「米ドーナツ文化に、語りのマジックを少々」ドーナツキング 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
米ドーナツ文化に、語りのマジックを少々
アメリカといえばドーナツ。数年前に某チェーンが上陸したときに日本人が行列をなしたのも懐かしいが、そもそもの米国内におけるドーナツ商戦に、カンボジアからの移民たちの存在が関わっていたとは思ってもみなかった。ポル・ポト派が人々を弾圧し、おびただしい数の犠牲者を出した70年代カンボジア。そこから逃れて米国へとやってきた一人の青年が、ドーナツ文化に大きな変革をもたらすことになろうとは。本作はそんな知られざるクロニクルを穏やかな雰囲気でわかりやすく伝えてくれる。そして後半になると「あっ」と気づくのだが、ちょっとした語りのマジックも介在していて、その構造がドキュメンタリーとして興味深く感じられた。ドーナツにまつわる知られざる現代史を描くにあたり何を核とするか。確かに、この偉ぶらない、ほんわかとしたおじさんでなければ、その役割は務まらない。作り手は非常にアイコニックな点に着目したものだと感心させられた。
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