最後の決闘裁判のレビュー・感想・評価
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それぞれの視点で描かれているところが良い
物語が章ごとに登場人物の視点で描かれていて引き込まれた。
2人のクズ男に巻き込まれたかわいそうな人妻の物語とも思った。
あまりの緊張感に目を覆った
GOTが好きなのもあり似たような雰囲気だし、リドリースコットだし、俳優も良いし、絶対観る!と意気込んで映画館に行きましたが、後半マッドデイモンとアダムドライバーが殺し合ってるところで完全に目を覆ってました。
それだけマルグリッドに感情移入してしまったのかなと...
史実はどうだとか、男性目線、女性目線で色んな解釈ができる作品ですが、いろんな視点の意見が飛び交うから面白いんだなと思わせてくれます。
マルグリッド...何を思ってるの...??と
裏表があるようで無いような絶妙な演技。笑
魅力的でした。
長いと思わなかった。
この時代の人立達は生き残るためにうまく立ち回るしかないよね...
GOTじゃもはやコミカルに決闘裁判してましたが、ここまでじっくり背景語られると殺し合いも手に汗握りますね
古典世界から突き抜けてくる女性の闘い
とても現代的な映画だった。と言っても描かれてるのは1800年代だし、描かれる手法は羅生門だし、至って古典的。だけど、描かれる事件は、まんま最近もあったよつな証拠の示しようのないレイプ事件。3人の視点から描かれるレイプに至る道筋。そして本人の視点があるのだからそれが真実になる。なら真実だけ描けばいいのにその亭主と亭主のライバルでありレイパーの視点が入る。亭主は見栄と建前の権化。レイパーは奔放の権化。その両方の犠牲になる女性。結果女性は義理の母もレイプにあったが黙ってた、という生き方を無視し、レイプを公表し、決闘へ亭主を促す。この決闘、亭主が負けたら自らもレイプどこではないリンチ以上の死が待っているというもの。決闘がはじまっても終わっても一言も語らない女。その視線のみ。盛り上がる群衆と名誉を得た亭主。しかし女のみ無言。勝者も敗者もない、ただ子供との未来があった。それがこの女性のレジスタンスだった、と感じた。考えてみれば、出てくる男出てくる男、みんな時代が産んだろくでなしである。その中でマルグリットだけが現代にも通じる女性に見えた。
壮大だがリアル
映像の美しさ、脚本の完成度、演技の見事さ、いずれにおいても高いクオリティを実現していると感じました。14世紀フランスの風景なども再現度が高く、見ごたえがあります。
一つの事件を多視点で語るという手法については、通常それぞれの視点で事実が全く異なるという見せ方にしたほうが、何が真実なのか分からなくなるという意味で物語に複雑さやリアリティを与えると思います。
この作品は「何が真実」を明確に提示しているため、鑑賞者に考える余地を与えていません。むしろヒロインの境遇を真実に据えることで、ミソジニーについて問題提起しているように見えます。
ただし、三視点の描写にそれぞれ微妙なズレを見せることで、人間の心理を巧み描いているという面白さがあると思います。
伝記映画すべてに言えることですが、これを本当の話だと思い込んで鑑賞するようなバイアスを持った映画の本質を見失うような見方だけは避けるべきでしょう。
決闘裁判も含め、当時の空気感を堪能
一つの事件を三者三様の視点で描き、最後の決闘につなげる。3つの真実、当時の女性観など考えさせられることもありつつ、なにより決闘の様子は迫力満点で、153分と少し長尺ですが、飽きさせない構成になっているなと感じました。
百年戦争中の14世紀フランス、当時の空気感が伝わる衣装やセットも見応えがあります。
この決闘裁判という裁判方式、勝った方が正義というのはある意味潔い。現代社会ではあり得ませんが…。
嫌味な八の字がキラリと光る
リドリー・スコットの采配に、マット&ベンの親友映画バカコンビが化学反応を仕掛けた、一見地味なのにトルクの強さで引っ張られる、お見事な作品でした。
「グラディエーター」「」に続く欧州時代劇。其々に角度が違う感じは流石としか言いようがありません。まぁ、好きだから甘々なのはありますが、役者陣の見事な演技も相まって、極上のドラマに仕上がっております。
