「届くことのない声の行方。」声もなく はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
届くことのない声の行方。
韓国からまた凄いのが来た。重くて残酷で絶望的で目を伏せたくなるようなストーリー。それなのに何故か心があったまってしまう瞬間がある。
闇社会の末端で相棒と共に死体処理を生業とする口がきけない青年テイン。身代金目的で誘拐された少女チョヒを押し付けられ、隠れるように暮らす茂みの家で妹と3人。不思議な共同生活が始まる。
階級社会からはじかれた者達の行く末。下っ端で学もないテインは誰に逆らうこともできない。貧困が招く負のループから永遠に抜け出せない。クスっと笑えるユーモアを盛り込みながら物語が加速してゆく。チョヒはテインに心を許したのか。それとも身を守るため本能的にそう見せたのか。結局うさぎの仮面は最後まで着けたままだったのかもしれない。誰の耳にも心にも届かない声の行方。テインが走り出した先。どの道を選んでも地獄へ辿り着く。
この重厚さを99分で撮り切った新人ホン・ウィジョン監督に敬礼したい気分です。チョヒと妹がシンクロしてゆくとこや血の花には痺れました。女性ならではの感性だったかもしれないですね。
残念だったのは相棒の展開があまりにも雑だったこと。あそこまできてあれはさすがにどんくさ過ぎる。
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