最後の決闘裁判のレビュー・感想・評価
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視点が違えば決闘までの経緯も変わる
ひとつの流れの出来事について、複数の人間の視点をそれぞれ描写するという手法はたまに見るが、中世のエピソードを、当時人権などないに等しかった女性の主観も交えてここまでしっかり描き分けるというのはなかなか斬新だった。
同じ出来事の見え方の違いが面白く、また戦闘や決闘のシーンの手に汗握る迫力と、マルグリットの運命に説得力を与えるジョディ・カマーの美しさで、2時間半の長さを感じさせない。
リドリー・スコット監督とB・アフレック&M・デイモンコンビ、この名前への期待を裏切らないエンタメ性と深いテーマを持つ作品。
最初に語られるカルージュの視点からの物語は一番オーソドックスなものだ。世渡り上手な親友の裏切り、その横暴により傷つけられた愛する妻マルグリットのために闘う男の、正義の物語。
その親友ル・グリの視点が次に語られる。彼の主観ではカルージュに対し彼なりに悪意を持たず接していたつもりであることが伺える。知的で美しいマルグリットへの愛が燃え上がる気持ちも分からなくはない。
実はマルグリットと気持ちが通じ合ってたりしたのかと思ったら本人視点でもレイプで、懺悔によって姦淫はなかったことになったので唖然とした。だが、当時の女性の扱いを考えると、ル・グリには神の教えに反いた罪悪感こそあれ、懺悔によって赦されれば問題ないと心から思えたのだろう。彼はただ、マルグリットへの愛に正直でいただけなのだ。
最後はマルグリットの視点。
マルグリットから見れば夫にとって自分は所有物、繁殖牝馬のようなものでしかない。ル・グリも夫の友人以上の存在ではない。姑のニコルは子に恵まれない彼女に踏み込んだ物言いをし、彼女がレイプされたと知るとニコル自身が過去にレイプされたが黙っていたことを告げ、それが美徳であるかのように言う。
実際当時は女性の間でもそのような価値観が当たり前だったのだろう。マルグリットの友人も会話の内容の告げ口だけして彼女を見捨てた。
そんな中でも、マルグリットは自分の尊厳と子供の名誉を捨てなかった。
カルージュはあくまで自分のプライドのために決闘を選び、彼が負けるとマルグリットも残酷な刑に処せられることを裁判の場まで彼女に教えなかった。ここまでないがしろにされながらもマルグリットは耐え、最後には覚悟を決め、夫の決闘を見守った。
この時彼女は、愛情から夫の生還を願うのではなく、自分に対して神が正しい裁きをするならば夫が勝つはずと信じ、自分の運命だけを見つめていたように思える。
リドリー・スコット監督は、75%以上史実に沿ったストーリーにした、と述べている。歴史ものの登場人物が現代の価値観に基づいたかのような言動をする作品が時々あるが、本作ではその類いのフィクションはほとんど目につかなかった。
中世という古い時代の価値観を現代の感覚に忖度せず描くことで、マルグリットが思い切った告発により自己の尊厳を守ったことの凄みが増した。一方、2章までに語られてきた男性目線のヒロイズムやロマンチシズムを、女性の視点で綴る最終章で叩き壊す構成に現代的なセンスを感じた。
史実では事実の外形は分かっても、3人のどの視点が正しかったのか、真実は分からない。そこを逆手にとって最大限に生かした、技ありの作品。
リドスコ御大の「羅生門(藪の中)」
Disney+で鑑賞(字幕)。
原作は未読。
リドスコ御大による「羅生門(藪の中)」。今とは全く違う中世の価値観や考え方、めちゃくちゃエグかったです。
この決闘の顛末については今も議論を呼んでいるようで、人間心理の奥深さを象徴する事件ではないかなと思いました。
真実は人の数だけあると云うことを痛感させられました。
マルグリットが全てを操っている気がしましたが、それも結局は、物事のとある一面に過ぎないと云うことでしょう。
1300年代フランス。聖職者特権、教会上層部にはそれで訴えられた人...
