ある男のレビュー・感想・評価
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消したい出自
親も、国も、生まれた時には選べない。生まれてくる環境の中で生きていくしかない。それは辛い、過酷な運命かもしれない。自分に対する評価じゃなく、何とかの子だからと、正当な評価じゃない、自分じゃどうしようもない言われようが付いてくる。本当の自分を捨ててでも‥。
ブッキーと窪田正孝、柄本明は役にハマり切っていたと思う。さり気ない表情ひとつにも、その人が現れていて、何か暗いものを隠して悟られないように必死で生きているけど何かあると思わせるような。この3人みているだけでも面白くて、ワクワクしちゃった。
窪田正孝って痩せすぎのイメージあったんだけど、めちゃくちゃ身体作っていてビックリ。ボクサーだったわ!大変だったろうな!
面白かったけど理解するには難しかった
すずめの戸締まりの前に流れた予告が面白そうだったので鑑賞。
面白かったが、予告で期待していたほどではなかった。
本作では差別表現が使われているので人によっては不快感があるかもしれない。
特に、在日やハーフなどで子供の頃に嫌な思いをした人にとってはしんどい表現がある気がする。
PG12にすればよかったのに。
結論から言えば、出生や家系による差別を誇張表現した作品。
今どきの言葉で言えば親ガチャに該当しますね。
親が犯罪者、在日〇世、親が離婚してる、逆に親が地主や老舗の跡取りなど私が小さい時でもこれらの差別意識というのはあったと思います。
自分のせいではないそれらの差別から逃げて新しい人生を歩み出したい人たちの奮闘を覗き見たような作品です。
窪田正孝さんが演じていたキャラが死ぬまでの描写が微妙で、がっつり削るか、もっと詳細にするかどちらかにして欲しかった。
キスシーンからの場面転換で知らん間に小さい女の子が登場して混乱した。
序盤に谷口里枝が石ころを思いっきり蹴って車にぶつけた後逃げるシーンがあるが意図は何だったのだろうか。窪田正孝さんの役が描く絵を子供がそのまま大人になったようと表現したように、谷口里枝もまた子供がそのまま大人になったということなのか。
城戸香織の両親との食事シーンがあったが、香織の父親は過激派の日本人という感じですかね。「生活保護制度がそもそもおかしい。在日は簡単に生活保護を受けれるのに云々。」
日本人からすれば、言わんとしていることは理解は出来ます。ただ、厭味ったらしい日本人のネガキャンなのか在日のネガキャンなのか正直分からなかったです。
城戸章良弁護士の勘が悪すぎる。
「城戸章良はなんで窪田正孝さんの役が戸籍を一回しか変えてないと決めつけてるのか?」
「小見浦憲男は仲介人なら当然本人も変えてるのではないか?」
と私は早々に疑問を抱いてしまった。
柄本明さんは腹立つイカれた老人がはまり役で良かった。
小藪さんは申し訳ないが、つらつらと喋ると新喜劇を思い出してしまって個人的には残念だった、ムロツヨシさんの方がよかったかもしれない。
余談だが、青春時代に見ていたキラキラした俳優さん女優さんもおじさんおばさんになったのだなとしみじみ感じ、自分も年を取ったのだと実感してしまった。
重厚なヒューマンドラマ
「多かれ少なかれ、人は誰しも偽りの人生を生きている」自分に正直な人でも、偽りの仮面をかぶっている人も、相手との関係性の中で何かしらの偽りはあるものだ。本人が意識しなくても、相手の受け取り方で話したことが嘘になることもある。本人が善良か悪人かは関係ない。
なんていう枕はさておき、自分とは何なのかという哲学的な問いを辿るような物語。自分を自分として証明するのに、実は戸籍にある自分の名前は絶対なんてことはなく、そもそも戸籍がない人も(日本では少なくても)世界には沢山いるわけだ。クレジットカード作る時に便宜的に免許証なんかを提示するけど、戸籍制度や住民票の制度がある程度機能しているから成り立つわけで、ホントにそうなの?と疑いはじめたら、かなり面倒くさい世の中になることだろう。
