劇場公開日 2022年11月18日

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「タイトルのある男とは誰のことなのか?純文学を映画で読む」ある男 ころんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5タイトルのある男とは誰のことなのか?純文学を映画で読む

2022年11月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

直木賞・芥川賞は以前は読んでいたのですが、仕事が忙しくなったタイミングで読まなくなったのが平野さんが受賞した頃のため、受賞作も本作も読んでいません。

京都大在学中に芥川賞を受賞したとのことで当時メディアによく出演されていました。
2歳ころ父親を亡くしたため気持ちがそこへ向かうとのことを話していたことがあり、そのことが何故か印象的でした。

本作も義理父と子供の交流のシーンなどもあり、なんとなく納得。
全体的にほんわかしたゆっくりムードで進みますが、飽きることなくテンポよく最後まで進みます。

タイトルや予告編と異なり、謎解き要素は少ないです。
謎解きサスペンスではありません、爽快感や面白さを求めて鑑賞しないほうがいいかと。

人としての存在について考えさせられることが多かったです。
見ていて考えすぎるほど強くはなく、問題提起というかんじでしょうか。

妻夫木くんを映画で久しぶりに見ましたが、大人の男を非常にかっこよく演じられており、さすがだな~と思いました。ほかの出演者も見事です。

1つ気になったのは特に法律関係の仕事は守秘義務が発生するため、家族間の会話に出すことはできません。ですが弁護士がどのような人探しをしているかを奥さんが知っていて会話をしていることに少し違和感を感じました。

結局タイトルの「ある男」とは「どの男」を指すのかについては、見た人によって異なります。
ラストもあまり過度な期待はしないほうがいいかもしれません、こちらも見た人によって異なるかと思われます。事実?それともただのつくり話なのか?ここを見る人がどのように受け取るかにより異なります。

いずれにしても別の人生を生きてみたいと思うことは誰でもありますよね?
国籍、血縁、変えられない多くの背景が重く感じることもあります。

見終わったあと、なんともいえない、考えさせられるような要素が残りましたが、それもまた読書をした後の感じに似ていて心地いいです。そういった意味では良い映画だと思います。

何回も見たいという幸せな映画ではないですが、純文学を映画で読める印象はわるくはないです。

ころん