1300年代フランス。聖職者特権、教会上層部にはそれで訴えられた人が多い。って昔から腐ってんのね。こないだ『スポットライト』見たけれど、700年前から同じなのね。
ジャン、ジャック、マルグリット各人の〘真実〙を語った後、決闘裁判に至る。
三者三様、事実はひとつなのに真実は三つ。嘘をついていなければ、だけど。
でも正直最後までマルグリットの表情から気持ちは読み取れなかった。
展開が遅い
主人公が何をしなきゃいけなくなるのか・・ が示されるのが遅すぎる
主人公に愛されるべき要素が見当たらない。・・ この男の どういうところが魅力的で観客が主人公を好きになるのかが描けていない。 そもそも マットデイモン という俳優そのものに魅力がない。 ハリウッドは ここ20年以上 娯楽大作の主役になり得る俳優を一人も輩出していない
敵役のキャラが曖昧・・ 途中まで 結構いいやつみたいだったのが突然何でああなるの? そこんところが 自分でも愛だったのか 肉欲 だったのかよくわからない・・というのが全く描けていない。
エピソードの一つ一つに 面白みがない・・・ 場面場面を面白くしようと頑張った後が見られない あらすじ通り 機械的に ストーリーを書いているだけ。しかも 同じ場面を3回も繰り返して。このストーリーが観客にとって退屈であることに脚本家はもっと敏感であるべきだった。 3人の視点で描くのなら それぞれの視点によって物語の真実とか正義とかが全く違って見える・・ということを描かないと面白くない。
セットと 衣装は素晴らしかったと思う
逆光撮影のところはフレアが入りまくっている。 多分 オールドレンズで撮ったと思うがコーティングがダメになってると思う。役者に払うギャラを少し削ってもらってコーティングのし直しをすると良いだろう。 多分 数百万円もあればできる。日本でならね。
それにしても作品の出来と不釣り合いな高い得点が入っている 巨匠の名前だけで酔ってしまう人がいかに多いかということだ ビジネスの参考にしてほしいな
王の僕に敵意なし
当時、映画館で観ました。
マルグリットを演じたジョディ・カマーの表情の演技がいいですよね。
葛藤しながらも、決意がよく現れていたのではないかと。
マット・デイモンとアダム・ドライバーの決闘シーンも迫力がありました。
金髪のベン・アフレックも、いけ好かない感じが上手く出てましたね。
私は、こういう映画も好きです。
88点
時代のリアル感が伝わった。
俳優陣、セットがすごくてのめりこめた。
見せ方も好きでした。
面白いのが各々【真実】を述べていて
全員自分が嘘偽りない本当の事だと思っているので
少しずつ見え方が変わってしまっている。
僕は「そんな強い言い方をしていない」
私は「そう感じた、そう捉えた」なんて
会話は誰もが経験済みで今回はそれを
考えさせられた。
ずっと願っていたのはどうでもいいから負けないでくれ。と。
レイプはされるは決闘で負けたら夫は死ぬは、焼かれるは、子が可哀想な思いをするはで最悪のバットエンディングは嫌だと。
真に願いました。
奥さんが1番可哀想。そして「頂点を知らないのかもしれない」の時に伏線やーー、フラグやーー嫌やーーと思いました。
実際どうだったのだろうか。
あまり主張のない映画
14世紀のフランスで起きた騎士かルージュの妻マルグリットを騎士の旧友ル・グリがレイプしたという事件が発生。旧友と妻の言い分の違いのために決闘で決着をつけるという話。騎士、妻、旧友の三者からの視点での描写は14世紀フランスの社会事情を知るためには有用でしたが、肝心の事実があったかなかったかについてはほぼ不要で冗長です。個人的感想としては気持ちはどうあれ、妻がレイプされたというのはまぎれもない事実としか思えないです。
この映画、愛情深いなあ、善良だなと思える登場人物がいないのも残念なところで、どの登場人物にも共感できなかったです。解説には「人々はカルージュとル・グリ、どちらが裁かれるべきかをめぐり真っ二つに分かれる」と書いてありましたが、私が見たところでは人々は他人事として見ているにすぎません。正義もへったくれもなく娯楽のように決闘を楽しんでいるだけに見えました。
最後は妻のマルグリットが愛のない暮らしから息子との暮らしになって、その後もまあ長生きしたようで、彼女にとっては良かったかなというところですが、映画全体としては何が伝えたいのか、よくわからないなあと感じました。男はバカで女はしたたかとでも言いたかったのでしょうか。
単純じゃない!見方を変えると壮大な復讐劇に
観てすぐは、映画の言う通りマルグリッドの証言を真実として単純に受け取り、中世が舞台のme too映画のように感じていた。
けれど、一緒に観た家族は、マルグリッドの復讐劇だと言ったのでその角度で見ると全く違うストーリとなり非常に面白いと感じた。
父親から土地を奪った時からル・グリに復讐しようと決めていたとしたら?
