「慰め」私はいったい、何と闘っているのか U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
慰め
趣き深い脚本と構成ではあった。
のだが…媚びた脚本というか、なんというか。
劇場を後にする時、ふと目に止まったポスターに「共感度120%」の文字があって、萎えた。
悶々と煮え切らず、ウジウジした主人公であるけれど、得難い幸せの渦中にいる事を本人だけが分かってない、みたいな状況。自問自答もいいけれど、そうやって闘ってきた結果は、家族が教えてくれるから、ちゃんと伝えてもいるのだから、見て聞いて、と。
でも、それでも、それが出来ないあなただから私達はあなたの事が愛おしいのよ、て論法だろうか。
…んー、まぁ、構ってちゃんな脚本に見えて仕方がない。
そもそも闘ってる事柄が広義であって、世間体やら常識やら、評価やら批判はもとより、選択やら決断でさえ「煮え切らない自分との闘い」と捉えたりする。
で、まぁ、その大半の勝負に結果は出てこない。
第三者はジャッジしない。
己しかジャッジ出来ないのだけれど、これ程に不毛な勝負はない。「大変だね、ご愁傷様」なのである。
共感とか言いながら、自分の問題を他人に転嫁しないで欲しいと思う。
とてつもなく面倒くさい性格なのだ!
なのだが、この主人公は必勝法を持ってるのだ。
ちゃんと「覚悟」をした人なのだ。
その辺りの2面性は人間くさいなぁとも思うのだけど、春男ファミリーにその2面性は反映されない。
…作者の願望が反映されていたりすんのかな?どうなんだろうな。
タクシーの中のやり取りは、ちゃんと闘えてたと思うし、その健闘を讃えたい。
20数年に渡り、闘ってきたのだろう。
ただ、まぁ、その事においては相手はリングにさえ上がっておらず闘う資格すらない事に、なぜ気づかないのだろうかと思う。
20数年間、あなたをパパと慕ってきた娘や嫁を信じてやれないのかね?凄い失礼だし無礼だよね。
疑心暗鬼と自問自答…厄介な性格だよね。
俺には春男が幸せ者だと思えた。
それと同じように、自分の事を俯瞰して「まんざら悪くもないじゃない」と思えたら、この作品も報われるような気がする。
…このご時世、こんな話も必要なのだろう。
冒頭の流し素麺は、強引だったような気がする。
あの奥さんと娘が踏み留まらせないのが不思議でしょうがなかった。