしている女性=里枝(安藤サクラ)。絵を描くための文房具を買いに来た男(窪田正孝)、二人は結婚。して一女をもうけるが大祐は仕事中の事故で死んでしまう。しかし、死んだ大祐は別人だった。「実は誰だったのか?」の調査依頼を受けた弁護士(妻夫木聡)が調べていくと……という[実は誰なのミステリー]的な映画。
こうしたミステリーは、1940~1950年代のノワール映画にも見られる展開で、真相を追う楽しさがある。
本作の予告編にもあった安藤サクラの「私はいったい誰の人生と一緒に生きていたんでしょうね…」というセリフが印象的。
序盤は安藤サクラと窪田正孝を中心に、中盤以降は妻夫木聡を中心にした物語、ホントに面白い。
冒頭にルネ・マグリットの絵画「不許複製」を効果的に使った映画的な見せ場から始まる佳作であった。
<映倫No.122665>
視線が形作る「自分」
何もないからそれが良い
話はサスペンスにしようとしているが、あまりにも内容が薄くて肉厚にならない。しかし最後まで観れるのはキャストの演技や演出が素晴らしいから。
ただの入れ替わりで事件性も少なく脚本段階ではこれが面白くなるのかって思っていたのでは。
ボクシングの経緯だけで物語作ったほうが面白いと。
過去を引きずる者たち
芥川賞作家・平野啓一郎の原作の映画化。原作は、発刊当時に既読。ほぼ同じ展開でストーリーは流れる。平野作品からは、人にはいくつもの顔がある『分人主義』の様な考え方が感じ取れ、大どんでん返しや山場となるクライマックスがあるわけではなく、モノトーンの淡々とした描写ではあるが、人の内なる心情や葛藤にスポットを当て、心動かされる印象が強い。
そんな平野作品を、ヒューマンタッチな映像を得意とする、石川慶監督が、『愚行録』でもタッグを組んだ妻夫木聡を主演に、演技派の安藤サクラ、窪田正孝、柄本明等の俳優陣を揃えて映像化している。人々心の奥底にある願望と現実の狭間を、切なく、哀愁が漂う物語として仕上げている。
我が子が病死したことで、悲しみに暮れて離婚をし、実家に戻った里枝。そこに、林業に携わる大祐が現れて恋に落ち、再婚に至るシーンから物語は始まる。新たに子供も授かり、幸せな日々を送っていた最中、大祐は、仕事中の不慮の事故で死んでしまう。そこに、大祐の兄が供養に訪れるのだが、その遺影を見て、「これは大祐ではない」と言い切る。里枝が愛した男は、いったい誰だったのか…?そこから、大祐と名乗った『ある男』の正体を巡っての、ミステリーとしての謎が深まっていく。
その謎解きの調査をするのが、且つて里枝の離婚調停をした弁護士・城戸。城戸は、『ある男』に関わってきた、様々な人々を辿って、話を聞く中で、正体に近づいていく。そこには、已むに已まれぬ、幼少期のトラウマや育成環境等が混在して、『ある男』を生み出している過去と繋がりが、明らかになっていく。
主演の妻夫木聡は、在日朝鮮人としての宿命を背負う中、その葛藤と重ねる中で、『ある男』の調査にのめり込んでいく弁護士を演じている。安藤サクラは、乱れ髪を直しながら、哀しみを湛える演技に、女の色気を感じずにはいられない、相変わらずの安定感のある名演技。窪田正孝も、過去を引きずり、孤独さの中に猟奇的な影が見え隠れする青年役は、ハマリ役。そして、懲役囚を演じた柄本明の妙演もまた、大変印象深い。
人は、置かれたシチュエーションや相手次第で、その場に応じた様々な自分となる。それが自然な立ち居振る舞いとして赦され、受け入れて生きていくものであると、訴えかけてくるようなラスト・シーンだった。
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