また枕のような話になった。まあいいか。ふたつ枕があるところには、たいてい人生の秘密が隠れていたりするものだ。
さて、そんな視点から観てみれば、かなり挑発的なストーリーだ。一緒に暮らしていた夫の一周忌に、突然夫が戸籍とは別の人間であることが明らかになる。相談された弁護士は彼が誰かを探し、やがてその調査にのめり込んでいく。次第に事実が明らかになるにつれ、Xとされた彼の人生、調査をする弁護士の人生、Xと入れ替わったもうひとりの人物など、何人かの男たちの人生が少しづつ重なって、深みのあるエンディングへと運ばれる。
窪田正孝がX、妻夫木聡が彼の人生を追う弁護士役。劇中2人が対面することはないのだけれど、それぞれが秘めた過去や感情を抱えている役を、見事に演じていた。Xの妻役の安藤サクラが中核として、終始物語を支えていた。ストーリーを運ぶ重要な役割だが、変に目立つ事なく、名司会者のような立ち位置を見事にこなしていた。他にも、榎本明、清野菜名、真木よう子、仲野太賀などなど、骨太のメンバーが物語の骨格を綺麗に形作っていた。
重厚な原作の土台の上に、しっかりとした幹として脚本を立てたように感じた。なかなかに見応えのある作品だった。
間が素敵な映画
旦那さんが亡くなったあとに、しかも親族と会って写真見て「この人誰!?」ってなったら、ショックというか、「エェェッ!!!?」って感じですよね。
奥様はもちろんですけど、自分の家族が亡くなったと思って呼ばれた親族も驚きですよねw
その衝撃のシーンはちょっと笑けたw
幼馴染とか、昔から知ってる相手なら、目の前にいる人が名乗った人そのものだってわかるけど、大人になってから知り合った人だと、目の前の人がホントにその人なのかわからないんだなぁ〜って思うと怖くなった。
謎を解いていくにつれて切ない感情に包まれたのと、ずっとモヤモヤ…。
そのモヤモヤが何だったのかは、最後に分かった。
終わり方が急に『世にも奇妙な物語』かっ!って突っ込みたくなるくらいゾワゾワした。
そのゾワゾワが私の感じたモヤモヤだったんだと思います。
最初から最後まで間が素敵な映画でした。
言葉じゃなく、表情と空気感で演技してて、それがすごく自然な日常に感じられて、私はそこがすごく良かったです。
倍速で見たい作品。
正直ダルい。テンポが遅すぎて度々脱落しそうになる。構成と脚本の問題。窪田正孝が亡くなるところから始まる、くらいの構成じゃないと。
せっかくいい主題なのに、ほんとうにもったいない。今の自分ではない人生を生きたい、「生き直し」たいと思う人は、確かに多いはずだ。格差、差別、貧困。ポンジュノ「パラサイト」、ジョーダンピール「アス」、是枝「万引き家族」らとも通底するテーマ。でもせっかくのテーマを掘り下げきれないまま、冗長なセリフ回しと、意味ありげな(でも大した意味のない)ゆるいカットで、ただただ尺だけが長い印象。
こういう作りしてるから、映画を倍速で映画見る人が増えてるんだろうな。Netflixだったら確実に倍速で見る作品。
誰かも指摘している通り、死刑囚の息子である事の悲しみや苦しみ、在日3世の苦しみ、といった描写がない(弱い)から、観客の想像で心情を読みとくしかない。仲野太賀の苦しみって何なんだ?結局。
一方、役者陣の芝居はしっかり。妻夫木、柄本、安藤サクラ、みな素晴らしい。小籔もいい味つけ。
ラストも腑に落ちない。
その後、妻夫木も戸籍を変え別人として生きている、ということ?妻に浮気されて今の暮らしがイヤになったから?
浮気された夫、と、死刑囚の息子を同列にしちゃっていいのか?
それでいいのか?
妻夫木聡は良い俳優!!
