「映像美は素晴らしいが、物語は「こんなサー・ガウェインは嫌だ」という感じ」グリーン・ナイト らりほーまさんの映画レビュー(感想・評価)
映像美は素晴らしいが、物語は「こんなサー・ガウェインは嫌だ」という感じ
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原典を含めたアーサー王伝説好きです。
海外での評価も高く期待値高めで観賞しましたが……正直「コレジャナイ」という印象が残りました。
放蕩息子が親の庇護を離れ、情けない姿をさらし続けながらも最後には騎士としての覚悟に目覚め、緩慢な生よりも高潔で名誉ある死を受け入れる。
その過程を、キリスト教的文明社会と、緑の騎士やガウェインの母による呪術という自然の象徴との対立を交えながら描き、映像美は流石の一言。
けれども、原典では高潔な騎士として、様々な試練を見事に乗り越え、ある種の道徳的なお手本となるサー・ガウェインの姿からはかけ離れていて、アーサー王伝説のファンとしては残念でたまらなかった。
正義と言う言葉が権力の殴り棒になり果てた現在だからこそ、失われた騎士道=正道の体現者であるサー・ガウェインが丁寧に問題を解決していく姿を期待していたのだが。
出てきたのは、日本人にとっては既に使い古された自然と文明の対立軸や、乳離れできぬ放蕩息子が親の庇護を捨ててようやく一人前になれるという成長物語。
海外では脚本の評価が高いようだが、日本人はそういった題材は少年漫画の時代から散々に見てきているので、斬新さも感じない。
こういった甘えた題材は、青少年時代に体験しておくものだ。欧米人は違うのだろうか?
コロナ禍や戦争により人心が乱れる今の時代だからこそ、このようなモラトリアムの無様さを眺める作品ではなく、人々の心を照らすような騎士物語観てみたかった。
解釈違いの厄介ファンのようなことを言って申し訳ないと思うが、もう一度言う。
コレジャナイ。
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