ラストナイト・イン・ソーホーのレビュー・感想・評価
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「大切ななにか」にも暗部はある。
エドガー・ライト作品に一貫してある、登場人物を構成する「大切ななにか」。本作では「60年代」というのがそれで、惜しまんばかりに流れる当時の音楽も、主人公・エロイーズがロンドンに来たときには背中を押す役割として存在していた。
しかし「大正モダン」や「昭和レトロ」がすべて良かったかといえばそうではないように、物語中盤からポジティブなイメージの「60年代」にサンディを通して影が落ちる。ロンドンに溶け込んだことで暗部にも触れる構成は巧いな、と感じたが、亡霊の描写は正直ゾンビっぽくて、エロイーズを襲いかかる亡霊ののんびりとした動きは『ショーン・オブ・ザ・デッド』を思い出してしまった。その結果エロイーズの錯乱っぷりも恐怖というよりか「頭おかしい」みたいな感想しか抱けず。ハロウィンの化粧が残ってしまって目元が暗いエロイーズの表情も、ちょっとありきたりでイマイチだった。サンディの暗い記憶と幻影に悩むエロイーズのシーンがもう少し短ければよかったのだけど、作品の半分以上はその描写で占められていたのが、少し不満な要素だ。
ラストでエロイーズがサンディを受け止めるのはとても良かった。サンディはエロイーズにとって「60年代」の暗部の象徴で、自身の命すら狙う人物だ。それでもエロイーズがサンディを抱きしめたのは、「60年代」に傷つけられたこと以上にエロイーズを構成する大事な「なにか」であり続けたからだろう。
個人的に感じるエドガー・ライトの良さは、こうした「自分を構成する大切ななにかへの変わらぬ誠実さ」だ。『ショーン・オブ・ザ・デッド』や『ワールズエンド』なら主人公を自然体にさせてくれる親友、『ベイビー・ドライバー』であれば音楽。「大切ななにか」は、関係性が変わったり他に大切なものができてしまうと大切であったことをすっかり忘れてしまったり、突き放してしまいがちだ。しかし、エドガー・ライト作品は「大切ななにか」をずっと大事にしている。しかも「中盤の盛り上がり」のために大事なものを一時的に投げ捨てることもほとんどない。
本作でも錯乱したエロイーズが自作した60年代ファッションを切り刻むシーンがあるが、セリフや態度で明確に拒絶するようなステレオタイプな演出ではなかった。切り離せないから「大切ななにか」なのだ。その徹底した描写こそ、エドガー・ライトの魅力だ。
そのため、ホラーや錯乱描写が大半を占める本作は「見たいのはそっちじゃない…!」という感想の面積が、正直大きい。
◯カメラワークとか
・序盤のシーンはエロイーズとサンディが入れ替わる演出が多くて面白かった。特に反射の演出はクラブハウスの凝った鏡を使って複数に反射させたり、ゴージャスな空間の使い方が巧い。後半はあまり凝った入れ替わり演出がなくて残念。
・ファーストカットが良かった。ドアのシルエットが舞台のように映り、廊下が歌い踊るエロイーズの花道にもなる。
◯その他
・ボーイフレンドのジョンが黒人である理由付けがうまいようなそうでもないような。居場所がないっていう共通点は確かに強調できるけど…。2020年前後の作品を50年後とかに見たときに、ああこの時代の作品だなって思いそうな違和感がある。
都市がひとをつくる サウンドスケープ、微熱感覚
60年代の「魔都」ロンドンで夢を叶えられず、男たちに食い物にされたサンディの無念さや怨念が、現代のエロイーズに感染して、幻影を見せる。
エロイーズは『シャイニング』的な「視る力」を持ち、また、デザイナーを目指して努力しているが、都市的環境の中で葛藤している女学生であり、サンディと共通する悩みを抱えてもいる。60年代には挫折させられた夢が、現代では開花し、女性が自己実現を果たせるようになったところは、時代の変化を感じさせる。
