「化粧は武装」ずっと独身でいるつもり? せつこんさんの映画レビュー(感想・評価)
化粧は武装
かつて女性の幸せについてのエッセイ本を出して売れたライターで年下の彼氏がいる36歳のまみ、そんなまみの本をバイブルにしていた由紀乃、専業主婦の彩香、パパ活をして生計を立てる美穂、4人の女の話。
ジェンダーを題材にした作品が好きなので一応見てみたものの、今作は結局「天から見下ろす男性と当事者の女性」という構図からイマイチ抜けきれていない印象だった。
冒頭、「ずっと独身でいるつもり?」というバラエティで始まるのだが、こういう男性司会者が女性達の話を聞いて上手く回していくバラエティ番組(私は「女が女に怒る夜」って番組を思い出した)って、女は当事者として見るけど、男は「また女同士争ってるよ」と外野から見ることになる。
女同士が対立すると男性が完全に外野になるので、作品内でこういう題材を扱うなら未婚既婚や年代で女性同士を対立させないことが大切だと思う。少なからずこの対立を煽っているのは男性からの「上からの態度」。
今作でも、休みの日に出かけるのに旦那の許可を取る彩香、「今の性で活動"して良いよ"」と言われるまみ、男性から若さを求められ選別される美穂、「一人で生きていけそう」という由紀乃の元カレの言葉(女性は自分が守ってやらないとダメだと思ってるから出てくる言葉だと思う)など、4人の不安感に影響を与えている要素として出てくる。だったら、そこで不満を同性にぶつけてほしくなかったな。
あとは誇張されすぎた周囲からの明らかに傷つく言葉、理解のない男の言葉が、逆に今こんなこと言う人いないレベル。世代が違うからかもしれないけど少なくとも私はそんなこと言う人に出会ったことない。それよりも、もっと自然に言われることに違和感があって生きずらいんです。
でも化粧が女性の武装として描かれてるのが好きだった。男より30分早く起きなきゃいけないけれど、30分自分の顔を見つめて色んなものを塗り重ねていくのは、自分のドロドロした部分を綺麗に隠していく行為でもあり、生きずらい外の世界で笑ってられるように綺麗に武装をしているのかもしれないと思った。だからこそ美穂がホテルから逃げる時に唯一リップだけを握りしめていく。
あとはロケーションがやたら『あのこは貴族』っぽいところが多いのと、まみの彼氏の家に置いてあるひろゆきや西野さんのビジネス本が『花束みたいな恋をした』の本屋のシーンを思い出したり、今年観た映画の幻影を見てるのかと思いました。