「趣旨的にバリアフリー上映にしてほしかったなぁ…。」殺人鬼から逃げる夜 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
趣旨的にバリアフリー上映にしてほしかったなぁ…。
今年157本目(合計221本目)。
「12番目の容疑者」と続けてシネマート心斎橋さんで観賞。
内容は多くの方が書かれているとおり、聴覚に障がいのある方がターゲットになるホラー映画という趣旨になります。日本ではあまりない類型で、もちろん度が過ぎると問題になりえますが、一つの意欲作としては評価できると思います。
私自身は手帳上2級(内部3、3)で、過去に2年ほど、視覚障害をお持ちの方と仕事をした経験があります(よって、ある程度の手話表現は理解できる)。
この映画でもテーマはやはりホラー映画と解すルのが妥当ですが、同時にやはり「聴覚障害をお持ちの方」が巻き込まれる、という余り見ない類型が描かれています。そのため、韓国手話によるやり取りが多くなされます。
※ 韓国手話は、日本統治時代に日本の影響を受けたため(台湾(便宜上、国扱い)も同じ)、「怖い」「黒」「白」「スマホ」「怪しい」「どこ」「写真」…などほぼすべての語が日本手話と共通するようです(もちろん、手話の理解率は10%にも満たないが、共通点はかなりあるので、10%の中でも90%くらい、換言すれば9%は理解できる)。
問題はこの映画がこのような趣旨であるため、「サウンド・オブ・メタル」と同じようにバリアフリー上映にしてほしかった…という点です。手話表現については(聴者向けに)字幕がでますが、聴覚障害をお持ちの方への配慮はないに等しい映画です。もちろん、予算の関係もあるので、全てをデフォルトでバリアフリー上映にするのも難しいのは理解するものの、内容的に「手話をテーマにするホラー映画」であること、また、「日韓の手話表現もほぼ変わらない」ことを考えるとハードルは低いはずで(少なくとも、文法体系が全く異なるASL(アメリカ手話)を扱うサウンド・オブ・メタルよりは低い)、なぜにこれがバリアフリー上映でないのか…というのはちょっと疑問点です。
やはり、映画という娯楽は不特定多数の方が楽しむものであり、「合理的配慮」はなされるべきであり、かつ、趣旨的にも合致するのですから、この点は配慮が欲しかったです。
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(減点0.3) 上記に書いてあるのが全てで、「内容的に、韓国の手話映画も織り交ぜた手話をまじえたホラー映画」という趣旨で、趣旨的にもバリアフリー上映にするのに適しています。もちろんその費用はかかりますので一概に押し付けるのも無理なのは理解はしますが、30年前ならまだしも、今では合理的配慮も叫ばれる中、「内容的にデフォルトでバリアフリー上映にするのが自然かつ合理的」というものがそうなっていないのは、正直、残念に思いました(何でもかんでもバリアフリー上映にして、という主張とは、趣旨が異なる)。
なお、以前、聴覚障害をお持ちの方と仕事をしたことがあると書きましたが、今でもラインなどではよく文字チャットをしています。この映画は見に行ったそうで、日本手話との共通点があるので理解はしやすかったけど、やはりバリアフリー上映ではないので理解に支障をきたされたとのことです。
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