劇場公開日 2022年1月14日

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「【縛り付けるもの】」スティルウォーター ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【縛り付けるもの】

2022年1月16日
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言い方は悪いが、この手のアメリカ作品は、アメリカ社会を理解しないとなかなか面白いと感じられないものが結構あったりする。

スティルウォーターのあるオクラホマ州は、中西部にあって、近年、全米50州の中でも安定的に高い経済成長を達成している地域だ。

映画をご覧になった人は、あれっ?と思うかもしれない。

ビルは原油の掘削に携わっていて、油井の停止でレイオフされ、なかなか安定した職を見つけられなかったからだ。

また、新興国の経済発展に伴う原油高から考えても、原油需要は増加傾向で、レイオフに違和感は残るだろう。

オクラホマ州は、もともと産油量の多い地域で、農業とともに産業基盤となっていたが、かなり昔の原油価格の低迷を機に、長い時間をかけて、産業構造の転換を図り、原油の代わりに天然ガスに重きを置いたり、様々な製造業の誘致に努め、安定した経済成長を達成していたのだ。

こうした経済的変化のなかで、取り残され、変化に適応できない人物のメタファーとなったのが、ビルとその娘のアリソンなのだ。

(以下ネタバレ)

アリソンは、そんなビルを嫌い、州立大学からマルセイユの大学に移ってしまう。

その中で起きた事件。
有罪判決。

レイオフされ、マルセイユに長期滞在し、アリソンの無実を立証しようとするビル。

なす術ががなく、孤立していたが、ヴィルジニーやマヤとの出会いで、次第にビルは変わっていく。
しかし、事件の核心に近づくにつれ、独善や見境の無さがあたまをもたげる。

マルセイユでフランス人にアメリカ的だと言われるが、ヨーロッパ人は概ね、アメリカに対してこうした感情を抱いているように思う。

アリソンが解放されたところから考えると、アリソンの終盤の言葉が事実として認められたことなのだとは思う。

しかし、短絡的にアメリカを離れ、短絡的な依頼をし、自分ではなす術もないアリソンも、ビルと同じで変われなかった人物なのだ。

縛り付けるもの。

この作品は、事件そのものよりも、社会の変化に付いていけず、取り残されたアメリカの人々の悲哀を示唆的に描こうとしたのだと思う。

そして、よく考えると、こうした人は、アメリカ社会にだけではなく、日本にも多くいるのではないのか。

最後、ビルが、2度と会えないとしながらも、ヴィルジニーやマヤに想いを馳せる場面は、ある意味、社会変化の犠牲者のような人々にも、自ら変化を求めても良いのではないかと促しているようにも感じられて、やっぱり、示唆に富んだ作品だと思った。

ワンコ
ゆっけさんのコメント
2022年2月1日

アリソンは真実をフランスで告白してない気がします。してたらアメリカの歓迎ムードが盛り上がりすぎな気がするので、
当初から弁護士に手紙で伝えた伝聞の主張を繰り返し、それを裏付け得る証拠が出たためって感じじゃないでしょうか。

序盤にアリソンが言ってた『何度も文面を考えた』も意味深に聞こえます…

ゆっけ
ぷにゃぷにゃさんのコメント
2022年1月18日

ARASHIにコメントありがとうございます。
11月から上映しているので、もうそろそろ終わるかも、と思い、見ました。
まだ10人くらいは客席にいましたね。
ファンの方たちは、いったい何回足を運んだのでしょうか。愛ですね❤️

MJと同じジム!すごい!
礼儀正しいとは、ちゃんとした、いい子なんですね。
来年の大河ドラマも楽しみです。

ぷにゃぷにゃ