全て彼女の長い長い計画通りだったとしたら?
マルグリッドの視点ははっきりと真実と提示されていたが、それは裁判によって決定された真実はこれだと言うだけの話。事実は他の視点にもきっと混ざっている。
本当は全てあの才女の掌の上で行われた出来事だったのかもしれない。全てに勝利し、欲しいものも手に入れた。
映画として色々と考えてみると見方が変わる。そのままマルグリッド視点が真実だと受け取っても成り立つし、もし違ったらと考えても辻褄が合うように出来ている。ちゃんと描写が用意されている。
最後彼女が幸せになったというテロップで終わるのも、全く意味が変わってくる。観た人によってせめて幸せになってよかったと思ったり、マルグリッドは全てを手に入れたなぁと凄みを感じたり。単純じゃなくて面白い。
人は真実を語らない
カルージュとその妻マグリット、そしてル・グリの語る「真実」はどれも微妙に異なっている。裁判のマグリットの証言もおそらく完全な真実ではないだろう。
語らないのではなく語れないでもある。マグリットが語るように、「この子にとって母がいることのほうが真実より大事だ」も一つの事実であるように。
真実より優先されることは山のようにあり、そして封じられたけして聞くことができない真実、歪められて隠される真実も同じく山のように。
決闘シーンは鬼気迫る迫力。でも最初どっちがどっちかわからなくて困惑してしまった。
ラストシーンだけが救い。
ボタンの掛け違い
1人の主観は他者から見るとこうも違うもの。
異なる意見を聞き、感情的にならず、議論を通して最も合理的なオプションを選択する。
相手の立場に立って考える。
視点の違いを反映してか、3回繰り返されるストーリーのディテールが少しづつ異なる。
こういった多視点の映画が増えているのは、社会が少しマシになりつつある証左と考えたい。
「多くの人たちは、見たいと欲する現実しか見ていない」ユリウス・カエサル
選べぬ時代…
女性は結婚相手を。美男だがレイプ魔はもっての外だが、騎士としては優秀だが、どんぶり勘定だったり、聞く耳を持たなかったり、領主としては才能がない夫。妻を子供を生む道具としか考えず、妻一人、幸せにできない男が民の心も魅了できるわけもなく、粗野な男。夫の母親もこれまた最低でこの時代あるあるなのか。嫁姑は未だにそうかも。それぞれの事実が3者の視点で描かれ、所々異なる点が面白い。ジョディ・カマーが完全に他の演者を食っていて、ラスト子供といる映画唯一の幸せそうなシーンが母なる美しさを感じた。旦那がその後早く死んでくれて良かったなあ。再婚なんてもうこりごりだったのだろう。エンディングで実話ベースというのに驚くと共に、決闘裁判で負けたら火炙りということが何とも恐ろしい。他の映画と同様に得てして国王はアホっぽく描かれるが決闘裁判を命じた点は救い。心残りはベン・アフレックのもう少し悪役ぶりが見たかった。
リドリー・スコットの「じわじわラストへもっていく」技が全開だ!
