「映画に出来ること」プリテンダーズ shironさんの映画レビュー(感想・評価)
映画に出来ること
ぴあフィルムフェスティバル2021 クローズド上映
最後の最後に、ものすごい映画キター(・∀・)
フィクションが出来ること。
フィクションだからこそ出来ること。
むしろ、フィクションにしか出来ないこと!
そんなフィクションが持つ力を見せつけてくれて、表現の閉塞感に風穴を開けてくれる作品でした!!
最初は自主制作で始めた企画だったそうです。
=誰も傷つけない映画=
多様性を意識し、コンプラやポリコレに配慮することは決して悪いことではないけれど…PFF第二回大島渚賞は該当者がいなかった。
審査員でもある坂本龍一氏のコメントの中で、学生から『自分の作品が誰かを傷つけるのが不安です』と言われ『そんなことなら作るな。必ず誰かを傷つけてしまうのが作品というものなんだ』と反論したエピソードが紹介されていました。
学生の自主制作映画ですらお行儀良くなっているなか、大きなお金が動く企画になればなるほど各方面への配慮が必要になり、表現の幅が狭められるのは仕方のないことなのかもしれない。
プロの監督が自主制作で映画を撮る。
自分のケツは自分で拭く。
その覚悟の凄まじさ。
そこまでしても伝えたい事がある。
そこまでしても表現したいことがある。
その熱量に、観る側も突き動かされます。
けど。監督だけに責任を押し付けているようじゃぁ〜日本の映画文化は衰退する一方よ。
テレビマンユニオンが賛同して、スポンサーが付いてくれて本当に良かった。
作り手を応援するPFFで上映するに相応しい招待作品だったと感じます。
映画のオープニングで撮影監督の名前の紹介順が早くて、あれっ?と思いましたが
とにかく撮影がすごい!!
カメラが語ってくる感じは、山崎裕さんのよう。
それもそのはず。南幸男さんはドキュメンタリーでは有名な撮影監督さんなのだそうです。
さすがテレビマンユニオン。
この撮影の生っぽさは、“リアルのなかのフィクション”のテーマにピッタリ!!
短編の『醒めてまぼろし』に続き、小野花梨ちゃんが主演!
役名も花梨ですが、そもそも小野花梨ちゃんありきの企画で、もちろん脚本も当て書きだそうです。
家族全員が『南極料理人』のファンで、とくに次女とは事あるごとに彼女の魅力を語っていたので、本当に嬉しい。
てか、彼女を主演に据えられるような映画が作られて本当に嬉しい。
リアルに持ち込んだフィクションで、騙し騙され
最後の最後まで気を抜かずに観てほしいですww
以下、ネタバレではありませんがテーマバレ
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『トゥルーノース』のレビューでも書きましたが、清水ハン栄治監督のお話しで
素晴らしい活動がSNSで拡散されることで、強く賛同する人々が集まれるようになった。
しかし、活動の熱量が高まれば高まるほど、それ以上の広がりは難しくなる。
人の心を動かすのは“強い訴え”ではなく“感動”なのだ。
今も現実に12万人が収容されている強制収容所の事を知って欲しいけれど、リアルに描くとトラウマになりかねない。
(適度にリアルだけど一定の距離を置いて観られるように調整した結果、あのデザインになったそうです。)
リアルすぎないフィクションだから、安心して心が動き感動に繋がる。
まさにコレ!『プリテンダーズ』にも通ずる。
リアルにフィクションを持ち込むと「騙す」ことになるけれど
最初から騙す前提でも、しっかり心は動く。
むしろ安心感の中での擬似体験こそ、相互理解の近道。
“安心感の中での擬似体験”は、最も映画が得意とするところ!
映画に出来ることは、まだまだあるぞ〜!!