「自己肯定感との戦い」死刑にいたる病 すのうまるさんの映画レビュー(感想・評価)
自己肯定感との戦い
この話のポイントは、自己肯定感にあるのかなと思いました。
なんと、登場人物はみんな自己肯定感が低い。
劇中では、虐待された経験のある人は、
みんな自己肯定感が低い。と何度も言っていました。
(自己肯定感の低い登場人物)
虐待経験のある死刑囚(榛村)
雅也
雅也の母
金山一輝
のちの雅也の彼女?の加納灯里
(自己肯定感の高い登場人物)
ほぼいない。強いて言うなら、殺された被害者たちかも。
(犯行に及ぶ考察)
自己肯定感の低い死刑囚は、
17.18歳の真面目で爪の綺麗な高校生をターゲットに近づいていく。
もしかしたら、死刑囚は自分が17.18歳くらいのときに
自己肯定感がガクッと下がってしまったのかもね。
ターゲットと会話を重ねることで、信頼を獲得する。
ここで死刑囚は、一種の自己肯定感が満たされたのかもしれない。
真面目に自分の苦手なことに、前向きにチャレンジし、
自分の人生を豊かにしていく自己肯定感の高そうな人たちが羨ましい反面憎かったのかな。自分と比べて。
そんな人たちに信頼されることで自分を保っていたのかもしれない。
ただ、最終的に猟奇的な殺人をすることで、
征服感や制圧感を得ていたのかも。
その時が最も、死刑囚にとっての自己肯定感が満たされたのかもしれません。
(雅也の自己肯定感)
雅也は中学生までは、地味な女の子(灯里)にも声をかけて、学力も高い順風満帆な人生だった。
しかし高校で失敗し、大学は三流大学に通う。
父に存在を煙たがられ、虐待され、自己肯定感を失う。
そんな時、死刑囚からの手紙を読み、会いに行き
「きみはすごいね」「きみにしか頼めない」と
死刑囚のリップサービスにまんまとハマる。
死刑囚の思い通りにマインドコントロールされ、
真相に近づいた気でいた。
けど、ギリギリのところで?若干アウト?なところで
自分を踏みとどまらせて(殺人未遂)、
マインドコントロールから脱却成功。
(灯里の自己肯定感)
ラストでは、彼女も死刑囚に
マインドコントロールされていたことがわかりましたね。
おそらく彼女も中学生のころから、
死刑囚のパン屋さんにいたのかもしれません。
そして、雅也に好意があることも死刑囚には見抜かれていたのだろうと思います。
彼女は中学生では目立たない学生だったから。
ところが大学では、華やかなサークルに入って
成功したかのように見えましたね。
劇中でも、服装がもだんだん派手に明るくなっていましたし。
しかし、劇中では描かれなかったけれども、
密かに彼女も死刑囚と接点があり、
手紙のやりとりがありましたね。
きっとそこでも、死刑囚のリップサービスに
まんまとハマってしまったのでしょう。
彼女は、なんと死刑囚の価値観に共感してしまっている。
好きな人の一部を持っていたい。という考えに。
ま、死刑囚は別に被害者たちのことを好きだったわけではないけど、灯里を洗脳するために言ったのでしょうね。
灯里は、死刑囚の言うことを聞いていると
実際に雅也と付き合えて幸せでしたでしょうね。
まあ、雅也には振られてしまうでしょうけど。
(考察)
死刑囚が、警察に捕まったのは、
わざと遺体遺棄をしたから。
今までは灰になるまで燃やしていたんだから。
けどそれには理由があったのだろうと思いました。
おそらく、いたぶって殺すだけじゃ
自己肯定感が保てなくなってしまったのでしょうね。
だから次のステップとして、
自分と似た自己肯定感の低い人を取り込み、
殺人鬼に変えていく。
そこに自分の新しい自己肯定感を見出したのかもしれません。
雅也が未遂をしてしまったことを聞いた時は、
興奮したでしょうね。
だけど、雅也がマインドコントロールから脱却した時は
簡単に切り捨てました。
彼は雅也、灯里以外にも接点をもち、
新しい殺人鬼を作る自己肯定感を
死刑執行されるまで続けるのだろうと思いました。