スティルウォーターのレビュー・感想・評価
全103件中、1~20件目を表示
変わるマルセイユ、変わらないオクラホマ、変わる主人公
フランスをはじめ、欧州で排外主義的な動きが高まっている。極右勢力が政権与党に入ることも珍しくなくなってきている。本作のタイトルは、オクラホマ州の町の名前で、主人公の出身地。しかし、映画の主な舞台はフランスのマルセイユだ。2つの街の、対照的な部分と共通している部分が映画の中で示される。
進化に取り残されたかのようなスティルウォーターは、いつまでも変わらない。白人ばかりが住んでいて、新しい経済も発展していない。主人公は石油会社に務めていた肉体労働者だが、職を失いかけている。変化できずに沈んでいく街であるスティルウォーターと対照的にマルセイユは劇的に変化している。フランス一の移民の街であるマルセイユは、多くのイスラム教徒が暮らしいている。主人公の娘は、イスラム系の彼女を殺害した嫌疑で収監されている。多様性を尊重する舞台女優のヴィルジニーは排外主義的な白人の老人に激昂する。急激な変化で移民に対する嫌感情も台頭しているマルセイユは、変化が激しすぎて多くの問題を抱えていると言える。
2つの街は対照的だが、どちらも20世紀のままではいられない。アメリカもフランスもこれからの指針を持てずに戸惑っている。この映画はそんな戸惑いを、一つの事件を通して見事にあぶりだしている。
マット・デイモン作品にハズレなし。冒頭から脚本のうまさ、俳優陣の味わい深さに引き込まれる
「扉をたたく人」や「スポットライト」で知られるトム・マッカーシー監督作なだけあって、極力少ない言葉数を用いて、主人公の陥った複雑な状況をわかりやすく伝える手腕には全く恐れ入るばかりだ。投獄された娘。事件の真相をめぐる父親の奮闘。はたまた、マルセイユで出会う母娘との心温まる交流ーーー。マッカーシーが従来の脚本執筆のやり方とは根本的に異なるやり方、すなわち異国の書き手とのコラボレーションによって構築した本作は、自ずと”異邦人”というモチーフを掘り下げ、それによって暗に「アメリカとは何か」を浮かび上がらせているように思える。冒頭シーンで不意に映し出される荒れ果てたアメリカの一帯も、主人公たちの心の情景を的確に表現したものなのだろう。決して明瞭な結末ではないが、その陰影が観る者に多くを問いかける。マット・デイモンら俳優どうしの空気感の醸成も素晴らしく、娘役アビゲイル・ブレスリンの存在感もさすがだ。
もやもやを残す作品
娘が殺人の冤罪で服役中。主人公の父親にとって我慢ならない状況だ。真犯人の証拠を探しているうちに、娘にも非があったことを知るが、事件は再審となり無実が証明された。
アメリカという国をストーリーに組み込んでいる。
やましいことがある。決して正義ではない。それでも正しいようなことをして家に帰ってきた。
もやもやしているのが、現代のリアリティ。勧善懲悪や完全なハッピーエンドには懐疑的になってしまう。本当に幸せなのかと。
ネットワークの充実、通信機器の発達によって、世界中のある程度のことを割と簡単に知ることができるようになった。そんなグローバル化によって幸せだと信じることがしにくくなっている。こちらでは幸せそうな人がいる一方で、あちらにはそうではない人がいる。それは以前も考えればわかることだったけれど、現代ほどの現実感は感じられなかった。
終始無表情な主人公が最も感情を表すのは、フランスの居候先の子供と別れるシーンだ。
子供の小さな背中を太い両腕が寂しそうに抱きしめる場面は、作品中最も感情的に描かれる。
娘の無実が証明されて、オクラホマに戻ったシーンは、父娘ともに嬉しそうではない。州によるセレブレーションのシーンなのに表情は明るくなく、気まずそうだ。
