「原作未読です。 鏡に映った自分に向かって「お前は誰だ」と問い続ける...」ある男 まゆうさんの映画レビュー(感想・評価)
原作未読です。 鏡に映った自分に向かって「お前は誰だ」と問い続ける...
原作未読です。
鏡に映った自分に向かって「お前は誰だ」と問い続けると、人は発狂するらしいですね。まさに鑑賞者にあなたは何者ですか?と問いかけるような作品です。最初は犯罪者の家族の人生にスポットが当てられた作品なのかと思いましたが、妻夫木聡演じる弁護士が在日コリアン3世であることが語られた辺りから、ああ、出自やバックボーンのようなことも含めもっと広いことを扱いたいんだなと感じました。色々考えさせられました。
とにかく役者さん達の演技が素晴らしかったです。冒頭から引き込まれます。窪田正孝さんはこういう役がよく合いますね、顔立ちもあると思いますが、鋭さや暗さの中に無垢さもちゃんと感じられてかなり良かったです。安藤サクラさんは言うまでも無し。最初の20分程駆け足ですがここまで説得力あるのが凄い。この後展開していくのでここがマズイと総崩れです。他の役者さんも皆んなめちゃくちゃ良かった。
ラスト、お酒のシーンで、弁護士が自分のことを話す時に嘘を言いますよね。あれが良かったですね。一瞬、え?どゆこと?と混乱しましたが多分そういう事ではなく。あのシーンがあることで鑑賞者にとってテーマがグッと近くなるんだと思います。皆んなあるでしょ?ちょっと話盛ったり、違う自分を演じたり。でもどれも自分自身なんだ。
私には英語が堪能な友達がいるのですが、日本語を話す時と英語を話す時では若干キャラ変わるなーと思ったことがあります。そもそも扱う言語が変われば発声の仕方や表現方法、文化が丸ごと変わるので当然なのですが、それも同じ当人なんだよな…人には色んな顔があり、そういうものなんだよなーと思った次第です。
死刑囚の絵画展で、本人が特定されるところはちょっと都合良すぎな気はしますが、全体的に良作でした。暗いけど淡々と運ぶ感じも良き。個人的に好きなのは、中学生の息子(坂本愛登)が「お父さんは自分が父親にして欲しかったことを僕にしたんだと思う」と言った時、安藤サクラさんが「それだけじゃなくて君を好きだったからだよ」と言うシーン。丁寧で温かくて好きです。