劇場公開日 2022年3月4日

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「難病純愛ものは古今東西映画の王道テーマの一つだが、この出尽くした時代において、まだ傑作が産まれる余地があったか‼️」余命10年 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0難病純愛ものは古今東西映画の王道テーマの一つだが、この出尽くした時代において、まだ傑作が産まれる余地があったか‼️

2022年4月9日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

劇場での観賞時、近くの席にお母さんと中高生くらいの女の子二人の家族連れがいた。このお母さんが後半はず〜っとすすり泣き。上映が終わって、両脇にいた娘さんたちが泣き崩れたお母さんを気づかっていた。
まぁ、このお母さんは極端だとしても、これで泣かなきゃ人じゃない…という感じだ。

ベストセラー小説の映画化だが、内容はかなり違う。
岡田惠和による脚色(共同脚本 渡邉真子)は、実話に基づいて同氏が脚本を担当した『8年越しの花嫁 奇跡の実話』と対になっていると言えなくもない。主人公茉莉(小松菜奈)を同じ病気で夭逝した原作者と同化させたようなアレンジが、観客の気持ちを強く映画の中に引き込む。
難を言えば、自殺しようとしていた和人(坂口健太郎)が生きることに向き直すトリガーが弱い気がした。茉莉の母親が病気だと勘違いして彼女に詫びるが、茉莉から「もう死にたいなんて言わないで」と言われたときには既に死ぬ気が失せていたように思う。
彼女を好きになって、彼女のために生きようとする…でもよかったのではないだろうか。

映画は満開の桜のショットで幕を明け、それが病室の窓越しだと判る。
命を終えようとしている入院患者の女性が、茉莉に「サイゴまで生きて」と言ってビデオカメラを渡す。
誰でも命を終える時が「最期」なので矛盾したような台詞だが、命がつきるその時まで生き抜いて欲しいという死を目前にした者からの願いとして、重い台詞だ。

茉莉は残された数年間をビデオカメラに切り取る。折りあるごとにビデオに撮るその様子が、ビデオ映像を見せる終盤の演出で見事に効いてくる。
若者4人組の交流を追って2013年から2016年の時の経過を見せるシーンが、なんだか良い。青年たちが友情を深めていく様子が、心の荒んだジジイの目には眩しい。

奈緒と黒木華が泣かせる。
巧い役者というのは、何をやらせても上手に訴えてくれる。
四季折々の風景が見事にスクリーンに映えていて美しい。

kazz
NOBUさんのコメント
2022年4月9日

今晩は
 時期を限って撮影された映画を否定する気は毛頭ありませんが、時間を掛けて製作された映画(特に、日本の四季を織り込んだ映画。例えば、是枝監督の「海街diary」)は観る側に訴求する力が強いと感じます。
 Kazzさんのレビュータイトルの答えになっているかどうかは分かりませんが・・。
 『8年越しの花嫁 奇跡の実話』と一週間の違いで公開されたクロエ・グレース・モレッツの『彼女が目覚めるその日まで』との不思議なシンクロニシティを少し思い出しましたよ。では、又。

NOBU