信虎のレビュー・感想・評価
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歴史的な説得力と迫力
面白い映画だった。時代劇の妙味は、基本的な史実は史実のとおり尊重しながら、その史実の間に「そういうこともあったかも知れない」という伏線を埋火のように埋めることだが、それに見事に成功している。登場人物が多いが、人物の登場に合わせて人物名が「武田信勝 勝頼の嫡男」などとタイムリーにテロップで出るので、混乱なく歴史の順序に気持ちが乗っていける。人物名がテロップで出ない映画の場合には、「これは信勝様!」と呼び掛けるなどのセリフが必要だが、それがない分、会話がすっきりしていて自然な臨場感がある。テロップがなければとても135分の尺に納まらなかっただろうと思われる。
建物や馬具、武器、さらには食器に至るまでリアルなものが用いられており、視覚的な迫力・説得力は大変なものだ。
また、戦闘シーンの自然さはとくに強調しておきたい。戦国時代の太刀捌きや足捌きは、徳川時代になってから定まった所作とは全く異なる。太刀の寸法も違えば、槍や弓の使い方も異なる。そのような武道所作のひとつひとつが、そういうことに詳しい者の眼で見ても不自然でないほど正確に、つまり歴史的考証に忠実に仕上がっている。時代性に忠実なタテの指導に敬意を表すると同時に、そのタテ指南に誠実に答えたキャストの人達の画面には映らない努力の大きさがうかがえ、久しぶりに見応えのある思いをした。
信虎は信玄によって国を追われた信玄の父である。父を追い払って当主となった信玄はその後間もなく陣中で没した。物語はそこから始まり、武田家が滅亡を迎え、徳川治世になってから再興を果たす。物語の中心プロットは、この滅亡と再興を繋ぐ一本の細い糸で、じつに巧みな構想で挿入されていて、鑑賞者は最後に膝を打つ仕組みである。その糸や埋火についてレビューでこれ以上触れるのは、マナー違反であろう。劇場でご覧になることをお勧めする。
もう1回行けるかな?
知人がこの映画の支援でクラウドファンディングに参加されたということで、私も応援のつもりで観てきました。
寺田農さん良かったです!
信虎の人間味がよく出ていました。
武田家の歴史は詳しいほうではないので、画面に字幕の説明が無ければ難しく、字幕に助けられました。
エンディングの5千円のクラウドファンディングの名前の読み取りは残念ながら名前の間隔が一文字分しかなく、読めませんでした。
名前の確認も含めて、もう一回観に行きたいです。また沢山の人々にご覧になっていただきたいです。
あの世に行ったら信玄に国を大きくしたことを褒めてやろう。そして、信繁と三人で語り合おう。
冒頭、甲陽軍鑑は偽書なのか?と問う。その姿勢には好感を持つ。同時期ではなく、やや遅れて、しかも口述をもとに纏められた書物は、編纂者の意図が大きく反映され、誰かを持ち上げるか貶めるかの目的が色濃い。この映画も、そんな人物評価(跡部や長坂に批判的)だった。
で、主人公の無人斎道有こと、信虎。いままで正直、メインを張るようなキャラではない印象だった。それは地元の意向で記録映画的に残しておきたかったのだろうと推察する。だから、どうしても、物語の進行が地味だった。戦国時代に興味がなければ退屈な内容だった。ただ、細部にこだわりが見える点には頭が下がる。登場人物は脇役に至るまで丁寧に演出してるし、衣装や甲冑もいい。何より、信虎の乗っていた馬がサラブレットではなく、ポニー(というのかな?例の小さな)だったのが、見栄えではなく史実にこだわりが見えた。
これまでのドラマや映画ではたいてい、追放された、で終わっていた扱いだったので忘れていたが、81歳まで生きたとはな。息子信廉の描いた肖像画そのものの、アクの強い信虎だった。
日本甲冑武具研究保存評議員も噛んだガチな戦国絵巻
