「資料としても」信虎 南アルプスさんの映画レビュー(感想・評価)
資料としても
映画より先に、恵林寺にある信玄公宝物館を見学しました。
そこには映画『信虎』で実際に使われた小道具が展示してありました。
それらの小道具の説明パネルには「江戸時代」などとあり、江戸時代の物を映画の小道具として利用したそうです。古そうに見せた作り物のみではなく、なるべく当時に近い道具を用いて、再現につとめたらしいことに驚かされました。
その後、映画を見に行ったのですが、確かに展示されていた小道具が登場しています。たまに道具だけが大きく写るシーンもありますから、気が付きやすかったです。
どのように登場するのだろうと気になっていた払子は、柳澤吉保が触り心地がよさそうに撫でていたり。見つけきれなかった物もありますが、そういうのを探しながら見ていたので、少し違った見方で映画を楽しめました。
小道具でそれだけこだわっているので、他の点についてもである意味信用しながら見ることができました。
食事ではこのようなものを食べているのか。
その茶碗はそのように持つのか。
部屋の飾りはそのようになっているのか。
戦いではこんな方法も使うのか。
などと、映画ではあるのですが、半ば教材であるかのように見ていました。
他にも人々の並び順や、物の置かれる位置や、退席の様子、自害の方法、使用される単語と文と、本当に様々な部分にこだわったのでしょう。
派手さや画面映えの犠牲にならないように、当時の文化を再現して見せてくれているようでした。
人々のドラマの合間にうかがえる彼らのさりげない所作、それに周囲の品々は、文化を美しく映像化した資料としても見ていられます。彼らの生活や人生をもっと眺めていたくなるほど、充実したシーンの数々でした。
できればまた、こういった映像を作っていただきたいです。