皆が皆、素晴らしかったのだけれども、アゴ控え目で八の字眉毛フルスロットルだったベン・アフレックが一番好きだったな。あの、嫌な感じは観てて思わず笑っちゃった。お酒が手放せなくて、生きてるのに乾いてる感じは、少しリアルとシンクロ?なんて、思ったりしたりして(苦笑)。
尊大なマットも強欲なアダムもナイス。てか、ろくな男が居ない映画だったな。
最後まで緊張感が続き、長さを感じさせない
レビューの評価の高さに釣られて鑑賞、期待どおりの良作だった。自分が観た回は満席だったが、すでに上映を打ち切る映画館が続々のようで実にもったいない。特に歴史の知識が無くても十分楽しめると思うので興味を持った方は早めに映画館に行くことをお勧めします。
中世のフランス。騎士ジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)と美しい妻のマルグリット・ド・カルージュ(ジョディ・カマー)、ジャンの旧友ジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)の3人を軸に物語が展開、3人それぞれの視点から同じシーン(だが微妙に異なる)が繰り返され、段々と細かい事実が明らかになっていき、事件の全貌が分かるという構成。
ジャンとジャックは百年戦争を共に戦い、親友だったが、ピエール伯(ベン・アフレック)に教養や仕事(税金の取立て等)の腕を見込まれ、何かと引き立てられるようになったジャックと、武骨な性格ゆえ"ゴマすり"などできない真面目なジャンは次第に疎遠に。さらにジャンの父の死後の不公平な処遇によって完全に決別。数年が経ちジャンがマルグリットと結婚後、ジャックと再会し和解するが、マルグリットの美貌と教養にすっかり魅了されたジャックは恋に落ちてしまう。ジャンの留守中、一方的な恋心を押さえきれなくなったジャックはマルグリットを強姦してしまう。ジャックは口止めしたが、マルグリットは事件を全て夫に話し、妻を信じるジャンは無実を主張するジャックを訴え決闘裁判(フランス国王が正式に認めた、神による絶対的な裁き)に持ち込む。勝者は正義と栄光を手に入れ、敗者は決闘で命拾いしても罪人として死罪になる。もし夫が負ければマルグリットも偽証の罪で火あぶりの刑を受けるという、正に生死を賭けた過酷な裁判。
本作のパンフレットには"裁かれるべきは誰なのか"とあるが、やはり旧友の妻を強姦しておいて無実を主張するジャック以外に考えられないと思う。この手の犯罪者の常套句"合意の上だった"とでも言いたいのだろうが、夫が留守中の人妻の家を訪れ、自分は隠れて部下を使ってドアを開けさせ無理に室内に押し入っただけでも既に犯罪だろう。マルグリットに何ら落ち度は無く、ただ教養があり美しいというだけで性犯罪の被害者となってしまい気の毒としか言いようがない。
気になったのはマルグリットの義母の行動とジャックの部下の意味あり気な薄笑い。義母は何故使用人達全員を連れて外出したのか? 何故その日にマルグリットが1人になることをジャックは知っていたのか? 日頃からマルグリットと折り合いが悪かった義母はわざとマルグリットを1人残して外出したのではないだろうか?その情報をジャックの部下に知らせ、部下はジャックを焚き付けて襲わせたように感じた。羅生門のオマージュとも言われているようだが、ジャックの部下の狡猾さはシェイクスピアの"オセロー"のイアーゴウを想起させる。マルグリットの友人も何かを隠しているように見え、カルージュ夫妻の周囲の人間も事件に複雑に絡んでいたように思える。
2時間超と長いが、全く中だるみすることもなく、最後まで緊張感を保ち見応えある作品だった。上映打ち切りの映画館が多いのが残念だ。
神は、真実を語る者を守る。
