劇場公開日 2021年12月17日

「75点→95点」私はいったい、何と闘っているのか 野川新栄さんの映画レビュー(感想・評価)

4.575点→95点

2022年1月10日
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鑑賞方法:映画館

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2022年映画館鑑賞1作品目
1月9日(日)チネラヴィータ

原作未読
原作はお笑い芸人のつぶやきシロー
監督は『お父さんのバックドロップ』『デトロイト・メタル・シティ』『体脂肪計タニタの社員食堂』『幕末高校生』『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』の李闘士男
脚本は『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』の坪田文

60年代70年台の日本の喜劇映画のようなハートフルホームコメディー
どんな映画にもホームドラマ的な要素はほしいところ
それが全くないといくら予算を注ぎ込んでもなんか薄っぺらくなるような感じが否めない

スーパーマーケットうめや大原店で長年主任を務める伊澤春男(安田顕)は部下や店長から全幅の信頼を寄せられる司令塔的存在
家庭では妻と二人の娘と一人息子5人家族のリーダーとして明るくて仲の良い理想的な絆を保っている

店長(伊集院光)が病気で急逝し急遽店長代理に就任した伊澤
周囲は時期店長に期待し本人もまんざらではないが蓋を開けたら本部の経理の者が店長に就任し伊澤は副店長に
主任に昇格する者はなく立場は全く変わらない名ばかりな副店長というポジションに本人はがっかり
こうなったらなんとしてでも店長に就任したい伊澤
本部から新店舗の店長に任せられる可能性が出てきて俄然張り切る伊澤
しかし部下の不正を庇ったばかりに

長女と次女は歳が近いが次女と長男の年齢がちょっと離れている
お姉ちゃん2人は美人でシュッとしているが野球少年は典型的な肥満児
家族で1人だけデブ
元ホークスのトラックスラーの幼少時代を彷彿させる可愛らしいコロコロッとしたデブ
なにかといえばお父さんの肩に腕を回し「パパは僕似だね」など嫌味が全くない愛情を感じるユーモラスな生意気発言が良い
長女と次女と妻にはなにか特別な事情を感じ前半は消化不良だったが後半明るみになりすとんと落ちてまあ納得

反抗期とかないのだろうか
年頃の娘は普通父親に辛くあたるものだと思うがそういう親子関係ばかりではないのかもしれない
父親の立場からすれば理想的な和気藹々とした家庭風景
本当の父親じゃないと知っているからかもしれない
それでも惜しみなく注いでくれる愛情を感じ取れるからだ
感謝しかない

伊澤はとにかく独り言や心の呟きが多い
これが闘っている状態か
例外に漏れず全くといっていいほど予習せず出演者だけをチラッと確認しただけで観ることを決めた
そのためかタイトルから想像したのとは内容はだいぶ違っていた
『私はいったい、何と闘っているのか』から僕は思い込みが激しいかなり痛いネット民のイメージがあった
自分とは考えが違う人をアベサポとレッテル貼りをするパヨクとか気に食わない人を朝鮮人認定する嫌韓厨のネトウヨとかアンチ巨人は全てカープファンだと思い込む某巨人ファンとか
僕には特に闘っているという印象はなかった
頑張っていることが闘っているということなのだろうか

大原店のフロワチーフの高井は具体的に表現しづらいが独特の雰囲気を持っている座敷童子のような存在
演じているのはファーストサマーウイカでほぼスッピンのためか全くの別人
彼女だと全く気づかなかった
バラエティーでもこの顔で出演すればいいのに

熱血店員金子は1人だけ舞台俳優のような大声でとても熱い
彼の正義感が伊沢の運命を変えることなる

妻の実家は沖縄
2人の娘と伊澤は妻の両親に会いに行く
ついでに2人の娘の生物学的な父を探す伊澤だが金城姓ではなかなか見つからない
たまたま乗ったタクシーのドライバーが本人というラッキーな伊澤

結婚の許しをもらうためやってきた長女の彼氏に父の威厳を見せようと赤ベコの隣にナポレオンを置く件が好き
新店長がカラオケで『赤いスイートピー』をうまく歌えず3回も続けて歌うシーンが好き
大原店を去る伊澤に高井が渡す相撲取りの手形のようなものがある1人だけ寄せ書きに裏は長州力?の名言が書かれた色紙が面白い

高井の出世は望まず普通に働いて普通に休めたら良いという人生観に激しく同意
左翼メディアで活躍するフェミニストは学歴が高いのにどうして管理職の大変さが理解できないのだろうか

伊澤が決まってカツカレーを食べる行きつけの食堂『おかわり』の照明が風俗店のような色合いと明るさでいかにも怪しい
店主は「そのくらい食べれたら大丈夫だ」以外何も言わない無愛想な婆さんが一人で切り盛りしている

河川敷で川に向かって夫婦でバカヤローを言い合うシーン好き

初めはそこそこ面白くもモヤモヤとしたものがあったがそれがまあ解決したので最終的な評価はぐんと上がった
人情噺が好きなんだろう
そういう話が嫌いな薄情な人には向いていない

エンドロールのあとにおまけは無し

あとこれは全くの余談だが次女役務めた菊池日菜子は19歳で彼女もアミューズ所属
それなら彼女が今の雉真るいを演じたら良かったのになと菊池日菜子のWikipediaを読んだあと感じた
最近は若手でも映画やドラマである程度実績がある女優を主演に起用する傾向があるけどさ
僕くらい邦画を観てると誰だよってことが全くない
邦画をほとんど観ない不届き者は朝ドラで安藤サクラという存在を初めて知る始末

野川新栄