「砲兵と野戦砲が“主役”になる、希少な戦争アクション映画」1941 モスクワ攻防戦80年目の真実 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
砲兵と野戦砲が“主役”になる、希少な戦争アクション映画
史実に基づく戦争活劇でメインの兵器と主人公(または主要人物たち)の組み合わせといえば、戦闘機とパイロット、戦車と搭乗兵、潜水艦や戦艦と艦長、狙撃銃とスナイパーあたりが定番だ。もちろん、群像劇のスタイルで司令官をはじめ士官や前線の兵を多数登場させて戦局を描く戦争大作も作られてきた。
本作も、侵攻するドイツ軍と首都モスクワを死守せんとするソ連軍との攻防という第2次世界大戦の重要な戦局を扱ってはいるが、ドラマの主人公は兵学校で訓練を受けていた士官候補生であり、仲間ともに急遽前線に駆り出された彼は移動式の野戦砲を担当する砲兵になる。戦車などに比べると兵器の地味さは否めないが、敵の爆撃を受けてトーチカに配置していた野戦砲を大急ぎで移動させたり、門扉のようなカモフラージュ用のカバーをロープで開閉してトーチカ内の大砲を敵に見つからないようにするなど、砲兵と野戦砲の戦いぶりがこれまでにない丁寧さで描かれていて興味深い。
たまたま今の朝ドラ「カムカムエヴリバディ」でも学徒出陣の話が出てきたが、階級の高い年長の士官が後方に陣取り、若者たちが消耗品のように前線に送られるのはどの国の軍隊でも一緒。今なお軍事パレードを誇らしげに続けているロシアの映画だけに、製作陣には国威発揚の意図もあっただろうが、この国での鑑賞は戦争の悲惨さと愚かさを再認識する機会になればと願う。
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