映画は、「夫の友人にレイプされた妻」の訴えを、『羅生門』的アプローチで展開するストーリーと聞いていたので興味があった。三者それぞれの主観は価値観を反映するように異なり、どれも自分を正当化している。ただ、本家『羅生門』のように主張自体がまるで食い違うのかと思っていたが、基本的には"出来事"は三人とも同じであった。つまり、sex行為はあった。それが、レイプであることもニュアンスは違えども一緒だった。だから僕は、おや?ル・グリの主張は「してない」ではないのか、と思ったのだ。でもこれは中世ヨーロッパ、女性が政治的にも夫婦間でも道具として扱われていた時代のこと。男は、女の意志など関係なく単なる性欲の対象でしかなく、それを女性たちは諦めながらも受け入れていた時代だったのだ。それは、カルージュの母の蔑むような言葉からもわかる。まるで言葉の拷問のような裁判の尋問でもわかる。「快楽の頂点に達しないと受胎できない」という認識の時代だもの。
そしてカルージュの訴訟は、妻の尊厳のためなどではなく、あくまで自分の名誉のため。名誉のためなら命だって賭ける。そんな男たちの決闘の場は、他人にとっては見世物。王様にいたっては、滅多にない興行を楽しみにしてるが如き喜々たる笑みで眺めている。現代なら悪趣味の極みだが、これが当時はごく当たり前の感覚だったのだろうなあ。
勝者には、それまでの評価など忘れたかのような手のひら返しに惜しみない賛辞を送られ、敗者は、残酷な扱いを強いられる。現代社会なんて、動物を傷つけるだけでやいのやいの外野が騒ぐっていうのに。中世ヨーロッパは、怖い。
親友のなれの果て
98年のグッドウィルハンティング以来のマット・デイモン、ベン・アフレック親友コンビの脚本となれば見ないという選択肢はない。
ましてや私は『偶然の恋人』を偶然見て以来のベン・アフレックファン。
殆ど前知識なく喜び勇んで劇場へ出かけて行きました。
ベンの役柄はこれまでのキャリアに無いほどやな奴だったけど、中世のフランスが舞台の史実に基づく物語は見応えたっぷり。
チャプター1はジャンの視点…
と、いう事は他の視点からも展開するんだな、と冒頭からワクワクさせられる。
無骨で不器用で戦う事で王に忠誠を尽くすが報われない、生き方が下手な男には世にも美しい妻がいた。
かたや語学や数学に長け、領主の寵愛を受けて出世していく世渡り上手なモテ男。
かつては戦友で親友だった二人の男が一人の女性を巡って決闘で命を懸けて戦う事になる。
女性が名誉を守る為に声を上げる事は許されなかった時代。
彼女もまた命を懸けて裁判に挑む。
審判は神が下すのだ。
人間が裁くことが出来ないからと、勝った方には地位と名誉を。負けた方は殺されてから丸裸にされて逆さ吊りにされる。
こんな残酷な審判を委ねられる神サマも迷惑だよなー。
ただこの話、真実の愛のために戦ったのなら美しい純愛の物語だったのだけど…
決闘シーンは大迫力で見応え十分。
競技場に響き渡る「殺せ!殺せ!」のシュプレヒコールに群衆心理の恐怖を感じながら、
マットの出演作は数々見てきたけれど、こんなに
「マット、頑張れ!」と心の中で叫んだ事は無かった。
作品の面白さは流石のリドリー・スコットだし、
脚本も素晴らしかった。
再びベンとマットの親友コンビにオスカーを取って欲しい。
御年83歳のリドリー・スコットの業。参りました
個人評価:4.7
エンターテイメントと作品性を一つの作品に共存させられる稀有な監督リドリー・スコット。スピルバーグですら、片方ずつしかなし得ない凄技。
本作の作品性の高さと、鬼気迫るアクションの迫力。まさに魂が震えた。
プライド、尊厳、信念、そして生。何を優先させるべきなのか。訴えかけられる。
馬、土地、妻。当時の男どもの所有物としての価値観が、法律も含め痛々しく物語に絡み付く。
また3つの視点による、それぞれの主観の構成。これが素晴らしい。3人がどのシーンを重要視してるのか、また重要と思わなかったのか。3度同じ真実を見せられる事で、より細部が浮き彫りになる。
そして最後の決闘への盛り上がりの積み重ね。見る側も、あたかも関係者かの様に固唾を飲んで決闘を見守る。
御年83歳のリドリー・スコットの業。参りました。
今と何も変わらない
テーマを絞る事は時間制限のある映画と相性がいい
よく出来た作品は観客を飽きさせないし時間が短く感じるものだ
ちょうどテーマを絞ったという点では同じ”CUBE 一度入ったら、最後”という駄作を観たばかりなので監督の上手い演出に心を奪われた
CUBEの監督が誰か知らないが、まさに月とスッポン
リドリー・スコットなんだから当たり前ですけどね
CUBEは人物の背景なんか入れながら、回収もせず中途半端に終わらせといて、テーマを絞っているからいらないとでもいうのかな
