「映画外の現実が侵食して不安になった」余命10年 コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)
映画外の現実が侵食して不安になった
主人公を演じる小松菜奈と、その姉役の黒木華の演技が冴えまくって、そこらのひたすら泣いて叫んで、死ぬ寸前までやたら元気という難病ものとは一線を画してはいて、好感度は高い。
10年と言う時の流れを2時間に収めた監督・スタッフの手腕が光りました。
原作小説とは大きく変わっています。
小説では、「裁縫好きの主人公がアニメにはまってコスプレ衣装を作ったり、漫画家を目指す中で、同窓会で茶道を生業にする同級生・和人と3年間だけ付き合うが病気を理由に分かれる」流れだったが、映画では主人公を「原作者の小説家を目指した生き方」に寄せていて、彼氏の和人は家出した御曹司が鬱で会社をクビになり飲食店のバイトからやり直す、ってあたりで現実味が増すことでより共感しやすい形になっていたと思う。
ただ、主人公まつりと、彼氏の和人が別れてから亡くなるまでの間の、入院期間(時間経過)がわかりにくかったことと。
さらに、ラストの時期が作者の亡くなった2017年頃から、映画作中では2年の差、2019年に変わっているんですね。
そのせいで「この翌年にはコロナが来て、飲食店は経営的ダメージが」という現実を知ってる観客側にとって、少々「和人の生き方は大丈夫なのか?」と不安を想起させてしまい、ただでさえ暗い終わり方が、心配になって終わったのがマイナスだったかなと。
あとは、本編には直接関係ないのですが、普段は映画館に来ないような学生の客層が多く、上映中にスマホを立ち上げる人が多数いただけでなく、さらに友達同士のセルフィー自撮りをはじめた連中までいて、観ているこちらの気持ちを台無しにされたこともあって、いい印象を持たずに劇場を後にする羽目になったのも、ひょっとすると点数に反映しているかもしれません。