「玉をとるか、名誉をとるか」最後の決闘裁判 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
玉をとるか、名誉をとるか
それぞれの視点で描く三者三様の物語。見事なまでに性格やレイプ事件までの経緯が丁寧に描かれていて、同じストーリーのはずなのにミステリー要素とサスペンス部分が見事に使い分けられていました。
まずは実直な騎士であるジャン・ド・カルージュ。王のために戦う純粋な騎士ではあるが、長官である父親の跡継ぎや妻マルグリットの持参金も目当てだったという男。地代を払う金もないが、戦績で王に認められようとする忠誠心豊か。直属上司ともいえる奔放なピエール伯爵(ベン・アフレック)に対しては快く思ってないし、伯爵とズブズブになっていった元親友ジャックとも疎遠になっていく。
ジャック・ル・グリは神に仕える道に入ろうと思っていたがやがて従騎士(squire,esquire)へとなり、税金集めに精を出しピエールとも仲良くなる。名誉よりも実利主義を選び、やがて女たらしで腐敗した権力者の道に進みそうな雰囲気の男前。
真実は闇の中というほどでもなく、マルグリット視点の第3章では“真実”という言葉が流されるので、むしろ彼女が男尊女卑の中世世界で勇気を出して法廷に訴えるといったことがメインなのだろう。MeToo運動や詩織さん事件といった性的被害を告発することを鑑みれば、女性差別や女性人権問題が高まる中にあって、非常にタイムリーな作品だとも言えるのだ。
凶作や疫病によって苦しめられていた平民たち。そして金のない騎士といった貴族社会の不条理をも描き、そしてラストの決闘シーンは圧巻!『ロック・ユー』みたいに馬上の槍だけではなく、地に降りてからも剣や斧でまさしく死闘を続ける。こんな裁判があっていいのか?!神のご加護を・・・
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