背景の無かった人物がいわくありってすぐわかるしね
インディーズ作品を大手がリメイクしてあれでは失態としかいえない
この作品は、決闘というテーマに絞りながら、とても広がりのある物語になっている
中世ヨーロッパの騎士の戦いを観せられるだけで昂る
日本の時代劇とはまた違ってワクワクしますね
切れ味の日本刀とは違う、骨まで砕く剣や斧
隙間無く身体を覆うチェーンメイル
馬とランスを使った決闘は子供の頃の憧れでした
一撃で弱い方が落馬するシーンをマンガでもよく見たけど、実際はグダグダの突きあいになるんですね
リアリティがありました
かと思えば
今も変わらぬ処世術
媚びへつらうのが苦手な人間が出世できないのは社会人なら身をもって知っているはず
まあ、これも才能の一つ
実力です
そして
男性主導社会での女性の憤りと反逆
ラストシーンの高揚と安堵と疎外感
女性が権利を主張する闘いを始めるのはまだまだ先の異世界は観客をゾワゾワさせるのに十分です
レイプ裁判は被害者が貶(おとし)められる典型
弁護する側はどんな小さな事もほじくり返して有利に事を運ぼうとする
デートレイプも含め被害者が訴えやすい制度が必要なのに、未だに進歩が無いのは怒りしか無い
今回だって良く訴えが受け入れられたものだ
家に入れた時点で合意とみなされる場合は今だってよくあるんだから
男の思い込みも相手の気持ちを考えないのは今も変わらない
そして主題である決闘
勝者が正義なんてショッキングなようですが
これは強者が正義って事です
ある意味、競争社会では当たり前
原点なだけじゃないでしょうか
妻を殺害した疑いをかけられた有名スポーツ選手は契約料の高額な弁護士をたくさん雇って無罪になった
金という力がものを言ったんですね
最近では権力という力があれば
法も警察も手出しできない事を証明した人が日本にもいましたね
今も何も変わっていない
実際の殺し合いが残酷に見えるだけ
牛や鶏を殺すのは残酷だけれど、肉にしてしまえばなんともないんですよ
な
俳優も豪華だ
エミリー・ブラントン似のジョディ・カマーは初見ですが、意志の強そうな美人です
華があります
これから注目ですね
言わずもがなのマット・デイモンとベン・アフレックにスターウォーズのアダム・ドライバー
でも対決する二人に身長差がありすぎる
マット・デイモンってこんな小男だったっけ?と調べたら178cmもある
アダム・ドライバーが大きいんだ
189cm
ちなみにハリーポッター君は165cmだから
上半身だけのショットなら画面から消えてしまうだろうね
と、つまらん話題も含め刺激的な映画でした
ネタバレ
ちなみに、子供は白髪とみせかけて下に黒髪がはやしてどんでん返しを狙っていますマダラだからわからないというのは生物学てきにはありえない。黒髪があるんだから・・・
3人の視点を通して
事の真相を観客に考えさせる作りに脱帽です。
これぞ映画です。
中世のヨーロッパで「実際に起きた」とされている出来事ですが、言ってみれば昔話ではあります。
一方で描かれているテーマは非常に今日的であります。
それぞれの立場•視点を通して、一連の出来事を3回反復して観せられるわけですが、当事者それぞれ微妙かつ決定的に見方が違うわけです。
男性社会の構造的問題の煽りをモロに受けることとなる被害者の詰んだ状況、その切実さが、この構成により見事に浮き上がっています。
クライマックスの壮絶な決闘を終えて、一応の決着がつきますが観客としては釈然としないわけです。
そこで馬上で見せる「3人目」の表情が素晴らしい。
けしてハッピーエンドではない。
巨匠と脚本と名優達のアンサンブル、そして中世フランスのどんよりとした空気感や匂いまで伝わってくるかのような美術も素晴らしいです。
ただ宣伝に苦慮したのか、予告やポスター等を見てもあまり映画館に足を運びたくなるような期待感は伝わってこなかった。
今年公開の映画のなかでも上位レベルの作品であるのに。
決闘裁判は本当にあったんだ
HBOの「ゲーム オブ スローンズ 」で決闘裁判なるものを知ったが、架空のものと思っていた。
しかし、本当に存在し、しかも、この映画が事実を基にしていると知り二度ビックリ。
