「胸躍るパフォーマンスを是非劇場で」リスペクト TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
胸躍るパフォーマンスを是非劇場で
71年生まれの私にとって、アレサ・フランクリンは既にスターだった人です。私が洋楽を聞くようになった80年代前半にはもはや大御所であり、正直、当時は馴染み対象ではありませんでした。
実際に、彼女自身70年代後半にはヒットに恵まれていなかったこともありますが、今になって改めて(アリスタ移籍後の)80年代前半のアルバムを聴くと、ディスコ要素が強く、クオンタイズされた音で私には非常に好みなサウンドです。
私がきちんと彼女を認識したのは85年リリースのユーリズミックスとの『Sisters Are Doin' It For Themselves』や、87年リリースでジョージ・マイケルとのデュエット、アレサにとって『リスペクト』以来20年ぶりの全米1位を獲得した『I Knew You Were Waiting (For Me)』などで、そこから徐々に遡ってアレサの実績を知ることとなりました。
勿論、映画『ブルース・ブラザーズ(80)』でソウルフード店の女主人を演じ、劇中歌として歌う『Think』の印象も忘れられません。
さて、肝心の映画の話になりますが(上記にある内容は、今作映画内では一切出てこない話です)、
映画はアレサの幼少期から、コロンビアレコード、そして大成功を果たすアトランティックレコード時代までが語られます。
1942年生まれのアレサは、父が説教者として有名な教会の牧師であり、マーティン・ルーサー・キング牧師とも旧知の仲でした。
彼女は幼少期から父の教会でゴスペルを歌っていました。61年にはプロとしてレコードをリリースする実力のある彼女、公民権運動にも多く参加し、どんどんと象徴的な存在となっていました。
また、キング牧師による公民権運動と言えば「非暴力闘争」ですが、当時のアメリカは人種問わず「家父長制」「男性優位」が当たり前の時代であり、家庭内では「父親に逆らえない」「暴力を振るう夫」という女性にとって非常に厳しい環境の中、アレサは自分の歌を武器にいつしか女性解放運動においても象徴的な存在になっていきます。
伝記映画としては及第点といった感じですが、何はさておき最高なのは、やはりというか当然というか、ジェニファー・ハドソンのパフォーマンスを抜きにしては語れません。やはり、これぞ映画館で観るべき映画と言えます。
タイトルでもある『リスペクト』が最高なのは言うまでもありませんが、逆に少しだけがっかりだったのは、私が好きな1曲『I Say a Little Prayer』(アレサにとってはカヴァーですが、彼女の歌うバージョンが一番好き)が、劇中のアレサにとって最悪な状況で歌われ・・・。でも、サントラには勿論ちゃんとした状態で収録されていますので、そちらで楽しんでおります。(映画鑑賞後、アルバムすでに3周目w)
この映画もコロナで数回の公開延期を経て、ようやくですが無事劇場公開された作品。映画館で観られたことを嬉しく思い、十分に楽しむことができました。