「社会問題を巧みに取り入れた上質のミステリー」ある男 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
社会問題を巧みに取り入れた上質のミステリー
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谷口里枝(安藤サクラ)の再婚相手、大祐(窪田正孝)が事故で亡くなり、疎遠だった大祐の兄に連絡して葬儀に来てもらうと、亡くなった大祐は本当の大祐ではなかった。そんなミステリアスな出来事を、弁護士の城戸(妻夫木聡)が解き明かしていくミステリーでした。
非常に評価できるのは、近頃国会などでも話題になることが多い「ヘイト」の問題や、自分が自分であることを証明することの難しさなど、「謎解き」というミステリーの娯楽要素に留まることなく、現実の社会問題を物語に巧みに取り入れていたこと。流石は芥川賞作家である平野啓一郎原作と思わせる展開でした。
役者陣では、刑務所に服役している詐欺師役を演じた柄本明が、相変わらず不気味な笑みを浮かべつつ物語の鍵となることをしゃべっていたのが良かったです。
また物語的にも、亡くなった夫が誰であるかが解明されて一定の平衡状態を取り戻した里枝や、本当の大祐とは裏腹に、城戸が家族の崩壊危機に陥ってしまうラストは、人生の浮き沈みを象徴しているようで、印象的なものでした。
物語よし、背景もよし、演技もよしということで、評価は★4としたいと思います。
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