ナイーブな題材のため、出来上がりによっては叩かれそうだが、さすが巨匠リドリースコット見事でした。もう一回見直してもよい。
良い映画
中世ヨーロッパの時代の、何とも野蛮な支配者たちとその妻の物語。
映画は、同じ時系列のストーリーが、3人の主人公のそれぞれの視点で、三者三様に語られる全3部構成の物語となっています。
それぞれの物語は、"真実"という言葉で言い換えられていますが、それはつまり、3人それぞれの"主観=視点"で描かれたストーリーでもあるわけです。そして、場合によっては、都合の良いストーリーでもあるわけです。
その分かりやすい場面は、マット・デイモン演じる騎士の妻マルグリットがレイプされる場面、またはレイプされた後の顛末を描いた場面でしょうね。
騎士道なんて言うとかっこいいですが、そんな見栄や虚勢に振り回されて人格や尊厳を踏み躙られ、多くの命が無駄となった愚かな時代があった…あるいは、今も同じだと言うことをこの作品は言いたいのかも知れませんね。
タイトルには似合わない話
実話に基づくということで
リドリースコットらしい微妙に難しい話かと思ってたが違ってた。
むちゃくちゃシンプルなストーリー。
そんな事で決闘裁判やるなんて
ヨーロッパらしいというか、その時代いろんな証拠を示す技術もないからこそそうするしかないというか、
そうは言っても超真面目に決闘で決めるという中学生のような発想(笑)
けど、やっぱりリドリースコットが描く闘いのシーンは昔から観甲斐があり好き。
それがあったからもったようなものかな。
不要な男らしさと女性らしさ
前評判通りの凄い作品。
史実に基づき描き出された物語の中に愛はなく、あるのは自分のことしか考えず、プライドを最優先し、時代に迎合するものばかり。青みを帯びて終始暗いトーンも相まって、とても冷たくよりどころの無さを感じます。
三者それぞれの視点から同じ出来事を映す三つのパートで構成されていますが、描写には少しずつ違いがあり、それぞれの思い込みや妄想、自己肯定感が反映され、とても繊細に描き分けられているのが素晴らしい。
被害者であるマルグリッドのパートが真実に最も近いものであるはずなのに、結局のところ真実がどうだったかではなく、それぞれの守りたいもの・譲れないものをかけた決闘裁判になっていて、時代の異常さや抗えなさ、女性の立場を見せつけられた印象です。
人間関係や時代背景、心理描写はもちろん、クライマックスの決闘シーンは緊迫感溢れる迫力のアクションでしたし、一つ一つの美術や衣装も素晴らしく、全編通してとにかく見応えのある凄い作品でした。
みんな平等に悪い
「誰が一番悪いのか」と言えばみんな平等に悪いです。全員完全な悪ではないんです。善も悪も持ち合わせているけど、つい自分に都合よく考えてしまう。ごく普通の人々ばかりです。そこに他人の悪意や煽りも加わり、こじれまくった末の決闘裁判だったんだなと思いました。自分は現実の世界を生きているけど、物事は常に俯瞰して見るようにしようと思いました。
とは言え嫌悪感という点ではル・グリがピカイチです。日本にもこういう犯罪者がいましたよ。そいつは乱暴の後で被害者に「連絡して」と名刺を渡して逮捕されました。相手も喜んでいるはずと思っていたわけですよね。ル・グリの場合はさらに酷くて、「人妻との恋に懊悩する自分」に陶酔しているようにも感じました。こういう男は女性からするとものすごく怖いし気持ち悪いです。あんな行為で相手が愛を感じると思うのか?どうしてそこまで都合よく思い込めるのか?何が悪いのかもわかってない気がします。
それからマルグリットへのセカンドレイプや女性達からの無理解が怒りを通り越して悲しいです。「あなたも感じてたでしょ?」「ハンサムだと褒めてたそうですね。まんざらでもなかったでしょ?」とか無理です。私だったら戦えず泣き寝入りしています。彼女はあの時代のこの人々の中で本当によく戦いました。
他には中世の騎士階級の生活が垣間見えて興味深いです。普段着はすごく地味。というか着古しでぼろぼろに見えます。戦いのない時は使用人と肩を並べて働いてたり金策に悩んだり。召使いも馬車で一度に運べるくらいしかおらず、優雅な生活とは程遠い。中小農業経営者なんですね。
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