劇場公開日 2021年10月16日

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プリテンダーズ : 特集

2021年12月24日更新

【語りたくなる一作】
あなたは彼女たちの行動をどう見る?
SNSで世直しを企む女子高生の物語

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話題の映画を月会費なしで自宅でいち早く鑑賞できるVODサービス「シネマ映画.com」。本日12月24日から、小野花梨、見上愛がSNSを武器に社会を変えようと抗う女子高生を演じた「プリテンダーズ」の先行独占配信がスタートしました。

幼い頃から学校での集団行動になじめず、引きこもりぎみになった主人公が、親友とともに“嘘”の事件をSNSに投稿。その反応によって対話を生み出せるのでは……と考え、投稿内容がエスカレートしていく様を描きます。2人の女子高生の過激な行動と共に、SNSの使い方、日本の教育現場、多様な家族の形の在り方など様々な社会問題もあぶりだされ、「生きづらさ」を感じている現代の若者をリアルに描いたドラマとして楽しめると同時に、観客に問いを投げかけます。映画.com編集部と本作宣伝スタッフが見どころを語り合いました。

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プリテンダーズ(熊坂出監督/2021年/117分/日本)

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<あらすじ>

生前に社会からスルーされ続けた画家のゴッホに共感する17歳の花田花梨は、社会に反抗心を抱き、父親と言い争いをして家を飛び出し、親友の風子のところに転がり込む。

ある日、電車の中で病人に席を譲った花梨は、その時に抱いた得も言われぬ感覚をきっかけに、現実にフィクションを加えてファンタジーを生み出すことで、世界平和をもたらそうと考えつく。風子とともに「プリテンダーズ(=フリをする、演じる)」を名乗り、アイデアとSNSを武器に、次々とドッキリを仕掛けて、SNS上に動画を投稿していくのだが……。


座談会参加メンバー

和田隆、荒木理絵、今田カミーユ、上良(宣伝担当)


■花梨を演じた小野花梨の役者魂がすごい
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和田 作品は、「パーク アンド ラブホテル」の熊坂出監督が、SNSを武器に社会を変えようと奮闘する女子高生の姿を、痛快かつハートフルに描いたオリジナル作品です。まさにSNSと同じように、炎上しかねない物語、展開だったと思うのですが、皆さんの感想はいかがでしたか?

今田 私は世代も異なるので、正直共感ポイントはなかったのですが、まずは、自意識にがんじがらめになった花梨を演じた、小野花梨さんの演技がすごいなあと思いました。あとは、SNSの恐ろしさを学ぶのに良い作品だと。

上良 冒頭から中盤までは炎上上等!の展開のようにみえますが、村上虹郎さん演じるキャラクターが登場するシーンから作品のテンションが大きく変わってきます。

荒木 主演女優のおふたりは素晴らしいですね。ドキュメンタリー風のカメラワークも相まって、リアリティある映像でした。主人公が抱える悩みも、あの世代の子たちにはごくありふれたものだと思います。私はみんなとは違うのよ!って。

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和田 ゴッホに共感する女子高生17歳、小野さん演じる主人公の花梨の個性は強烈でしたね。

上良 小野さんの演技がうますぎて、本当にあんな性格なのかと思ってしまいますよね。実際の小野さんは、とてもチャーミングで、本当にかわいらしい方でした。あまり大きな声では言いたくなさそうでしたが、本作の役作りのため体重も増やしたそうです。NHK朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」のきぬちゃん役でも注目されました。

荒木 あの爆発力はすごいですよね。大人なら当然生じるような迷いがない「子どもっぽさ」というか。

和田 すごい役者魂ですね。

上良 冒頭の展開で花梨のキャラクターに説得力がないと、その後の展開で描かれるいわゆる胸糞シーンに引かれてしまったかもしれません。

■世代によっては、見るとムカつく映画!?

和田 シスターフッド(女性同士の連帯)ムービーとうたわれていますが、男性層の反応はどうでしたか?

上良 男性は、花梨の父(古舘寛治さん)目線で見る世代からは「最初はムカついた!最後まで見て納得!面白かった!」という声が聞こえてきました。

今田 花梨のキャラクターが、かなり異端児なので同世代にどう捉えられるのか気になりました。今時の若い子は……ということでもなく、どんな時代にもいる、型にはめられたくない、個性や自己主張が強いタイプの子ですよね。

上良 そうですよね。若い世代の方は共感される方が多かったです。本作、<自己肯定感>がキーワードになっていて、表現欲求というのか「自分」を前に出して伝えたい感じは、SNS時代ならではなのかもですね。

今田 花梨は演劇や小説など、いわゆる芸術分野に挑戦して挫折しましたが、SNSという手軽に自己表現や承認欲求を満たせるツールを見つけ、やや大言壮語的ですがフィクションで社会も変えたいと真面目に語っていました。

和田 ただ、自分の考えを問われると言葉に詰まるようなシーンがありましたよね。

荒木 実際は力のない子どもだけど、SNS上では影響力を持てたような錯覚に陥るんですよね。親と仲たがいして住む場所なくしたり……実際の生活は、とたんに立ち行かなくなりますし。

上良 たしかにそうでしたね。親と離れて暮らす風子は、花梨に加担することで、<自己肯定感>を補っていたんだと思います。

今田 自宅では妹のお母さん代わりにならなきゃいけない花梨は、風子には甘えることができているようでした。

和田 風子役を演じた見上愛さんも魅力的でしたね。

上良 見上さんの演技で引き込まれるシーンもありますよね。大きなスポンサーのCMに抜擢されるなど女優としての注目度も高まっています。

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■この映画のターゲットは?