マルグリット(ジョディ・カマー)、カルージュ(マット・デイモン)、ル・グリ(アダム・ドライバー)、三人それぞれの言い分を描いたシーンは、同じようで実は微妙な言い回しや行動(眼差し等)が含まれており、視点を変えるとこんなにも違う解釈になるという面白い描写である。これらの微妙な違いに気づかないと、退屈に感じる観客が出るのかもしれないが、三者三様の性質と感受性の相違が際立ち評価すべきだろう。
撮影は暗めの背景に重厚さが加わり雰囲気を高め、中世の決闘にふさわしい趣きである。
ベン・アフレックが近年にない引き締まった体躯でずる賢さを好演。
真実は1つではない
Disney+にて鑑賞。
私が個人的に好きな黒澤明監督作品『羅生門』に似ている作品として話題になっていたので、かなり期待しての鑑賞です。
結論ですが、非常に楽しめました。
構成は確かに似ていましたが、『羅生門』とは異なる部分も多い作品のように感じました。本作では決闘の当事者である三人の証言によって事件の概要を描き出す内容ですが、実のところ事件の概要については三人の証言がほぼほぼ同じで、細かな描写だけ異なっていました。「映像使いまわしてるのか?」ってくらい似たような描写がありつつも、細かい部分ながら明らかに違う描写も多くて、そこを比較しながら鑑賞するとかなり楽しめると思います。
三部構成のラストの章が始まる前のテロップで「これが真実ですよ」と描写されていましたが、あれも真実かどうかは正直確信がないですね。
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1386年、百年戦争の真っ最中に起こったフランス史上最後の「決闘裁判」を描いた映画。騎士カルージュ(マット・デイモン)の妻マルグリッド(ジョディ・カマー)は、夫や義母が不在の折、自宅に訪ねてきたカルージュの友人であるル・グリ(アダム・ドライバー)から力づくで性的暴行を受けてしまう。マルグリッドは帰宅したカルージュにそのことを打ち明ける。裁判を起こしたものの、ル・グリは暴行を真っ向から否定。暴行の証拠が無い上に女性の立場が弱い時代であったが故、虚偽の申告によりル・グリの名誉を貶めたとして逆に非難を受けることになってしまう。窮地に立たされたカルージュ夫妻は、当時すでに禁止されていた「決闘裁判」によって決着を付けようとル・グリに提案するのだった。
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カルージュ→ル・グリ→マルグリッドの順にそれぞれの視点から事件のあらましと裁判までの流れを描き、最後に決闘シーンによって裁判の決着をつけるというストーリー構成。
本作では「他の章では描かれていないシーン」とか「同じシーンで表情や身振り手振りなどの細かな違い」に注目して鑑賞すると面白いと思います。
「他の章では描かれていないシーン」として分かりやすいのは、ル・グリとマルグリッドの会話などの描写ですね。ル・グリの章では二人はお互い高い教養を持っていたため知的な話題で盛り上がり、次第にル・グリは美しくて知的な彼女に惹かれていきます。しかしながらマルグリッドの章では「二人で会話して盛り上がった」という描写は一切なく、挨拶程度の会話しか交わしていないように描写されています。このことからも、ル・グリの恋愛感情は一方的な感情だったと言うことが見て取れます。
「同じシーンで表情や身振り手振りなどの細かな違い」で分かりやすいのは、ル・グリがマルグリッドの家に入り込み、彼女を追いまわすシーンですね。
ル・グリ視点では、マルグリッドは階段を上がる前に靴を脱いでいますが、マルグリッド視点ではル・グリに追いかけられて靴が脱げているという違いがあります。
そして寝室に追い詰められたマルグリッドが助けを呼ぶために叫ぶシーン。ル・グリ視点ではマルグリッドが叫ぶのは一回だけで、ル・グリも「誰もいないよ」と言わんばかりに耳に澄ませるようなジェスチャーをしますが、マルグリッド視点ではマルグリッドは二度も大声で叫び、ル・グリは「シー!静かに!」というように口に人差し指を当てるジェスチャーをしています。
この描写から、ル・グリの傲慢さが見て取れますね。それぞれの章は「各登場人物の視点の真実」ですので、ル・グリは(自分の頭の中では)余裕綽々でマルグリッドへの蛮行に及んだんでしょうね。
決闘裁判前の、ル・グリを訴える法廷シーンでの描写も、観ていて胸がむかむかする気分ですね。あれは酷かった。でも、現在でも性被害者が裁判や聴取で好奇の目に晒される「セカンドレイプ」がしばしば問題に上がっていますし、劇中の裁判官が言っていた「レイプでは妊娠しないから本当は望んでたんだろ」という発言も、2012年8月に当時アメリカ下院議員で中絶反対派だったトッド・エイキン(Todd・Akin)氏が「本当のレイプなら女性の体の防衛本能が働いて妊娠しない」と発言して物議を醸したこともありますので、劇中の描写を「700年前の古い医学知識に基づいた思想だ」と笑ってられないんですよね。そういう意味でも、700年近く前を描いた作品ながら現代にも通じる部分がある作品でしたね。「人間全然進歩しないな」と、歴史を概観できる作品でした。
本当にクオリティの高い作品でした!!オススメです!!