感想として第一に感じたのは、ブッキー良い俳優さんになったなぁーでした。
主人公自身、己がアイデンティティに苦悶しつつストーリーは進んで行く中で、ニュートラルというか自立・自覚しきれない役を好演しています。
逆に窪田正孝氏は、「初恋」が非常に素晴らしく感動したのですが、佐藤健パターン(演技の幅が狭いさま)なのでしょうか…少し心配になりました。
安藤さくらも元人妻の色気むんむんかと思いきや、その後はサッパリ色香で流石でした。
私的には、中学生の息子役の俳優:坂本愛登君が特に素晴らしく今後に期待です!
全体的にフランス 映画っぽいです。何というか、余りストーリーに影響ない日常を描く感じといいますか。
そこの濃淡がまた良いといいますか。
後、清野菜名は最高です。化け物です。カメレオンです。
人間なんて愚かで勝手な生き物で、個人の本質なんて関係ないんだよなと再考させられる作品でした。
(オチ的な最終シーンは中々秀逸。嫁も〇〇、子供、差別主義な義父等々、誰もが最終的にBADエンディング。レッテル貼りは自重せよと自戒しました。)
静かな作品が好きな方は是非観てください。独特な名作です。
差別はなくならない
自分とは一体何か、出自や貼られたレッテルも一生背負って自分として生き続けなければならないのか、本当の自分らしく生きることとは?
これだけ多様性が叫ばれる一方で一向になくならない差別、偏見、不寛容。表に出し辛い空気の中SNSという匿名の世界でえぐいほど叩かれる。全てを捨て生まれ変わって別の人間として生きてみたい…そんなことを考えたことがある人は多いだろうしだからこそみなある男や主人公に共感するのだろう。
この作品には差別や偏見を露わにする嫌なやつとして描かれる人物が何人か出てくる。観客の怒りはわかりやすくそういう人物に向かう。差別や偏見はよくない!なくすべきだ!と。でもそう叫びながらも人は無意識のうちに別の誰かを差別しているかもしれないということを自覚しなければならない。嫌なやつとして描かれる人物たちは自分かもしれないのだ。
この作品は凄惨な事件を起こす犯人の背景として、もはやテンプレ化されているパチンコ・ギャンブル依存症・借金といったものを使っている。人はこの作品を見てやっぱりこういう人はパチンコをやっているんだということをまた刷り込まれる。例えばこういうことは差別にはならないのだろうか。多くの人は言う、だってパチンコだから仕方ないよと。ではその線引きはどこにあり誰が決めるのか?
概ねいい作品だとは思う。けれども差別の問題を扱いながらも一方では別の差別を生み出しているのではないかというモヤモヤがどうしてもひっかかってしまって完全に入り込むことが出来なかった。
知る事が全てではない
ある男
ファーストカットの絵画
奇妙な絵だ。
鏡に顔を向ければ自分の顔が見えるはず
それなのに鏡の中の自分の顔は見えずに
背を向けている
「まるで自分で自分に向き合っていない」気がするし
「自分の顔が見えない」=私は誰なのか?
「ある男」
優しい再婚した夫は
不慮な事故で死亡する。
その後。夫の名前は偽名で「何者」なのかもわからない
離婚の際にお世話になった弁護士に
夫の正体を依頼する。
絶妙なミステリードラマ。
真相に迫ると
過去のトラウマで生まれ変わるしかなかった
心情が心に迫る
個人的な意見で
「本物の谷口大祐」側の物語も見てみたかった。
WOWOWでドラマ化しないかな。4話ぐらいで。
同じキャストで。
そして最後だ。
彼はバーに飾られた絵が目に入る。
ルネ・マグリット「複製禁止」
映画の公式サイトを開くと
まるでこの絵のようなデザインに
なっている
3人の人間の後ろ姿だけが映し出される。
——あっ「複製禁止」
改めてみるとまさにオマージュと感じた。
役者の力が光る人間ドラマ
結局、曽根崎はどこ?