同時に、エドガー・ライト監督の都市への眼差しが独特で、猥雑さに満ちたロンドンの活気が、現代ではソフィスティケートされ、失われた様も匂わせている。「匂いのある街/ない街」に、フランス的女性の二類型「イノセント/コケティッシュ」が重ねられる。「匂いのある街」は、コケティッシュなサンディが闊歩するにふさわしく、「匂いのない街」は、いけてないエロイーズが迷走するにふさわしい。
たしかに、60年代に比べて社会は進歩した。だが、失われた「匂い」「空気」もある。そんな追憶が切ない作品だ。
『ベイビー・ドライバー』で、巧みなBGMの使用でサウンドスケープを立ち上がらせた監督は、本作では都市の描写により、そこで生活する人間が必然的にそうならざるを得ない姿を浮かび上がらせた。都市がひとに浸透し、ひとが都市につくられる。
ちなみに、オーディションと称され、サンディが初めてステージで歌うのが、ペトゥラ・クラーク「恋のダウンタウン」。ジェームズ・マンゴールド監督『17歳のカルテ』のエンディングで流れる曲で、思わず少し泣いてしまった。映画的記憶に訴えかけるエドガー・ライト監督の音楽の使い方は絶妙だ。
ロンドンはかっこよくて、怖い(かも)
服飾デザインを学ぶために、田舎町からロンドンに出てきたエロイーズ。「見える」能力のある彼女には、実家にいた時から死んだ母親の霊が日常的に見えていたが、ロンドンに出てきてからはその代わりに夜な夜な60年代の見知らぬ美しい女性サンディの夢を見るようになる。その夢のイメージがだんだんと現実を侵食し……といった話。
サイコホラーだがそれだけが目玉ではなく、60年代の明るい音楽とファッション、当時のロンドンの街並みなど、お楽しみ要素がたくさん詰め込まれている。トーマシン・マッケンジーの愛らしさと魅力的な声もたっぷり堪能出来て嬉しい(彼女が出るので観にいった)。前半はほとんどホラー要素がなく、後半になってもドッキリ的恐怖はそこまで多くないので、比較的落ち着いて見ていられる。
では何が怖いかというと、まずひとつは、最初はエロイーズの憧れを追う気持ちが具象化されたような生き方で彼女の心を捉えたサンディが、夢の向こうで不幸な運命に蝕まれるにつれ、エロイーズの現実を恐怖に巻き込む存在に変わってゆくことだ。
胡蝶の夢的描写に謎のリアリティがある。監督自身、以前から他人になる夢をよく見ていて、その夢をモチーフにしたそうだ。
ベッドで眠っている間だけ見えていたサンディの夢が、部屋で起きている時、やがては外でも見えるようになり夢と現実の境界線が塗りつぶされてゆく。だが、悪夢と化した夢へのエロイーズの反応を第三者から見れば、それは精神を病んだ者の被害妄想と全く変わらない。誰にも理解されない恐怖にさいなまれる、それがまた恐ろしい。
もうひとつは何といっても。
お前がサンディかい!刺される描写が何か不自然とは思ったけど。
一方、みるみる増えていったストッキングかぶった男の霊たちは、実は「見える」エロイーズに助けを求める被害者の会的集まりで、万事休すのエロイーズに受話器を差し出したりしてくれて実は怖くない。でもサンディに枕営業させてたのはいけない。
結局、生きてる人間が一番怖いということかも知れない。老サンディにせよ、過去に彼女をもてあそんだ男達にせよ。ついでに、エロイーズがあの賃貸に行く原因を作ったゴミみたいなルームメイトも。
そんな生きてる人間が大勢うごめく大都会、人が死んでない場所なんてないロンドンの毒気と60年代ロンドンカルチャーの魅惑に包まれて、その辺が好きな人にはあまつさえ楽しい余韻も残るちょっとシュールなホラー。T.マッケンジー好きならなお間違いなし。
田舎娘が上京して夢を目指すほんわかストーリーかと思ったら…
田舎娘が上京して夢を目指すほんわかストーリーかと思ったら、中盤からホラー展開で怖かった。
面白かったのは、サンディが生きてたことと、正体が管理人の婆さんだったのが予想できなかったこと。そもそもサンディは死んでたと思ってたからまんまと騙された。本性あらわにしてエロイーズに襲いかかるサンディ怖いよ。
サンディのやったことはエグいけど境遇が辛すぎて気持ち分かるかも。身も心もボロボロになる生活送ってたら男たち殺して当然でしょ。
大量殺人しといてお咎め無かったり、床下に大量の死体を隠し続けられたり、など気になる点もあったけれど、サンディが次々と殺戮するシーンは爽快だった。