本当に決闘裁判に挑んだのは…
『グラディエーター』がアカデミー作品賞を受賞してから、すっかり史劇スペクタクルの名匠となったサー・リドリー・スコット。手掛けるのは、『エクソダス:神と王』以来。
それと共に近年は、『ゲティ家の身代金』や間もなく公開される『ハウス・オブ・グッチ』などスキャンダラスな実録ものも多い。
その二つを掛け合わせたような本作。
決闘裁判。
中世紀、証人や証拠が不足している告訴事件を解決する為、原告と被告が行う合法決闘。
勝てば全ての名誉は守られるが、負ければ不名誉と共に、死…。
14世紀のフランスで行われた“最後の決闘裁判”を題材にしたノンフィクション小説が基。
1386年。
遠征から帰還した騎士カルージュの妻マルグリットが、夫の旧友ル・グリに強/姦されたと訴える。が、目撃者や確たる証拠はナシ、ル・グリは無実を主張し、主君ピエール伯も肩入れ。立場が無くなった二人だが、カルージュは決闘に臨む事に…。
…というのが、主な概要。
尺は2時間半。これを一本調子の2時間半掛けてだらだらやってたら、ダルい。正直、序盤はちとダルかった。
しかしこれを、カルージュ、ル・グリ、マルグリットの3人の視点から描く。
言わずと知れた“羅生門”スタイル。
これにより各章ごと微妙に証言やキャラの感情が異なり、実は当初は退屈だった本作だが、引き込まれた。
カルージュの真実。
かつては名騎士だったが、次第にその気性の荒らさが悪い結果を招くように。敗戦も続く。
新たに赴任したピエール伯爵とソリが合わず。
盟友ル・グリは自分の味方と思っていたら…
資金調達、自分のものの土地、さらに狙っていた城内職の事で裏切られる。
妻として迎え入れたマルグリットはいつまで経っても子を身籠らず。
そんな時、妻が盟友から強/姦された事を知らされる。
裏切り、怒り、受けた辱しめと名誉の回復の為、決闘に臨む…。
ル・グリの真実。
騎士道一直線のカルージュと違って、頭の回転が利く。資金調達やピエール伯の財政立て直しに貢献し、気に入られ、側近に。
そもそも彼はカルージュを裏切りつもりは毛頭無く、仲を取り保とうとしていたが、カルージュがさらに反発した事で険悪になる。
一応の仲直りの場。カルージュが我が妻にキスをさせる。美しい盟友の妻にあらぬ感情を抱くル・グリ。
暫く家を空けるカルージュ。その不在の隙に訪ねるル・グリ。力ずくで…。
訴えられるが、無実を主張。ピエール伯も後ろ楯。
が、あちらが国王の許しを得て決闘を挑んでくる…。
“カルージュの真実”から見ると、どん底に落とされた男が己の名誉回復を掛けて。
一見、THE主人公&王道の史劇なのだが…
決闘シーンは最後の見せ場になるのでお預け、妻が強/姦されるシーンは彼は現場に居合わせていないので描かれない。(巧い描き方だと思う)
と言う事で、“ル・グリの真実”。
まるで“カルージュの真実”では裏切り悪者と描かれているが、端からそうではない。出世や権力の欲はあったかもしれないが、本気で友を助けようとしていた。寧ろ、友情に亀裂を入れたのはカルージュの癇癪かもしれない。
そして、問題のシーン。カルージュも真実か否か疑った、本当に強/姦はあったのか。
あった。
だが彼にとっては、マルグリットが嫌がってるのは世間を気にしてのフリで、本当は自分を愛している。
そんな彼女が自分を訴えた事にショックを受ける…。
それぞれの名誉、主張。
しかしいつの世も、男は自分の言いたい事だけを推し通したいだけ。
ここでいよいよ、“マルグリットの真実”。
ここで見方がガラリと変わる…。