主人公はフランスのマルセイユで居候先で暮らしている場面が一番幸福だった。この幸せを失ったのは、自分の行動だし、元は娘が関係した事件のことがある。さらに娘がフランスに留学したのは、主人公が良い父親と距離を取りたかったからだ。原因と結果、因果応報。
主人公は目的を果たしたわけで、ハッピーエンドな展開であるはずだ。にもかかわらず、もやもやを残すこの作品にリアリティが感じられる。ラストのポーチで話す二人の表情が現代にとってふさわしい。
今後、映画に限らずストーリーテリングは、現実感のあるハッピーエンドを語れるのだろうか。
ほどよくドキドキ
下越
ある国の人は力尽くで踏み込んで腕力で解決しようとする
またある国は理詰めで自分の考えを押し通そうとする
私の国はかつてはそうではなかったはず
新天地と聞くとワクワクする
知らない場所やそこでの出会いにとても関心がある
見たことのない風景は心を豊かにしてくれる
まったくそれを受け入れられない人も居ます
安心して知っている人達に見守られいつもの道を行く
安定した生活なとても充実したものでしょう
どちらもとても良い生き方です
家から離れることは幼い時から決めていたこと
できるだけ遠くへと
親からも兄弟からも干渉されないために
自分の意思が弱いから相手に何も言えなかった
だから家を出たのに正確が変わらなきゃどこへ行っても一緒だった
結局は強く言う人間には逆らわない
我慢することが当たり前の生き方は嫌なのに変わらない
だからいつもどこかもっと遠くへと行きたくなる
何でも良いから新しい事をしたくなる
巡り巡って故郷に戻ったらどんな景色が待っているんだろうか
遠く離れれば離れるほど古郷を強く思うようになる
もう誰も私には言わなくなった
まるで違う街のように古郷が私の目に映る
なんだか重いものが残りました
マット・デイモンってすごいなぁ... 子役ももちろん、皆さんのレビ...
何がただしいのか?
遠く離れた異国の地で無実を訴えて収監されている娘を救おうと言葉も通じない国でもがく父の姿に応援したくなる気分にさせます。
中盤は、娘のことをさておきな感じで、アットホームな感じにはなりますがそれはそれで良かったです。
流石に終盤には本題に戻りますが、ここでは正しいことをとは何か考えさせられました。
分類的には長時間の作品かと思いますが、はまりこんで見れる作品かと思います。
本作、リトルミスサンシャインの女の子が、収監される娘役ですが、面影があり懐かしく感じもしました。
途中、同居する娘役の子も同じく子役として良い味を出してました。
最後に嬉しく思ったのは、サッカーのマルセイユのチームの紹介で酒井宏樹の名が出てきたことです。このような英語まで名がでるとは、地元チームのメンバーとして愛されていたのだなと日本人として嬉しく思います。
人生は残酷だ
アメリカ的でフランス的な、微妙な感覚の残る映画。
主人公のアメリカ人(マット・デイモン)は、無実の罪で収監されている娘のためにフランスに行き犯人を探す。しかし言葉と文化の違いからスムーズには行かない。感じるのはアメリカとフランスの肌合い?それに決して馴染めない主人公の孤独感がある。映画は家族の物語なのか、恋人同士の物語なのか、サスペンスの入った物語なのかはっきりしない、「見せるべき軸がぶれてる」そう感じさせてしまっている部分があるのかも知れない。
謎だったある部分が判明すると、主人公は戸惑いさらに深い孤独感に入るのがわかる。全体を通じて異国人の感覚、真実と後悔、もどかしさ、映画の表現の仕方はアメリカ的でフランス的な感覚を持っている。観る人の中の何かが一致すれば、いい映画だと納得する。
ダメな男の掴みかけた幸せ。
最後まで孤独の中にいた。
※
モヤモヤは残る
後味悪いのー
父と娘
マッドディモン
父と娘
魅せる演技と伝わる感情
全103件中、1~20件目を表示