エロディーがサンディの服でファッションショーを行うエンディングも後味が良い。サンディの気持ちを受け取ったエロディーの優しさを感じる。
アイ ガッド マイ マインド セット オン ユー(ジョージ・ハリスン)
·愛なき世界
Peter & Gordon
·アイ・ガッド・マイ・マインド・セット・オン・ユー
JAMES RAY (ジョージ・ハリスンのカバー)
·You’re My World
シラ・ブラック
·恋のダウンタウン
ペトゥラ・クラーク(サンディのカバーあり)
·S·tarstruck
キンクス
· Anyone Who Had A Heart
Cilla Black
·パペット・オン・ア・ストリング
サンディ・ショー
·恋はヒートウェーヴ
ザ・フー
·ダンス天国
ウィルソン・ピケット
·Don't Throw Your Love Away
サーチャーズウォーカー・ブラザーズ
·There's A Ghost In My House
R. Dean Taylor
·ハッピー・ハウス
スージー・アンド・ザ・バンシーズ
· Eloise
Barry Ryan
ビートルズが現れた頃の曲ばかり♥
調べました。聴いた事のある曲は沢山あると思います。物凄く楽しい曲ばかり。個人的には『パペット・オン・ア・ストリング』が一番好きな曲。もう一曲ストリングスの曲があったんだけど、見つからない。
また、見よう。
氷の微笑見たいな映画だよー。
この俳優さんのハスキーボイス可愛いね。変な意味じゃないよ。
この映画の曲聴く人って80歳くらいなんだね。あ~。
劣化版ブラックスワン
昨夜(2024/04/21)観ました。
プロローグ、祖母と暮らす実家からロンドンへ向かい、寮に到着して、その後寮を飛び出し別の部屋を借り、不思議な世界へ行く辺りまではとても面白く、工夫を凝らした映像を交えて観ることが出来ました。
しかしその後の展開は、ただただ病んだ女が狂って、方々に毒を撒き散らすだけの作品だと感じてしまいました。これだけ書くとナタリー・ポートマン主演のブラックスワンも似た様なもの、と言われてしまいそうですが、あちらの作品では実の母親が既に病んでおり、そんな家の事情を抱えながらもバレエに打ち込んでいる為、故郷で祖母の反対を押し切って単身ロンドンへやってきた本作の主人公であるエロイーズとは土台から状況が異なっています。
そして物語の佳境から、ずっと彼女に良くしてくれている青年に対して、ただのひとつのお礼すら言わず、危険な目に遭わせたり、毒づいたり、女人禁制の部屋に自分の意思で招き入れたにも関わらず、大家の婆ちゃんに誤解される行動を取ったりなどが続き、ただただ不快でした。彼は黒人男性なので、その誤解から部屋に駆けつけた警察官に射殺されていたかもしれません。たとえロンドンとはいえ、白人と比べれば黒人の立場は今も危ういのです。偏見を持つ人や差別主義の人も当然います。
表現の自由や、映画の世界はファンタジーなどのフォローができるかも知れませんが、私は米国内で幾度ともなく起きている黒人差別による事件が頭をよぎってしまって、割り切って観ることが出来ませんでした。
そして寮のルームメイトの女に対しても何も起こらない仕様は、勧善懲悪を期待していた私としては、甚だ消化不良で、怒りすら覚えました。
全ての伏線を回収する必要はありませんが、「あの女にひと泡くらい吹かせてやれよ」が本音です。
美しい映像の迫力に、見事にシンクロする音響は観る価値は十分あると思います。
ストーリーの面では…、奥歯に何か挟まって気になるのが好きな方は是非ご覧ください😅
過去にない類のホラー映画
この手のホラー映画は今までになかった。
少女の視点から見た悪い大人の怖さ。
ベイビードライバーと同じく、主役を応援したくなる映画で、のめり込みすぎてこっちまでドキドキしてくるタイプ。音楽の使い方も秀逸で流石エドガーライトといったところ。
サンディとエロイーズの鏡越しの演出もこだわりが見えて良い。
ラストシーンのサンディを助けたいというエロイーズの決断が良かった。
