劇場公開日 2021年10月15日

「【「史上初の女性の訴え」】」最後の決闘裁判 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【「史上初の女性の訴え」】

2021年10月17日
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レイプを取り上げたら、中世ヨーロッパも現代の日本もさほど変わらないなと思ったりする。

これは、最後の決闘ということになっているが、実は、「史上初の女性の訴え」でもある。

14世紀はヨーロッパにペストが蔓延し、人口の3分の一から3分のニが命を落としたと言われており、多くの農奴の死で労働力不足が顕在化し、穀物の収量が極端に落ちたことが記録されている。

また、100年戦争は14世紀の終盤がやっと折り返し地点で、ペストと戦争で多くのヨーロッパの国が疲弊する一方、イタリアではルネサンスが始まろうとしていた。今僕たちが考えているより当時のヨーロッパの国境は曖昧で、争いにより更に不安定化していて、権威を求めた国がローマ・カトリック教皇との結びつきを一層求めるようになっていく。

こうしたなか、女性の人権など認められる状況にはなく、それは現代になるまで大きな変化はなかった。アメリカでさえ、女性解放運動は、1960年代の話だ。

戦いにはめっぽう強いが愚鈍な夫ジャン。妻マルグリットの持参金が頼りだったりする。

魅力的で読み書きもでき、実務も優れて、男の能力や見識を見抜いてしまうマルグリット。いくつかの会話で明らかなように、女性には必要ないとされていた教養を身につけていたことが判る。

策略家で実務に優れるが、狡猾で自制が効かない色好みのライバル・ジャック。

同じく色好みで自制が効かず、良いところなどない無能な領主ピエール。

これだけで何かが起こりそうな予感だが、中世ヨーロッパでは前述の通り、女性の権利など認められてはおらず、法や権威の後ろ盾もなかった。

ただ、僕たちの国の伊藤詩織さんのケースのほか、女性がレイプ被害を訴えようとするムーブメントの#MeTooでも、子供に性的虐待をした事件でも、明確な抵抗意思を示したのかが争点になって、うやむやになってしまうことが多いことを考えると、現代もマルグリットの時代もじつは大差ないなと思ったりする。

途方に暮れそうになると思うが、女性も、右寄りのパターナリズムの連中からフェミと誹謗されようと、差別を許さない男性も、声を上げ続けなくてはならないのだ。

マルグリットのように一時的で終わるのではなく、継続して声を上げ続けなくてはならないのだ。

ワンコ