「窪田正孝に胸を鷲掴みにされました」ある男 Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)
窪田正孝に胸を鷲掴みにされました
里枝の手を握り「りょうくん、りょうくん」とやさしく声に出す大祐。窓ガラスに映った自分の顔に反応し取り乱す彼をやさしく抱きしめ「大丈夫、大丈夫」となだめる里枝。
これからの二人の温かい人生を物語る大事なやりとりだった。
幸せとは、人生にこういう相手がそばに居てくれること。賑やかな朝食シーンが見事に語っていた。
親に似た自分の肉体とルーツに苦悩を抱えて生きてきた彼にとって、里枝と子どもたちと過ごした幸せな時間だけが、誰の複写でもない、彼自身の人生だった。
マグリットの「不許複製」。戸籍は複写可能だけど、愛は複写不可能だ。外面の幻ではなく内面の愛をもらったからこそ悠人は寂しい。
一方。立派な職業、上質な暮らし、美しい妻子を得た城戸の未来は順風満帆のはずだ。しかし、外面を整えることに懸命に生きてきた彼も、不安定な苦悩を抱えて生きている。差別主義の下衆親に抗議しない妻も、外面が大事な彼と似た者同志かもしれない。本音で繋がっていないような夫婦。
果たして今の自分の人生は本当に望んだ人生?
そこでラストを想像してみる。バーで通りすがりの人物に、城戸は、田口の人生を自分の人生として語る。
城戸は長期出張とかなんとか言って失踪するんじゃなかろうか。
自分の肩書きや過去に関係なく、里枝と大祐のように、ありのままの自分が惚れ合える相手と、明るい未来を歩みたいんじゃないかな。
和製レクター博士、最高だった。
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