亡霊としてサンディの人生を見てきたからこそエロイーズがサンディに感情移入し、助けたいと思ってしまうという脚本は、亡霊か見えるというホラー映画要素を上手く転換したなと感心した。
屋根裏部屋で見るロンドンの悪夢
イギリスの田舎で祖母と二人暮らしのエリーはファッションデザイナーになることを夢見ていた。
彼女はロンドンにある服飾学校に合格し、女子寮に入寮するが馴染むことが出来ず、ソーホー地区にあるボロアパートの屋根裏部屋を借りることになる。
夜眠りにつくと、彼女は60年代のロンドンにいた。エリーが憧れているのは60年代のロンドンだった。
まさに理想のロンドンを目の前に彼女の心は踊る。
ふと鏡を見ると彼女の姿は金髪の美女に変わっていた。
彼女は歌手になることを夢見るサンディ。
エリーは夜、屋根裏部屋で眠りにつく時だけ、サンディと身も心も一体化し、まさに夢のような時間を共有する。
夜の体験はそのままエリーにデザインのインスピレーションも与える。
カフェ・ド・パリのマネージャーであるジャックに見初められたサンディは、確実にスターになるための階段を昇っているかに思われた。
しかし、ある夜エリーが夢の世界に入ると、サンディはショーの主役ではなく脇を固めるダンサーの一人になっていた。
彼女は仕事を得るために、エンタメ界に顔が効く男連中の夜の相手をすることを拒んだらしい。
ジャックも豹変したかのようにサンディの身体を男たちに差し出そうとする。
ここでエリーは理想的だと思っていた60年代の闇の部分を見せつけられることになる。
男たちは夢を叶える見返りに彼女たちを食い物にしていた。やがて身も心もボロボロになっていくサンディ。
同時に楽しみだった屋根裏部屋での夜の時間が、エリーにとっても悪夢へと変わっていく。
ある夜、エリーはサンディがジャックに殺される場面を目撃してしまう。
そして屋根裏部屋だけでしか見られなかった夢の世界が、少しずつエリーの現実を侵食していく。
のっぺらぼうの男たちが町の至るところに現れ、エリーを追いかけて来る姿はとても怖かった。
ジャンルとしてはホラーなのだろうが、今までに見たことのない新感覚の映画だった。
カメラワークがとても素晴らしかった。
現代のロンドンは下品なネオンに照らされているが、60年代のロンドンはまさに光の洪水といった感じで輝きに満ちている。
そして鏡の使い方が絶妙だった。
エリーの母親は彼女が7歳の時に自殺してしまった。
エリーがロンドンへの出発前に、部屋の鏡を覗くと、そこには亡くなった母親の姿があり、彼女を見つめている。
エリーが見る夢の世界でも鏡は重要な役割を果たしている。
鏡の中ではサンディの姿はエリーのままだ。
サンディと鏡の中のエリーの動きがシンクロする場面はとても見事だった。
後半、夢の中で殺されていたサンディが、実はアパートの大家であることが分かる。
サンディは犠牲者ではなく、彼女を食い物にしようとした男たちを手にかけた加害者だった。
町で現れるのっぺらぼうの男たちは全てサンディの犠牲者だったわけだ。
真相が分かってからも、エリーはサンディに対して恐れを抱くどころか、彼女のこれまでの苦痛を思って心を痛める。
秘密を知られたサンディはエリーを殺そうとする。
幽霊になった男たちはサンディを殺して欲しいと一斉にエリーに訴えかける。
しかしエリーはその訴えを拒絶する。
悪いのはサンディではなく、彼女の夢を奪った男たちの方だ。
このあたりの心理描写は見事だと思った。
ホラーとしての怖さはあるが、それ以上に女を力で押さえつけようとする男たちへの嫌悪感の方が勝っていた。
華やかに見えた60年代だが、その陰には搾取された数多くの犠牲者がいる。
とても現代的なテーマを持った作品だと感じた。
どれだけエリーが悪夢に侵食されて奇怪な行動を取っても、最後まで彼女に寄り添おうとしたジョンの存在が好ましかった。
エリー役のトーマシン・マッケンジーはとても良い表情をしている。
今後も彼女が出演している作品は要チェックだと思った。
夢と現実の境界
最初はエリーの母親の怨念が関係するのかと思っていたが、全然違った。
