劇場公開日 2021年11月5日

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「鬼才が手掛けてこそ原作の旨味引き立つ」ほんとうのピノッキオ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0鬼才が手掛けてこそ原作の旨味引き立つ

2021年11月10日
PCから投稿

マッテオ・ガッローネ監督といえば、たとえ現代を描いた作品でもそこには濃厚な寓話性が染み出してくることでお馴染みだ。そんな彼がイタリアの代表的な寓話を描くとなると、かなりダークでブラックな一作に仕上がるのではと覚悟はしていたものの、いざ出来上がったのは原作の味わいを生かしつつ、妙ちくりんなれどしっかりと感情が香り立つ温かい作品だった。思ったよりおしゃべり少なめでピノッキオへの愛情を迸らせるベニーニがとてもいいし、ピノッキオの極めてwoodyな特殊メイクもこのCG全盛の時代に最高級の意匠を刻む。それに各場面を彩る奇妙なキャラクターたち一人一人がなんとも味わい深い。名曲「星に願いを」で知られるディズニー作品や、ベニーニの主演、監督作のことなどが頭をよぎる一方、スピルバーグ 作『A.I.』をもう一度見直したくなったりも。誕生から140年、シンプルなれど人を魅了し続ける物語の強度を再認識させられた。

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牛津厚信