「フェリーニの「道」を彷彿する抒情とペーソス」声もなく 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
フェリーニの「道」を彷彿する抒情とペーソス
題名の「声もなく」
声を出せない、話せない男の純情。
哀切で言葉にならず、引き込まれました。
足を引き摺る相棒のチャンボクと共に、表向きの生業は玉子移動販売だが、
裏では組織の死体処理の汚れ仕事をしているテイン。
テインは言葉が話せない。
ある日2人は誘拐された11歳の少女チョヒ(ムン・スンア)を一日預かることになる。
ところがテインたちに仕事を斡旋する元締めが殺されて、
事は複雑になってしまう。
テインに頼らなければ生きられない少女の知恵と、
次第にチョヒに情を感じるテイン。
テインを演じるユ・アインは
フェデリコ・フェリーニの「道」のジュリエッタ・マシーナを彷彿する名演技。
知恵もない。学問もない。死体処理の仕事をただ黙々とこなすテイン。
しかしテインは少女の始末に手を焼く組織と自らの優しさの板挟みになり、
心は千々に乱れます。
ラストの展開は殆どコントのようになっていきます。
ラストで介入して来る女性警官の役割、男性巡査の頼りなさ。
もつれにもつれる誘拐騒ぎの顛末と決着。
犯罪映画と一括りに出来ないユーモアと深みのある終盤。
話せない男の純情と悲哀が押し寄せてきて、
なんとも言えない感動に包まれました。
どうも、いつもありがとうございます。劇場で映画を観るときに、これは大したことないだろうなと思って観ることがあるのですが、この映画はその類いで、それほど期待はしていなかったのですが、意外に面白くて、微妙な人間の感情をよく描いていましたね。でも、映画のラストシーンは難しいですね。ここで好き嫌いも別れますし、2時間のドラマをどう終わらせるかは、作り手の見せ所かもしれません。
しかし、年間数百本観ると内容を覚えていませんね。話しているとだんだん思い出したりするんですが。それでは。