結婚した相手が偽戸籍だったので誰であるかを調べた結果、やっぱり調べなくても良かった、一緒に暮らした日々さえあればみたいな感想を述べることも、死刑囚の実の孫であることを娘に伝える役を息子に買って出させるのも、被害者ではありますが、無責任な母親だなぁと思いました。
調べる前から、偽戸籍である事情がポジティブであるわけがないとわかっているはずで、自身が犯罪者でなければ家族に犯罪者がいることくらいしか思いつきません。映画の予告編を見た時点でそう予想していましたが、結局その通り。何の罪もない死刑囚の息子が苦しむ軌跡を辿って理解したつもりになっただけ、何も誰も救われません。将来、娘は、戸籍の父親欄が空白になっているか死刑囚の息子の名前が入っているのを知るわけで、父親違いの兄から何言われたとしても、新たな悲劇しか待っていないでしょう。
それと、妻夫木聡扮する弁護士が在日三世と一目で見抜かれるというシーンに驚きました。全く見えないですからね。でも、戸籍偽造業者は会う度に「在日、在日」と連呼して五月蝿いし、在日問題を死刑囚の子供と同列視しようとしているのか、とても違和感がありました。
ラストシーンで弁護士が温泉宿の次男坊を名乗っているのにも呆れました。浮気かつ託卵かもしれない妻に嫌気が差したので、逃げてるんですかね?
で、結局、曽根崎はどこの誰なんでしょう、スッキリしないんですが。
タイトルなし(ネタバレ)
サスペンス?ミステリー?社会派ドラマ?
主人公が途中、里枝から城戸弁護士に替わり、心理ドラマっぽくなる。
男の正体が分かってからの後半は冗長。
詐欺師とのやり取りは病んだ心の作り出した妄想のように思える。
無神経な義両親に心を削られ、自分の出自を責める声が聞こえるのかと。
キャリアも全て捨て去るほどに。
本物の谷口大祐の兄も相当な無神経ぶり。
眞島さんの空気読めないっぷり。ああいう人いるいる。
里枝の娘は家族が心優しいのが救い。
名前って何だろう。
_φ(・_・不安になったよ。
考えさせられる映画だった。
対比する映画は『ドライブマイカー』だと思う。
あの映画は過去の辛い思いをどうやって折り合いをつけるかってのが描かれていたと思います。誰かとそのことを話す事でその辛い思いは忘れはできないにしろ昇華していくのが描かれていました。
この映画も辛い過去や出自などの逃れられない事に対してどう折り合いをつけるかっていうのがテーマなのかなぁと思います。折り合いをつけるには現在の自分の状態が正常に存在するか?アイデンティティが確立されているかどうかなのでしょうね。里江が折り合いをつける事ができたのは長男の誰だかわからない父が死んで『さびいしいね』の一言と娘の存在が大きかったのでしょう。誰だかわからない父を憎むのではなく、寂しいという現実が折り合いをつけたのだと思います。息子にとって誰だかわからない父ではなく優しい父だったのですね。泣けました。
問題は弁護士の城戸。在日という逃れられない出自、家族は彼とは真逆の人間。妻は浮気、義理の父は差別主義者。彼は折り合いをつける事ができない。孤立した人間だから。
ラストは孤立した人間はどうしたらいいの?という視聴者への問いなんでしょうね。
どちらかと言うと私も孤立しそうな人間で帰り道車を運転しながら不安になりました。
見所は俳優陣の演技
たかが名前、たかが戸籍
観た直後より少し時間置いた方がじわっとくる気がする。名前とか戸籍とかただの人を識別するための記号でしか無いのにやたらと重たい。戸籍ロンダリングって新しい人生を手に入れるというよりこれまでの人生を捨てるってことなのか。
彼はこれまでの人生をちゃんと捨てられたんだろうか。鏡を見て傷つけたくなる自分を最後の3年9ヶ月には捨てることが出来ていたと信じたい。
ホンモノの谷口大祐は何を捨てたかったんかな。家族と上手くいってないことはわかるけど戸籍ロンダリングしてまで捨てたかったモノってどれほどのものだったのかな。そして一切素性がわからない曽根崎という人も。小見浦も。
一方で城戸さんは?在日3世という生い立ちや妻の浮気という現実を捨てずに生きられるのだろうか。
いい映画
「いい映画」だと感じました。ネタバレは驚くようなものではないですが、妻夫木さん、安藤さん、窪田さん、清野さん、柄本さんなどなどキャストがすばらしく、2時間ほぼ引き込まれぱなしでした。
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