妻を想い、愛し、決闘に挑むのも妻の為…と思ったら、見当違い。
元々の粗野な性格、子を授からない事で、結婚生活は早々と冷え切っていた。
カルージュにとって妻は、我が一族を継ぐ子を産み、献身的に仕える。如何にもなこの時代の男性的な考え。
夫が不在の時は家事のみならず家計を支える仕事も任され、自立した考え。従女とは気さくに仲良し。
それらが継母には不快。血を流す戦争は無くならないが、“嫁姑戦争”も無くならない。
強/姦。ル・グリは自分に感情があったなど言っているが、そんなものは一切無く、本気で嫌がり、本気で抵抗した。逃げられもしなかった。
夫は妻を気遣い慰めるどころが、疑い責める。
これが、夫の本当の顔。“カルージュの真実”のヒロイックさなど微塵も無い。
ル・グリも異常な愛欲者。どうして私の愛を受け入れてくれないんだ?…なんてチープ悲恋も無い。
傲慢と強欲な男二人に挟まれたヒロインの苦しみ。
それは続く。
カルージュは決闘嘆願。言うまでもなくそれは、妻の為ではなく、自分の名誉の為。
マルグリットへの尋問。言いたくない事、思い出したくない事まで、根掘り葉掘り聞かれる。
子を授からないのは夫との性交渉に快楽を感じていないから。
現在マルグリットは妊娠中。期間を考えると…、ひょっとして強/姦された時、快楽を感じたのではないか。
もはや公開セクハラに等しい。
ある時ル・グリの容姿を褒めた事を友人が暴露し、苦しい立場に。元々その気があった…?
もし夫が負ければ、マルグリットも裸にされ、火あぶりに…。
カルージュは妻がル・グリの容姿を褒めた事を責めるが(何と器の小さい…)、マルグリットも言い返す。
負ければ自分も火あぶりになる事を隠していた事。でも何より、もし自分たちが死ぬ事になれば、産まれてくる子がたった独り…。
一人の女性として、産まれてくる子の母として、強さを垣間見えた瞬間。
男性派のイメージが強いリドリー・スコット作品だが、女性主人公作品で印象深いのもある。『エイリアン』『テルマ&ルイーズ』『G.I.ジェーン』…。
本作も立派な女性主人公作品。
それを体現したジョディ・カマーの凛とした魅力と誠実な熱演。
マット・デイモン、アダム・ドライヴァー、ベン・アフレックらビッグネーム・キャストが、クセあるキャラを巧演。
マットとベンが出世作『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』以来24年ぶりに共同で脚本を執筆し、話題に。もう一人、女性脚本家ニコール・ホロフセナーも参加。
面白いのは脚本執筆に当たって、カルージュとル・グリについては資料が残されており、男性視点はマットとベンが担当。マルグリットについては資料が残されておらず、女性ならではの視点でホロフセナーが担当。
不思議と“マルグリットの真実”に唸らされた。
勿論、史劇スペクタクルの名匠、リドリー・スコット。
ラストの決闘シーンは手に汗握り、息を飲む迫力と臨場感。
甲冑のリアルさ、剣がぶりかり合う音、ただ“闘う”んじゃなく“命懸け”。
生々しく、恐ろしさも感じた。
マットとアダムの白熱健闘には天晴れ!
史実を基にしているので、一応ネタバレチェックは付けるが、
勝者はカルージュ。名誉は守られた。
一方のル・グリの死体は無惨にも…。
国王や観衆から喝采を浴びるカルージュ。その顔、晴れ晴れと。
夫に続くマルグリット。しかしその表情はどうしても、名誉が守られ、命が助かり、安堵しているとは思えない。
涙を流す。その涙は誰のものか…?