寮生活に馴染めなかったものの、サンディとの出会いを機にエリーちゃんがどんどん可愛くなっていく。60年代のきらびやかな世界はとても美しかったけれど、だからこそ夢見る女の子を食らう醜い男どもには吐き気がした。そういう時代だとわかっていても、女の子が食い物にされるのを見るのは悲しいものだ。エリーも毎夜見る夢を楽しみにしていただろうに、そういう場面を目にしてから彼女自身が現実世界で追い詰められていくのは本当に可哀そうだった。この追い詰められっぷりはまさしくホラー映画といった感じだった。現実と幻覚が入り交じってあらゆる境界が曖昧になっていく様が鏡やカメラワークを使って上手く表現されているのも見ごたえがあってよかった。
サンディが刺殺されるところは決定的なシーンだと思われたが、あれはメタファーだった。毎夜あのベッドの上でサンディは何度も何度も死んでいたのだから。とはいえ物語はホラーの中にサスペンスが混じり始め、恐怖がじわじわと増していく。この塩梅もすごく面白かった。
おばあちゃんの言うように、エリーの母は他人を頼れずに自殺してしまった。サンディもきっとそうだったのだと思う。本当は誰かを頼るべきだったのに……エリーはギリギリのところでジョンを頼ることが出来た。みんな頭がおかしいって言うけど、彼だけはエリーを信じてくれた。味方を得ることが出来たから生き延びられたのかもしれない。
悪夢を見せられ、現実の生活にも影響を与えられていたのに、エリーはあくまでサンディを救おうとしていた。それは彼女自身が田舎から夢を追ってロンドンに出てきた女の子だったからかもしれない。アレクサンドラに殺されそうになっても、彼女を救おうとした。傍目にはきっとエリーの方が壊れて見えるはずだ。でもエリーは最後までまっとうだった。アレクサンドラは夢を追う女の子のまま死んでいった。母親に代わって彼女に付きまとう亡霊になったのかと思ってひやっとしたが、ラストは案外すっきりしていて、ちょっとさみしい感じもしたけど、良い終わり方だったと思う。
たまにくる本物の「映像作品」。 ※核心に触れるネタバレはなし
何かスゲーもん見たと思わせてくれるタイプの映画。
本作は音楽にこだわりまくることで有名な「ベイビー・ドライバー」と同じ監督が作ったものらしいんですが、だいぶ前にCM見て気になっていたものの、「ベイビー・ドライバー」の監督かあ…と正直ちょっと不安に思ってました。結構前に見て、何となく自分とは相性が悪かったというか。あんましテンポが良いとも思えず(あんだけビートガンガン鳴らしてたのに)、音楽がテーマの映画の割には…とか思ってしまって…
でも本作は、流行りもんかなと思ってスルーしようとしてたけど、本当に見て良かった。一緒に見た家族からの評判も凄く良かったです。
ただ、露骨な性犯罪描写があるのでR15+には納得ですし、結構強烈なのでトラウマ等ある人はお気をつけて。流血もあり。
あらすじ:
イギリスの田舎で服飾の仕事をすることを夢見るエロイーズは、専門学校から合格通知を受け取り憧れの都会ロンドンへ。昔、母親も夢を追ってロンドンへ出ていき、心を病んで自害してしまったために、祖母からは何かと心配され、友達もおらず、ルームメイトに虐められて寮を出たことを話せずにいた。何とか新しい部屋を借りたものの、眠ると必ず憧れの60年代ロンドンで、華やかな才能ある女性サンディになっている夢を見る。最初はファッションの勉強にもなり、才能豊かで自信家のサンディになれることを楽しんでいたものの、徐々に支援者によって辱められ、貶められて疲弊していくサンディの苦しみと絶望を共有しはじめたエロイーズは、現実の世界でも「君の母親を知っている」と言う老人に周囲を嗅ぎ回られていることに気付き、母と同じように心を病んでいく。
予告見た時、単に殺人事件に巻き込まれた女性を夢で何度も見て、主人公が探偵気取りで夢の中で証拠探しをして犯人を見つけ出す!みたいなSF?オカルト?ミステリー系(「サイコメトラーEIJI」みたいなやつ)だと勝手に思ってたんですが、全然違った。こんな悲痛な話とは…
前日に「モービウス」を見たばかりで、敵役で出てた俳優がたまたま本作でも出てたんで、一緒に見た家族が「この顔に嫌な印象が…」と。可哀想だけどわかるわ…
