「時代の波と才能と」リスペクト ke_yoさんの映画レビュー(感想・評価)
時代の波と才能と
実はアレサフランクリンを、ちゃんと知らなかった。
エンドロールでその歌う姿を初めてその人だと認識した。ソウルミュージックが好きなのにである。
あぁ…この人のことだったんだとビックリして、そんな自分にも驚いた。
地域の多くの人から信頼と尊敬を集める、立派なお父さんが、どことなく支配的で、なんとなく怖かった。
お母さんとピアノを弾きながら話すシーンで、怖がらなくて良いとか、従わなくて良いという台詞を聞き、怖さの正体に気づいた。
なのに、彼女は支配されてしまった。
親しいフリをして近づいてきたクソ男に。
あの妊娠と出産は、暴力と支配だったのに…
今なら周りの対応も違ったのかもしれないが、
当時はカウンセリングなんかも全くなかったのだろう。
傷は、深いところをずっとずっとえぐり続けることとなる。
彼女自身だけでなく、周りの人にも傷を残す。
だからなのか、誰がどう見ても独占欲と見栄と虚勢のペラペラな、セクシーだけが取り柄の男に心身を委ね、何ならキャリアも委ねかける。
中盤のイライラしかしないシーンの数々。
他の男なら殺されてた?は?
殴らない男だってたくさんいるんだよ。
というかほとんどの男は、一生一度も女に手をあげないんだよ。
でもさすがに見切るそのシーン、殴られやしないかとハラハラしていたけれど、ペラペラ男は、その決意に気圧されていた。ザマーミロ。
マーティンが撃たれたというシーン。
始め、全く誰のことが分からなかった。
バーでお父さんが泣いている姿でようやく理解。
時代の波、出来事。
こういう分かりにくさのある作品は好みではない。
しかし、成功した多くのスターの軌跡を見ると、いつも途中からデフォルトのように酒や色や薬に溺れるが、何故なんだろうねぇ。
アレサは酒だった、見るも無惨なステージ。
でも、落ちて落ちて、自己嫌悪の後、自力で立ち上がってからのシーンは力強く、逞しく、素晴らしかった。
エンドロールでのご本人の歌唱シーン、劇中のリスペクトとやThinkと同じか、それ以上に感動した。
なんというパワー。才能。
きっと私は、これから彼女の曲をたくさん聴くだろうな。
ジェニファーハドソンの演技も、最高でした!