アルプス

代役中毒。再現に取りつれた人を描いた映画だと、「クラッシュ」とかと並べたい。形式に癒やされるのは、理解できるけどなぁ。昔、村上春樹の短編で妻が死んだあとに同じ背丈の女性を雇おうとする男がいたがそれも思いだす。寓話的といえば分かるが、私の感覚としては、役割にそこまで中毒性を覚えることはなく、自分自身の実存を役割外に感じている。役割中毒→仕事中毒なら確かにいる。私はそうでもないが。なんであの新体操の娘にジジイがあんなに厳しくしているのかは、最後までよくわからない。

遺族の喪失感を軽減する業務グループ'ALPS’ 。
最初の4回はタダと言ってたから、基本は有料サービスなんだろうけど、寄り添い方がそれぞれ面白い。

四人のグループメンバーのうちの一人（看護師）が、ルールを違反（？）し、精神を崩壊させていく。
父親（この人は多分本当の父親？）のダンスパートナーを無茶苦茶に踊り倒したり、顧客の家に乱入したり。仕事上過去に覚えたセリフを何度も反芻するくだりは、AIの暴走のように見えて笑ってしまった。

決して一般受けする作品ではないが、「哀れなるものたち」「憐れみの3章」の序章としてランティモスワールドを体感する喜びに浸れる。

心の隙間をお埋めする、故人サブスクビジネス。

供給側の大暴走により、現実と虚構のバランスが大崩壊。モンテローザはいわゆる、向いてない人だったのだろう。

非現実を自らぶち壊し、必死に覚えた台詞を連呼して元通りにしようとする姿は、餌を前にして取り乱す犬の様だった。
観てきたものや聞いた事、今まで覚えた全部、台本だってわかってるのにノンフィクションにすがるその滑稽さ。アイドルのガチ恋は御法度なのだ。

うち、そう言う店じゃないんで、の目が世界で1番怖い。

あらすじ読まず観てて､途中途中､ん？と思うことが結構あった。

分かりずらくて､難解。

終わってから調べて理解できた。

終わり方が良かったというか､インパクトのある終わり方。

最後のシーンが心に残った。

ランティモス監督の奥方アリアン・ラベドの目力よ！