まあ元々性格良さそうな顔じゃないけど(失礼な)、本作でもクズ役。監督がインタビューで「彼の大ファンなんだ!この役は彼にぴったりだと思って!」と言ってて笑ってしまった。嬉しくないだろww
1960年代のロンドンを舞台にした作品ですが、イギリス人は60年代が大好きなんだとか。日本でいうバブル期みたいなもん?全然違う?芸術の黄金時代的なやつかな?わかりませんが、やっぱり「輝かしい時代」にも闇はあるもので…表層を強く輝かせるために犠牲になった人達がいたんですよね。
日本のバブル期も、表層しか見なければ「良い時代だった」と言えるけど、金儲けのためには何をしてもいいという時代でもあったので、恐喝して一家を追い出し、人の家を無理矢理取り潰してでも良い土地を手に入れたりしていたわけで。きらびやかな世界を作るために、土地を追われたり自殺に追いやられた人達もいたんですよね。
ドイツのユダヤ人虐殺なんかも、その時代に生きた人は「良い時代だった」と言う人も結構いるのだとか。ユダヤ人虐殺は酷いことだったけど、でも良い時代だった、「自分達は」幸せだったと。
監督も60年代に思いっきり憧れていたのだそう。でも、本作の撮影にあたり60年代に実際に生きていた人達にインタビューをして回ったら、「60年代に行きたい」という気持ちは無くなったとか。
元々『良いところしか見ずに行きたいと思ってるだけなら、行かない方が良い』と思っていたそうですが、実際60年代(特に芸能界)を生きた人達にとっては「憧れのあの時代」ではなかったんですね。
監督の言葉通り、お前らの「憧れ」の正体はこれだよ、と言わんばかりに、絶望感に徐々に押し潰されていくサンディとエロイーズ。
どんなに華やかできらびやかな時代に見えても、必ず苦しみはあるわけで、その時代を生きた人達にとっては綺麗事じゃないし、どの時代でもそれは同じことなんでしょう。
本作はその「苦しみ」の方に焦点を当て、人がモノのように利用され捨てられるのが当たり前の、華やかなようで底が見えないほど暗い世界をネオンバチバチの映像で描いています。
いや、書いててよくこのストーリーをこのラストに落とせたなと。もちろん社会は徐々に良くなっているという希望を持たせるために、この作品だからこそハッピーエンドであることは必須だったとは思いますが、それにしてもこれだけ色んな要素を盛り込んで全部回収して、ストーリーも面白くて希望も持たせるエンドで…って稀に見る名作なんでは。ゾンビみたいな表現がちょっとアレだったけど。
そういや見終わってから、男性監督からこんなストーリーが飛び出すとは、と驚きました。共同脚本は女性ですがあくまで「共同」で、監督自身が「こういう作品が作りたかった」と話しています。
今でさえ世界中で「モノとして扱われる女性」が話題になるわけですから、そりゃ昔なんてこうだろうねという悲惨な世界。女性がモノとして扱われるのが当たり前すぎて話題にもならない時代、自分の才能を認めてくれた相手の裏切りに遭い、夢を奪われ、他人のモノ・所有物・道具に成り下がった自分自身にも失望した状態では、誰かが手を差し伸べてくれてもあの世界から抜け出すことは難しかっただろう。サンディの激しい怒りや憎しみは、自分自身にも向けられていたんだろうなあと思うとやるせない。
インタビューでは、ジャック役のマット・スミスが「ジャックはどこに連れて行っても恥ずかしくない振る舞いができるが、自分自身のことがわからず自分に自信がない。サンディは自分の手に余ると思った」と話しています。要は、サンディには大物になれる才能と魅力があったが、自分より遥かに可能性を秘めていたことに気付いてしまったジャックは、サンディの足を引っ張りわざと自分のそばで格下に留めて見下すことで、自信のない自分を認めずに済んだ…ってことなのかな。無能あるあるですね。
こういう表現って多分、女性目線で見てないとなかなかわからないことなのでは。監督自身は外からロンドンに来た人間で、エロイーズ(田舎からロンドンに出てきて心細いし馴染めない)の気持ちは凄くわかると話していましたが、サンディは?