まずこの映画で語られるべき点は日本甲冑武具研究保存評議員で茶書研究開発理事というガチな時代考証及び美術装飾の再現が出来る超人、宮下玄覇氏を共同監督に立てたことでしょう。
末恐ろしいです。茶道具、書、甲冑、弓矢等武具、掛軸、屏風、すべてその当時のものと錯覚するような色合いと外観で揃えている。
加えてロケ地となった建物。よくあるチープな軽い建材ではなく、マジでその当時の物を使っているような年季を重ねた色をしています。素晴らしい。
そして俳優陣。
割と旬な若い俳優さんを無理に年の重ねた役に起用することが多い今日ですが、永島敏行さん、隆大介さん(ご冥福をお祈りします)、榎木孝明さんとベテラン勢を主要メンバーに据えられている。だからどっしりと構えて安心して観ることができる。
更にメインの信虎役に寺田農さん。最早一挙手一投足が重圧感に溢れている。勝てるわけがない。左文字がこれほどまでに似合う役者さんはそうそうお見かけしない気がします。
短期間、低予算での撮影だったと金子監督がパンフレットで語られていますが、特に戦のシーンについてはこれでもかとモブが溢れる大作よりも、ちゃんと投石を使ったり、弓矢や槍で体の柔らかい部分を狙って倒す等、かえって少人数での戦場面ならではのこだわりが見えていたと思います。
全体的に派手さには欠ける映画ではありますが、イケメンが跋扈する煌びやかな戦国映画よりも昔ながらの土臭いオッサン武将の映画が観たいという方には全力で推せます。
なお評価が3.5止まりなのはラストシーンの影響ですな。みんなラピュタを観てる客ばかりではないのですよ…?
ストーリーだけではない面白さ
戦国の世における信仰に興味があるのですが、本作ではそういった要素が意外な形で描かれていて正直ものすごく興味がわきましたし、面白かったです。(そこまで歴史自体に詳しくはないのでどこまでが史実か判断できない自分が残念です。)
また、当時の生活様式に限りなく近づけたであろうリアルな世界観や華麗な衣服、渋い調度品など目が2つでは足りないくらいのこだわりが感じられました。
戦闘シーンは、大軍同士の戦いではないので、アクション映画のような大胆な迫力とは一味違いますが、自分が武士だったなら戦なんて恐怖の対象でしかないだろうな、と思うような生々しい緊迫感や、人命の儚さが感じられました。命を賭して戦う武士、格好良いです。
期待以上にあらゆる側面で面白い映画でした。
戦国時代とは…
この映画を観ようという人は、恐らくは歴史好き、時代劇好き、映画好き、何れかなのではないかと思う。
かくいう私はその何でもない、ただぶらりと休日の暇つぶしに映画館に赴き、その時間にたまたま上映していたので鑑賞したにすぎない。
しかし思いの外面白かったので記録しておく。
なるほど、歴史に通じた者が制作したことは間違いがない。知識があるならば更に楽しめただろうとも思う。
最近は忙しく仕事に追われているせいか、時間をかけて何かを感じたり、考えたり、願ったりする時間がなかったように思えた。
そういうことを思い起こさせる映画であった。
個人的には、現代に疲れた人に観てもらいたい、そういった類の映画である。
いや、本当は歴史好きが観るべきですよ。間違いなく笑
天才を世に送り出した後に、親は何をする冪なのか。
前半はあり得ない位に 何もかも、最下級に値する”酷い愚策D級映画”として始まる。
撮影も酷い。特にスロー画の扱い等においては、本作を鑑賞している すべての者の瞳孔が開いてしまうのではないかと思う程だ。
しかし中盤になるにつれ、主演:寺田農さんの存在感ある名演技に助けられ、作品としては持ち直す。
撮影は”準どり”だったのでしょう。LOL
時代映画ではいつも気に成る”わだち”
今回もしっかり 気を使わずに見事映り込んでいました。
公開後でもいいからCGで消修正してほしい。
題名から、この映画は 甲斐を統一した日々を描くのか?
