「関西の人はどう見たの?」翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて 町谷東光さんの映画レビュー(感想・評価)
関西の人はどう見たの?
続編が正編のデキを超えるというのは、ほとんど例がないだろう。
結論からいうと、本作もその通りである。
決してデキが悪いわけではないが、4年前の正編に比べるとかなり見劣りがする。
今回は、大阪-滋賀、そして周辺の京都、神戸などを引き合いに出してきて、前作とは違う設定にしている。
しかし、それが成功しているのかどうか。関西で生活した経験がない自分には、イマイチインパクトに欠ける描写が多かった。
関西の人たちが、本作を見て大いに笑い、あるある感を持って映画を見てもらい、周辺の人にも「あの映画、笑えんで」と薦める域に行ったいるだろうか。
僕はそうは感じない。前作のデキがずっとよかった、ということだ。
ほとんど、前作と同じ設定、キャストでありながら、何が弱かったのか。
物語の舞台を全国大阪化をねらうという片岡愛之助演じる大阪府知事を軸に据えたのは決して悪くはない。
もう一回、埼玉VS東京、その他の関東の県という対立軸で映画化するのは無理があるから、それはそれでいいが。
前作のすべてを言い尽くす「埼玉県民は草でも食っていろ!」を超える、滋賀県を腐すようなフレーズ、象徴的な事象が本作にあっただろうか。自動車のナンバープレートを見て、「ゲジゲジと言われている」とかでは、滋賀県民の屈辱があまり見えてこないのだ。
評者は関西での生活経験がないものの、大阪とそれ以外の関西各地の関係性、空気感がわからないでもない。それを、他地域に住む人間にも笑える形で再現できているかもしれない。
しかし、見る側からすれば、それがイマイチ弱い。今の時世に合わせて、いろいろ忖度している感じがぬぐえない。
本作を見た後に、配信されている前作を見たが、ぜんぜん向こうのほうがいい。「ネズミーランド」なんて遠回しの言い方でなく、ディズニーランドとはっきり言っているではないか。
キャストその他に難があるわけではない。前作の主要キャストである伊勢谷友介を、執行猶予中でも、本作に起用すればよかったのである。
それくらいの、毒を入れ込まないと、この映画は成り立たないのだ。
そうしたキャスティングを含めても、全般に腰が引けているのだ。
前作の滅茶苦茶な弾けっぷりには到底及ばない。
それなりに金をかけて、スペクタクル巨編にもしているだけに、知恵を絞り足りていないのが残念だ。
滋賀を舞台にした関係で杏がメーンキャストにならざるを得なかったのだろうが、やはり二階堂ふみをメーンにしたほうがよかった。