サンディのキャラクター性や服装で心の内を表現した等語っていたので、監督自身もサンディのキャラクター表現にかなり力を入れていたと思います。インタビューを活かしたのか、元々視野が広くよく見ている人なのか。ともかくアニャ・テイラー・ジョイの演技力と併せて本当に素晴らしかった。
ちなみに、監督は数年前にまだ本作の脚本も何も無い状態なのに、アニャと会った時「こんな作品今度撮りたいんだ~こんな話でこんな設定で~」とかなり詳細まで話してしまったのだとか。秘密守れないタイプのやつ~!
アニャが関心を持ってくれたので、元々エロイーズ役に抜擢しようと思っていたが、脚本が進むにつれサンディの役が重要なものになっていき、アニャはサンディ役にすることにした、とのこと。アニャはエロイーズ役もできたかもしれないけど、そしたらサンディ役はそんじゃそこらの俳優では眼力で負けてしまいそうだし、サンディ役で良かったと個人的には思います。
しかし、幽霊が見えて云々、過去が見えて云々という作品は結構あると思うんですが、実は「頭がイカれたのか本当にタイムスリップしたのか」とか「精神病か本当に幽霊か」とか、「わからないから怖い」系の話が多く、本作みたいなミステリーものっぽいストーリーで、最初から主人公にハッキリ霊感がある設定って意外と少ないのでは。自分の見た作品の中では『シックス・センス』以来だったので、かなり珍しいなと感じました。
もちろん完全なお化け系のホラーだったら、主人公に霊感ある設定は珍しくないですが、本作は「シックス・センス」と同じでお化けが何か訴えてくるタイプ。お化けが怖いとかそういうのではないので、これをホラーに分類するかどうか?という気もします。まあ、『シックス・センス』も昔はホラーに分類されてたし、それならこっちも…と言われればそうなんですが。
自分の中では『シックス・センス』も本作も、お化けは脇役で本筋はサスペンス?ミステリー?だよなあと思っているので、ホラーと聞いて見るのをやめた人がいるなら勿体ないなと思います。
でも本作は特に、幽霊というよりゾンビっぽい見た目なので、確かにホラーっちゃホラーなんですよね。カテゴライズするとしたら。ホラーにしてはめちゃくちゃライトですけど。自分ならサスペンス・スリラーに分類するけどなーと思ってしまいました。
低評価するとしたら、ゾンビっぽいやつらのクォリティーの低さかな…ここで「えぇ…」となった人は多そう。
監督のこだわりとして、ネオンの冷たい光ビカビカの中で起こる悪夢みたいなものを作りたかったそうですが、これは大正解だったな。見た目は非常に華やかで豪華。それが徐々に下品で安っぽくなっていくのが、サンディの人生と連動していて悲しい。
「枕営業」なんて言葉で未だに揶揄されがちな芸能界ですが、本作を見た後は、ヘラヘラ笑いながら「あいつ絶対枕営業やってる」とか言えなくなるかも。
「ベイビー・ドライバー」で感じたテンポの悪さや、音楽だけが主張してくるアクの強さは無くなり、映像とストーリーと完全にマッチしていました。
記憶が薄れた頃にぜひまた見たい映画。
後半の怒涛の展開が良かった
よく会うおじいさんをジャック本人だと思わせるミスリードにまんまと引っかかり、その後のどんでん返しにアッと言わされた。
全体的に、掴みどころがなくて、ユラユラと不安な気持ちにさせられた。
黒人の男の子は、最後の最後まで究極にいい奴でびっくり。笑
最後の燃え盛る家のシーン、強烈に印象に残った。
ソーホーの、表面にはうつらない、悲しく生々しい歴史を垣間見たような気持ち。
華やかな世界の表と裏
『ショーン・オブ・ザ・デッド』、『ベイビー・ドライバー』が面白くて、音楽から引き込む映像作りが魅力的なエドガー・ライト監督作品。
また詳細をあまり見ずに鑑賞。
後から知ったが、タイムリープ・サイコ・ホラー作品とのこと。
冒頭は憧れのロンドン、1960年代のファッションや音楽に魅力され、ファッションデザイナーを目指す田舎少女に感情移入する。
夢に出てくるサンディに自分を重ね、自分もサンディのようになりたいと真似して金髪にし、どんどん垢抜ける主人公。
と、微笑ましく観ていたが、
え、サイコホラー映画だったの??と途中からあらぬ方向へ進む。(あらすじ見なさすぎ)
憧れの世界の表と裏。
華やかな世界の裏は、男達の胸糞悪い欲望の為に女の子を消費する世界だった。
サンディの無念を晴そう、悪夢を止めようと翻弄する主人公、、、
主人公を悩ませた悪夢の真相が明らかになる、ラストまでのどんでん返しにまんまとやられた!