和田 宣伝はやはり10代をメインターゲットに展開したんですか?

上良 主人公たちと同世代の方が一番共感できる作品だと思いましたが、この世代に作品を広げるのは、さまざまな事情で難しいと思っていました。

今田 配信だとスマホでも見られますから、ぜひ若い世代にも見てほしいですね。

上良 今回の配信で若い世代に見てほしいです。

和田 私は熊坂監督や古舘さんが演じた父親世代ですが、ちょっと理解があり過ぎのお父さんかなと思いました。

上良 古舘さん、理解のあるお父さんでしたよね。あそこまで理解があるのは、やはり片親で育てていて、花梨に妹の母代わりをさせているという立場もあるからなのかもしれません。

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今田 彼女らと同世代の高校生にも見てほしいですが、私は3~40代はもちろん、それ以上の親世代にもおすすめできると思いました。SNSの使い方ひとつで、未成年はこんなことに巻き込まれるのか……と、知ることができましたし、もし家族がある人であれば、子どもとの接し方やコミュニケーションのとり方も再考するきっかけになりそうです。

和田 気付きにもなりましたし、親世代として考えさせられました。

■厳しい校則で個性や自由を押さえつけられる日本の高校生

上良 ご覧になった方の感想で、教育の現場にいらっしゃる方の感想もいただきました。この配信に併せて、高校生座談会の記事もアップされていますね。

<「プリテンダーズ」女優と現役高校生&大学生による座談会記事はこちら>

今田 記事の高校生たちは花梨に対しては理解があり、厳しい校則の話で盛り上がっていましたね。SNSの使い方は慎重にわきまえているようでした。映画の最初の朝礼のシーン、私はあんな儀式すっかり忘れてましたが、今は自由な大人になってよかった、大人バンザイ!と思いましたよ(笑)。

上良 高校生時代を思い返すと、私も世界が狭かったです。当時SNSという道具を持たされたら、花梨のような行動を起こしていたかもしれないなと思います。

荒木 子どもはなにかと不自由ですよね。制限のなかで自己実現のために四苦八苦しますが、あの頃SNSがあったら私もヤバかっただろうなあと容易に想像がつきます。

上良 SNSがない時代にたくさん失敗ができて、よかったと思います。

今田 そういう点では、昔に比べて今、リアルに失敗できるチャンスを失っているのかも。生徒がみんな同じように“前へならえ”的な教育と校則は日本だけかもしれませんが、若い世代のSNSの炎上というテーマは世界的に普遍なトピックですよね。

上良 この作品と出会う年代、見るタイミングによって、感じ方が変わる作品ですね。

■豪華な共演陣、コロナ禍を反映した脚本、ゲリラ撮影など、見どころがたくさん

今田 そういえば津田寛治さんが、生徒たちに厳しく命令して、日本人の精神性などを持ち出す教師役だったので「ONODA」がリンクして面白かったです。

上良 出演者も演技派揃いで豪華です。渋谷のスクランブル交差点のシーンは、いかがでしたか?ゲリラ撮影でした。

荒木 あれすごくリアルですね。基本みんな無関心なのも。笑。2人の女子高生が大きな声で言い争っているのに、通行人は皆目が死んでいました……。

和田 最近よく撮影されている栃木県の足利に作られたスクランブル交差点かとも思いました。

上良 リアルな渋谷で、周りの方はエキストラではないそうです。

荒木 「コロナ」というセリフが劇中で何回か登場しますが、撮影はいつ頃だったんですか?

上良 撮影は、2020年3月で緊急自体宣言の手前だったそうです。

荒木 なるほど。タイムリーだなと思いました。

和田 衣装や美術にもこだわりを感じましたね。

今田 花梨のコーディネートが好きでした!

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上良 花梨や風子の衣装は、名古屋・大須のリズムワープさんにご提供いただいたそうです。取材やイベント時のスタイリングでもお世話になりました。

今田 情報量が多いので、見た後にいろんなことを考えさせられ、様々な視点で語り合える作品ですよね。

上良 熊坂出監督の作家性かもしれません。物事を丁寧に多角的に伝えたい思いがあるんだろうなと思いました。脚本は、美術・助監督なども務めた葛谷朱美さんと一緒に開発された、オリジナルです。

和田 作家性のある監督の映画、しかもオリジナルが少なくなってきてますので、貴重な作品だと思います。

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