「もっと不安になりたかった」ある男 ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
もっと不安になりたかった
石川慶監督とは相性が合わない。とても面白そうな導入部、そして決してミステリーと解決のためだけのフックでなくて、存在の不安や文学的な問いかけのある貴重な作品だと思うのだけど、やっぱりまったりし過ぎる。「愚行録」もそんな印象なのだけど、なんか文学を映画的魅力に落とし切れてない感じがしてしまう。モラビアを映画にするパゾリーニ、ゴダール、ベルトルッチとか、モラビアじゃないけどポランスキーなどのもっと幻惑的存在論を展開してきたものが過去にあるので直線的なセリフやわかりやすい回想でなく、もっと不安を感じたかった。中盤以降のいよいよXの正体のわかってくる辺りは説明を後押しするようなものだけにみえて映画としては停滞しているように見えてしまった。そして、「アーク」もそうだったけど、豪華すぎるキャストもかえってわかりやすさを演出してしまってる気がする。この辺りは深田晃司の映画のほうが圧倒的に面白みがある。
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