劇場公開日 2022年5月6日

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「白石和彌監督のヴァイオレンスを気味悪さに振った作品」死刑にいたる病 たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5白石和彌監督のヴァイオレンスを気味悪さに振った作品

2022年4月20日
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鑑賞方法:試写会

怖い

興奮

知的

久々にラストシーンで声が出た。白石和彌監督が得意とする血の映える描写に戦慄し、心理をまさぐる気味悪さに慄く。余韻で心臓が未だバクバク…。

一番最初に認識した監督であり、かれこれ『日本で一番悪い奴ら』から追っている。しかしながら、相変わらず鋭利な表現をドラマにもヴァイオレンスにも触れるのはさすが。お手の物って感じ。今作もヒーヒー言いたくなるような凄惨さが漂っているし、作品を追う度に逃げられない感じがしてくる。本当にその辺が上手い。ちょっと『冷たい熱帯魚』ぽくありつつ、PG12によく収めたなと思う。

殺人鬼から届いた手紙から始まる、冤罪の証明。この作品に漂う、目に見えぬ「囚われ」が充満。知らず識らずのうちに自身も身動きを取れないような感覚に陥る。その中で垣間見える心理戦がスリリングかつダイナミック。シリアルキラーの造詣を深めたからこそ見えてくる、異質な普遍性がより世界観のおぞましさを引き立てている。そんな脚本は高田亮氏。色々書いてるけど、こんなサスペンスもイケるのか…。作品のテンポも非常に重厚で、小説を読んでいるような感覚に近い。ジャーナリズムの形骸を使いつつ、個々の心理に落とし込めているから凄く恐ろしい。

そんな主演は阿部サダヲさんと岡田健史さん。阿部さんはとにかく目が強烈で、このあともトラウマ級に思い出すはず(笑)。岡田健史さんも声が魅力的で、重いトーンが背筋を凍らせる。実は2人がそれぞれ寄りかかっている部分があるからこそ、対峙する時の答え合わせと駆け引きがソソる。宮崎優さんも年々深みが出てきて良い。『うみべの女の子』といい、作品の袖を引き出してくれる。今後も注目したい。

何故に怖い映画なのに興味が引かれるのか。それは、そこにある心の深層に光るモノが美しく見えてしまうからだと思う。相変わらず裏切らない面白さ。必見です。

たいよーさん。