ラストシーン。
これまでの暗い映像ではなく、温かみのある映像。
そこに居るのは、やっと穏やかな生活を手に入れたマルグリットと、幼い息子。
カルージュはあれから数年後に戦死したという。
子供は一体どちらの…?
明確にせず、謎を残したままなのも、余韻が残る。
“最後の決闘裁判”後のマルグリットの真実は、明らかではない。
閉幕は脚色でもあるかもしれない。
しかし…
独身を貫き、女主人として生きたマルグリットを、当時の社会は眉を潜めただろう。陰口を叩いただろう。
女性が生き難く、声を上げられなかった時代。
そんな時代に彼女こそ本当の意味で、決闘を挑んだ。
今を生きる女性たちの遥か先駆者。
そう思いを馳せずにいられない。
冬のお城は寒くて冷たいだろうなぁ
とにかく主人公の女性が凛として美しい
興味ある作品でした
想像とは違い…
まあ。灯りがロウソクの時代ですから
全てが神のみぞ知る時代だったんですね
強い人が……何か納得出来ない気もしますが
どちらにしても命をかけた裁判
決闘裁判を王を初め民衆も笑いながらを
観ている風景がなんとも……ですね
この女性は強い(心が)人です
彼女はふたりの決闘をどんな気持ちで見ていたのか また決着がついて夫の後ろを馬に乗っていた時の顔の表情 最後子どもと戯れていた時少し遠くを見つめる表情が……読めない 映画の中の中世の雰囲気は好きです
少し経って思ったことは
この女性は告白したことで決闘裁判で自分を含め三人の運命が決まってしまう
夫が殺されると思った状況で子供と暮らすことができないと思ったその時涙が溢れる
その後夫が勝つことが出来ての放心状態の表情
子どもと一緒に暮らすことができる喜びの表情と過去となった想いが過る表情
最後30年結婚しないで幸せに暮らした
これは誰にも束縛されずに暮らせたことが幸せなこと。と思った
男性の認知の歪みをよく描いている
ひとつの事実を三者それぞれの視点で描かれていた。強姦の加害者がどのように事実を受け止めて自分に都合よく認識をするかとてもリアルに表現されているし、最後の被害者の視点が「真実」と断り書きされているのもよかった。
視点を変えて真実を描く
ディズニープラスの説明に復讐劇とか書いてるので、てっきりカイロレンが悪者かと思いきや。。。いや、悪者は悪者やけど、、、復讐とは全然違うやんー!!誰やこの説明書いたん😵
大まかに言うと、元親友にレイプされた妻のために決闘裁判を申し込んで勝つ話なので復讐劇っちゃ復讐劇なんだけど、、、その中に男の名誉とか、愛とか、女性の地位の低さとかの時代背景も入ってくるから、そんな単純な話じゃない。
さらに決闘裁判の原告、被告、そして被害者である原告の妻の視点から同じシーンを何度も描くから下手したらちょっと退屈になりそうやけど、そうならないのがさすがリドリースコット✨
うまく説明できてないけど、面白かったです😊
Are you telling me the truth! 神様へ近づく第一歩
脚本マット・デイモンとベン・アフレック、監督リドリー・スコット。これだけで絶対面白いヤツやん!っと思ってほとんど内容を知らないまま映画館に足を運びました。ただ土曜日なのに劇場にお客さんは私を含め3人・・・くぅぅ、この地方に映画好きはおらんのか⁉️と思ったりもしたのですが、映画自体は期待通り面白かったです✨
前情報をあまり入れてなかったので、最初から三者の視点で話が進んでいくのもビックリでした。リドリー・スコット監督御年83歳。それだけの年齢になっても攻めてますね。でも、これは脚本が上手かったのかも。マット・デイモンとベン・アフレックもグッド・ウィルハンティングでは若者の青春劇を見事に描いてましたが、本作を観ると大人になったなぁっという感じがします。