それとも 家督を奪われた事変を中心に親子の葛藤を描くのか? と予想していたが、
信玄なき後の信虎の苦労を題材に描くとは
素晴しい目の付け所です。
日本そして世界の”老齢化社会”を迎えるにあたって、
隠居ではなく、第二の現役として
自分の人生をどう迎えるかというテーマに切り込んだ良い映画となった。
和菓子・ようかんで日本一著名である「株式会社 虎屋」が信虎の末裔の会社と匂わせるのはすごい落ちだった。
概ねの考証はよく、信繁公の母衣がでてきたのは嬉しかった。
裏側ではなく、表では何が起きていたのかを考える意味でも、黒沢監督の「影武者」をまた観たくなった。
甲府に行きたくなる映画
気付いたら武田領内にいる、そんな気持ちになる映画でした。
信玄没後の武田家ってそんな感じだったんだ……!と学びもあったり、戦国時代の死生観もわかりやすかったです。
自分よりも若い「これから」を生きる人達に何を託したいか、託すべきかと奔走する信虎を寺田さんが熱演されていて、良い意味で寺田さんであることを忘れて見入ってしまいました。壮大な音楽と風景がとてもきれいで、今とても史跡めぐりに出かけたいです。
リアル時代劇
とにかく寺田さんの演技が凄いです。ネタバレになるので多くは語れませんが。監督ありきで見て安心。音楽もさすがです。歴史好きバカがこだわり抜いたかも的な要素あり。どんな角度でも面白い(笑いではなく)一見の価値あり。
戦国クラスタにおすすめ
平山先生の『武田三代』を拝読し、すっかり武田ファンになってしまった私。
先生監修の映画、やっぱり一味違います……!
信玄没後の武田家の運命をじっくりと描いた、ここまでやるか!となるスケールの大きさ。
刀剣や茶道シーンも出てきますので、その方面のクラスタの方も観てみるといいですよ~
これまでのリアルとは違うリアル
冒頭から「何が言いたいんだ?」と思った。
前半はそんな感じで物語に置いていかれないようにするのに必死だった。
ただ淡々と時が流れていく中に身を任せていく内にふと気づいた。
「自分は今あの中にいる。」「リアルな戦国時代を目撃している。」
重厚な音楽。誇張されていないリアルな音。流れるように自然なカメラワーク。
評定のシーンで普通のトーンで交わされる会話は、きっとその当時、実際にこんな感じだったんだろうなと思わせてくれた熟練の俳優陣。
今までの時代劇とは全く違うコンセプトで作られているのがありありとわかった。
物語の登場人物と時を共有した2時間15分。短かった。
もう一度見ようと思った。
今度観る時は、さらに彼らとの時間を堪能できる気がした。
勝者の歴史の陰に見えてきた武将像
信玄公生誕500年ということで、甲府の地で観てまいりました。
武田家三代フリークの小生としては、あまり語られることのなかった信虎の後半生、武田家の行く末を描いてくれて感謝感激の限りです。
主役の寺田農氏の眼力も、まさに「原作通り」。
いやぁ、製作陣には感服、感服。
なかなかスポットの当たらない信玄の父の物語は興味深い
最初こそ登場人物の名前と、用語の漢字を教えたいのかやたら右に文字が出てきて気になるのと、「そこカメラ動かす意味ある?」という謎のカメラワークは気になりましたが(そんなぐるんと回って映すシーンか?とかなんで今手元映したのとか、おい歩いている人の腰映してどうすんだとか)信玄の父の晩年を描いた所は興味深く観られました。追放されたところまではなんとなく知っていましたが、その後も健在だったのですね。
映画館で見た方が良いかも
最初は粛々と歴史上の事実を綴った感じでしたが、三谷幸喜作品のようにスロースタータで尻上がりに面白くなる作品。
登場人物が多かったので、字幕があって助かった。とはいえ、メインの役者さえ理解していれば、多少脇役がわからなくてもストーリーに入り込めるし、イメージしていた歴史上の人物とさほど違和感ないキャスティングだったので、すんなり世界に入れた。
大河ドラマのような音楽はすばらしく、雄大な雰囲気を醸し出していた。
信虎晩年を描いた作品のため、合戦シーンが少なかったが、印地打ち(投擲衆)が登場するなどリアルさを感じた。ほかにも細部の小道具や流血のシーンなどにリアルさを求めていることが感じられたので、見逃した随所にも注目し、再度見てみたい。
