「百年戦争の前期に関する知識必須かも(説明入れてます/10/17追記)」最後の決闘裁判 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
百年戦争の前期に関する知識必須かも(説明入れてます/10/17追記)
今年140本目(合計204本目)。
百年戦争の間に行われた実際の決闘裁判をテーマにした実話もの。
この「百年戦争の間に」というのがポイントで、イギリスとフランスで戦争しているのに何しているの?というところですが、百年戦争は序盤に大きな戦いがあったほかは、散発的な戦闘があったあと、15世紀に入って1415年にアザンクールの戦い、ジャンヌダルクのオルレアン城攻防戦などがある以外は、実はどちら(イギリス・フランス)も戦争どころではなく、「だらだら」やっていたところはありました。どちらも農民反乱等には対応しなきゃいけなかったし、イギリスは同時にスコットランドの独立戦争も抱えていたからです。
ここでいう「裁判」というのは、今でいう裁判とはおよそ違うし、どちらが正しい、正しくないということを証拠を持って合わせるというのとも違います。「神は正しい答えを知っている」という宗教的思想があった中で、「それなら決闘で」となったのであり、今でいう三権分立のような中で生まれた「司法」からできた「裁判所」というのとはおよそ持って違います。
また、この事件そのものも現在でも未解決だとはされ、決闘の結果自体はこの映画の通り描かれていますが(この部分はごまかしようがない)、実際の事件、そちらですね。そちらについては、実際どうだったのか、もう証拠がなさ過ぎて全く不明になってしまっています。今でもフランスでは自国史の未解決問題として新説が唱えられることもあります。
さらに、映画内でも触れられていたように、この当時、女性が(一応、形式的であるとはいっても)「裁判所で」争うということは当時は避けられていました。映画内でも描かれている通りで、今の男女同権の考え方すらそもそも存在しないという状況です。そのため、事実は別として、この実際の決闘(1386年)と、同じく女性が活躍するジャンヌ・ダルクが生まれ/オルレアン攻防戦で活躍したのは近接しており(1412年/1428~29)、「女性が声をあげて歴史を動かした」ことは、直接の関係性はありませんが、何だか不思議な気が気がします。
なお、内容的にかなり、全般にわたって百年戦争、それも序盤のほうの知識を知らないとまるでわからない点があるので、復習とこれから見に行く方へ向けて最低限のメモです。
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▼ 百年戦争 1339~1453 ※ 考え方により、1337~という取り方もある。
(・ 1330年 (この映画の主人公といえる2人が産まれる))
・ 1346年 クレシーの戦い
★ 1356年 ポワティエの戦い ←字幕に出るのはこっち
→ イギリスが圧倒的勝利に終わるが、イギリスも自国の事情があったこと(スコットランド問題)から、これ以降、戦いは散発的なものが多くなる
1375年 期間限定の2年間の休戦協定が結ばれる。しかし、イギリス・フランスも自国の疲弊が目に見えていたので、休戦協定はずるずる伸ばされる
(今回の映画の内容はこの付近。1386年)
(★本来、百年戦争外) 1396年 ニコポリスの戦い → 映画内最後で「10年後の十字軍で~」というのはこれを指します(今のブルガリアが戦場)。「ニコポリス十字軍」と呼ばれることもあるように、いわゆる十字軍以外にも「キリスト教を広める」という意味での戦い(主に、イスラム教国との戦いが多かった)は多く行われており、この戦闘ではフランス・イギリス・スコットランドという、そもそも「今、百年戦争やってるんじゃないの?」という国も、いっしょに参加しています。そのくらい、当時はキリスト教文化を広めることが何よりも重要視されたのです。
(参考/その後の百年戦争(主なもの))
・ 1415年 アザンクールの戦い → イギリスが勝利
・ 1428~1429 オルレアン攻防戦 → ジャンヌダルクの大活躍
・ 1453年 カスティヨンの戦い → フランスが勝利し、イギリスはフランスに一部のみを残して全て撤退。事実上の終結。
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…といったこと(特に、「ポワティエの戦い」は知っていないとどうにもきつい…)が前提にあります。
採点に関しては…。下記のようにしました。
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(減点0.2) この映画は、歴史ものと観ることはできますが、普通に読めば、ある事件に対して声をあげられる権利を持っている女性が「正しく」上げたこと、それだけです。しかし、当時はそれがタブーのようになっていたので、このような大きな出来事になってしまったのです。とはいえ、当時はともかく現在の人権感覚でそれは通用しないので、「女性が声をあげていくきっかけとなったひとつのできごと」という観点でとらえたほうが良いのかなと思います(普通はその解釈)。
ただ、上記で私が「まとめ」を書いているように、前提となる知識を知らないと、理解にかなりの妨げ・理解の差が生じてしまい(高校世界史の百年戦争の知識程度は常識で、さらに「ポワティエの戦い」を知らないと字幕が???になるなど)、せっかくの作品がちょっと…というところです(さすがに高校世界史でもこんなにはやらない)。
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(★追記)あ、あの…すごく「いいね」がついていてびっくりしています。
もともと難しい映画だったというのもあるのだと思います。
学術系映画を見るのは好きなので、不明な点などは百科事典などで調べてこのようにわかりにくい点など補っています。
ふつつかものですが、フォローいただければリフォローします。
よろしくお願いいたします。(何かプチバズり状態でビビってる…)。
観たいと思いつつも、だいぶ重そうだから仕事帰りにみるか悩んでいつも頼りにしているこのサイトのレビュー、はたまたyukispica様のレビューを見て、やはり映画館で観ようと思い足を運びました。
100年戦争は遥か彼方に世界史で聞いたかもな残念な脳味噌に事前勉強させていただきありがとうございます。大変参考になりました。