「映画体験として観るべき」Pure Japanese Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
映画体験として観るべき
ディーン・フジオカが企画・プロデュースと聞いて、これは観なければと思ったの。
普通だったら通らない企画が「ディーン・フジオカだから」で通ってくるんだよね、だから、ちょっと違った映画で面白いだろうなって。そしたら、予想を越えてきたね。どの方向に越えたかは問題かもしれないね。
きれいな映像から入って、ディーン・フジオカが格闘の型をやってる始まりで「これは、力んでる感じで始まったな」と思うの。やたら殺陣が入るから「こういう映画をやりたかったんだな」と思うのね。
ヤクザと悪徳政治家が絡んできて「うまいこと転がれば《キル・ビル》みたいになるんじゃないか」とか思うの。
渡辺哲が『やつの目には狂気が宿ってる』みたいな台詞を言うんだけど、ここは思わず笑っちゃったな。「そんなこと言う人、いる?」って感じで。
この辺までは「トラウマを払拭した主人公が、悪徳政治家やヤクザをボコボコにやっつける勧善懲悪の話だな」と思って観てるのね。でも、渡辺哲をディーン・フジオカが過失で殺したのに、『悪徳政治家が毒を盛った』と主張するあたりから、雲行きがおかしいのね。
もうディーン・フジオカは狂気の人なんだよ。行動が無茶苦茶。どうも過去に二人やってるしね。
ヒロインの蒔田彩珠も『おじいちゃん(渡辺哲)を殺したの?』みたいに怒るんだけど、なぜか『もう、そんなことはどうでもいい。私を助けて』ってなんじゃそりゃな展開なんだけど、もう、なんでもいいんだよ。
途中で蒔田彩珠がディーン・フジオカの電話番号を聞こうとすると『持ってない。本当に会いたいと思えば会えるから』ってシーンがあるのね。ヤクザに追われた蒔田彩珠が偶然ディーン・フジオカに会って『いま、私、ものすごくあなたに会いたいと思った』って「ほら、言った通りに会えるでしょ」ってシーンで回収なんだけど、この時点で、この映画、いろんな整合性が崩れてるから、偶然会うくらいは完全に許容できる状態なの。伏線いらないよ。
そして最後は壮絶な殺し合いになり、誰も無罪では済まないから何でこいつらこんなことすんだと思うんだけど、もういいの。ディーン・フジオカのピンチには猟銃を持った蒔田彩珠が登場して助けて「蒔田彩珠カッコいいぜ!」ってなるんだけど、すぐやられて。
最後は「いや、それ、完全に死んでんだろ」というところから、突然、目を見開いたディーン・フジオカが相手を倒し、相討ちで終わりました。
狂気の男が主人公の映画なんだけど、この映画を作った人たちも狂気の人たちだと思うね。
ディーン・フジオカのファンが「わあ」って観に行ったら、違う意味で「わあ」ってなりそう。
この映画は企画がディーン・フジオカでなかったら、撮られることはなかったと思うのね。
普通なら企画会議を通らないと思う。
そういう映画を目にする機会は滅多にないから、これは観ておくべきと思ったよ。