次作は信虎の前半生を描いてほしい。
彼が笑っている
甲府駅北口に像がある武田信虎公。
南口にいる信玄公と比べると知らないことだらけだったので、映画での人物像に興味がありました。
戦国時代に疎い私にも見やすい作品でした。
パンフレットの寺田さんのインタビューでは「わかりやすくなり過ぎてしまった」との言葉がありましたが、これはむしろ助かりました。
歴史物であることに加えて、ほぼ想像に任せるとか、解説が最小限とかだったりしたら、映画慣れしていない私は最後までついていけなかっただろうと思います。「字幕」もとっても助かりました。用語を知らないとセリフも聞き取れなくなりますから、初心者が躓く要素を減らしてくれた字幕には感謝です。
四季が現れた景色が素敵です。妙覚寺というお寺はとてもきれいな所ですね。
全体的にリアルにこだわった印象があり、流血シーンはそれなりに怖かったですが、所々に笑える所や驚くような要素が入っていて楽しい映画でもありました。
岡島百貨店で見た黒いポスター、どうして北斗七星が描いてあるんだろうと気になっていました。ただのデザインにしては・・・妙な感じでしたから・・・。
おサルの「勿来(なこそ)」ちゃんは期待通りとっても可愛かったです(クリアファイルになっていたのも嬉しいです)。この子が動くたびに他のお客さん達も楽しそうに笑うのが聞こえてきました。でもおサルさん以上にざわついたのは、お菓子が出てきたシーンです。一番ザワッとしたのでびっくりしました。
周りのお客さん達の年齢層が比較的高めだったので、私が「あれっ」と思ったような小ネタには反応が鈍かったです。それもちょっと面白かったです。
それから、観る前は全く予想していなかった「倒せないラスボス感」というものを味わいました。
ラスボスと言うとまるで悪い人みたいですが、見た瞬間に浮かんだ表現がそれです。
歴史の再認識を促す映画
これまでの武田信虎の評価や戦国大名武田家の認識を見直すきっかけを与えてくれる映画である。信玄が唯一無二の存在として、山梨県では度々もてはやされ、神格化されてきた。しかし、武田家を信玄のみならず、信虎、信玄、勝頼の営みの中での変革を理解することの重要性を訴えているように思う。
歴史好きな方なら大いにハマれるだろうが、新しい演出好きな若者には少し硬派で意見が別れるだろう。だが、あえて硬派なイメージで作ろうとするあたり、偉人への尊敬の念と歴史映画制作へのこだわりを感じる。脚本や演出、俳優の演技や音響、小道具、大道具など大河ドラマと遜色なく、それ以上とさえいえる仕上がりだろう。
ただし、パンフレットの寺田さんのコメントにもあるように、丁寧さは確かに大切だがやりすぎるとしつこさを感じることもある。また、情報量の多さから、かえって混乱してしまう人もいるかもしれない。この点は改善の余地として、ミヤオビピクチャーズの次作に期待したい。
当時の世界観出しつつフィクション性高かった
今までスポットが当たらなかった武田信玄公の父信虎の話との事で期待して見に行きました。
話は柳沢吉保の回想録のような形でスタート。回想録は信玄公が倒れたところから始まる。信玄公にあとを頼まれたと思い込んだ信虎は、家督を継ぐべく娘と十数名の家臣を連れて甲斐国に目指すが、信濃国で孫の勝頼や信玄・勝頼の家臣団にはばまれる。その間織田の勢力が増し、勝頼の当主としての器量の限界を感じた信虎は家督より武田家存続を目指し、天寿を全うする。
というのが大まかな話。
血がリアルに吹き出たり、公家の娘の顔作りが当時を再現してるのは最近の戦国ドラマではあまりみないかな。
戦闘シーンは関所突破シーン、忍者との戦闘、天目山とそこそこあります。信虎の方針転換した辺りからフィクション性が高くなります。
観客の年齢層は高く、そんなに若い方ではない私が一番若かったかなって思ったくらいです。
歴史知らない人でも途中字幕や地図や説明が入るので置いてきぼりにはならないと思いますが、登場人物が多いので、ある程度知識がないとどれがどの人か分からなくなるかも。
最後にまさかのあるネタをぶっ込んで来て思わず笑ってしまいました。この年齢層にこのネタ分かるのかな。
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