で、決闘裁判なのですが物語の時代が1300年代後半だったのは意外でした。フランスは1981年までギロチン使ってたみたいなので(ギロチン止めたのより最初のスターウォーズ公開の方が古いという事実❗)、もっと最近まで決闘裁判とかやってたのかと思ってました。でもリドリー・スコット監督ってこういう昔の街並みを撮るの抜群に上手いですよね。あの時代の街並み作るのってメチャクチャ大変だったと思います。あのマルグリットの三つ編みをグルグル巻いて後ろで束ねてる髪型は可愛かったですよね✨当時流行ったりしていたんですかね?朝の準備ではメッチャ大変そうですけど、昔の人は頑張ってたんでしょうね。
たとえ史実であってもレイプ野郎が生き残ったらモヤモヤするので最期の決着はスッキリしました。史実を知らなかったので決闘はかなりドキドキしながら観てました。でも、ちょっと微妙な所もあるんですけどね。マルグリットがあの結果で幸せだったかどうか。
最初にジャック・ル・グリに会ってキスをした時に3人の回想でキスの長さが微妙に違うんですよね。ジャン・ド・カルージュの回想では短く、ジャックとマルグリットの回想では少し濃厚。で、その回想を観た時に実はマルグリットも少しジャックに気があるのかと思ったんですよ。だからと言ってレイプしていいはずもないんですけど。でも、ジャンとの関係って良くなかったじゃないですか?決闘裁判になった時にはマルグリットは密かにどっちが死んでもいいって思ってたのではないでしょうか?自分も燃やされると知るまでは。思惑がスゴく三者三様です。
まぁ、ジャンもジャックもロクな男ではなかったので決闘を観ててどっちが死んでもいいよって気分になりつつ、ジャンが死んだらマルグリットも道連れになるから、やっぱりジャン頑張れって気持ちで観てました。
ぶっちゃげリドリー・スコット監督ってもういつ最新作が遺作になってもおかしくない年齢じゃないですか?もちろん個人的な心情としてはまだまだいっぱい面白い作品をつくって欲しいのですが、年齢的に撮れる映画の本数が限られてきてるのは事実だと思うんですよ。そこで勝敗は神様が決めるという決闘裁判の映画を撮る。もちろん決闘裁判に神様が入る余地はなく、現代から見れば荒唐無稽なのですが・・・でも、もしそこにほんの少しでも神様の意思が介入しているとしたら?そしてリドリー監督が本作を撮る事を通して、少しでも神様の意思を垣間見ようとしているとしたら?
・・・なんて考えると、ちょっと本作の見え方も変わってくるのかもしれませんね。
なかなかの見応え
尺が長いが、そこまで長く感じさせず。
3者の視点から同じ出来事までを描くのはとても面白かった。モテるアダムドライバーは、あの読書やラテン語のくだりで、マットデイモンの奥さんともう相思相愛だと思っちゃったんですね。ほんとにそういう勘違いってありそうだわ。色目使われた、とかさ。
マルグリッド役の女優さんは強くて美しい。
ただなによりマット・デイモンが本当にキモい旦那で、無理すぎました。いや、アダムがいいってわけじゃないんだけど、生理的にきつい。演技がうまいんですね。
ベン・アフレックの金髪は染めた感があったけど、久しぶりにみれてうれしかったです。クズだけどこんなかじゃいちばんましじゃないか?
女性にこそ見てほしい作品
凌辱や殺し合い、重いテーマで中世が舞台ですが、今の時代とマッチしています。
マルグリット自身非力で凌辱されてしまうのですが、作中に登場する誰よりも強い人物で、女性が声を上げることのできなかった時代に立ち上がった芯のある強く美しい女性が描かれています。
途中決闘で負ければ自身も火炙りで処刑される事を知らされるマルグリット、夫に息子の命を救う為なら迷わず目をつぶる事もできたと告げる辺りも見栄や私利だけに動く夫とは違い彼女の強さを感じました。
決闘後は民衆から惜しみない賞賛が送られていますが、彼女にとってそんなことはどうでも良いことで、(息子の)命が助かったことと自分の中の正義が初めて証明されたことの安堵だけだったのではと思います。
3者それぞれの真実(主観)が描かれていて、決闘シーンは息詰まる迫力でした。
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