怨霊の男達が気味悪すぎー!
ちょっと癖ありの大家がまさかの展開になり唖然!
最後の主人公の心境がよくわからなかったけど、自分は夢を叶える為に意地悪な同級生にも負けずに信念を持って戦う決意の現れなのか。
幻想的、且つ独創的…
田舎者で無垢なトーマシン・マッケンジーと男を魅了するアニャ・テイラージョイを対称的に描き、特にダンスシーンの入れ替わる映像は印象的だった。ロンドンの舞台に立つことを夢見るサンディは結局騙され、男たちの慰みものにされ、夢を諦めざるを得ない、今のMeToo運動に通ずるものを感じた。エロイーズはこのまま精神を虫歯られていくホラーかと思いきや、実は大家がサンディであり、アレクサンドラだったとは。。エロイーズの自殺した母親が所々ミスリードに使われ、いつ出てくるだろうと思っていた。
落ち着けエリー
かつての同僚にとんでもなく霊が見えて困るくらいだと話している人がいた。人に憑いているものも分かるらしく、遠回しに、気をつけたらよいことを教えてくれたりもしていたが、とにかく冷静沈着。思慮深くて控えめ。15年ぶりにまた同僚となったその人は、お払いをして見えなくなったらしい。
そういう同僚を見ているからなのか、劇中、あまりの環境の変化があったにせよ、尋常じゃなくうろたえるエリーに違和感があり、下手をするとクラスメートを殺してしまいそうになったり、車に轢かれそうになったりするたびに「いいからエリー、いったん落ち着け」と何度も独り言を言ってしまった。
謎解きの要素もあるサスペンススリラーとしてのアイディアはよかったが、最後まで落ち着けないエリーがもったいない。トーマシン・マッケンジーにアニャ・テイラー・ジョイという若手の人気俳優による共演だったので、とても期待したのだけれどなあ。マッケンジーはますますきれいになったし、アニャも貫録十分だっただけに、脚本をもっとどうにかしてほしかった。
60年代のファッションも楽しい
田舎からファッションの勉強をしに都会に出てきたおしゃれ大好きなエリーが、一人暮らしを始めた部屋で毎夜60年代の1人の女性を辿る夢を見る。
次第に夢と現実の区別がつかなくなるのが怖いが、60年代のファッションがすごく可愛くてつい魅入ってしまう。
いつも過去に観た様々な映画のオチを頭の中で勝手に引き出しては結末を読もうとしてまうクセがあるが、この結末はなぜか想像できなかった。
エリーが大家に前金を返してもらうと部屋に招き入れられた後、あれほどタバコ禁止と言っていた大家が、イライラしてつい吸ってしまった、と発言したところでやっと気づいた。
エリーを悪く言っていたルームメイトは、錯乱したエリーに刺されそうになった以外に痛い目みなかったのがちょっと不満。
人を見かけだけで判断し、悪口を言い、自己承認欲求の塊ですごく嫌な女。
華やかな悪夢
60年代の華やかな音楽がこのストーリーの不穏さと切なさを彩っていた
音楽とストーリーのギャップがベイビー・ドライバーに似ているなと思ったら監督が同じで納得
ざわつき、爽やか、切なさ、おぞましさ、温かさ
ごっちゃ混ぜにして、クセになる感じ
それでいてストーリーも引き込まれる
私は何度もあの部屋で殺された、死んだ
エロイーズが男たちの亡霊に耳を傾けて助けてくれあいつを殺してくれと言われて
結果殺人鬼になってしまったサンディに、あなたを見てきたから、、一緒に生きようと言って抱きしめたのがとてもよかった
そう、この男どもなーにほざいてんだって感じで
彼女の心をずっと殺してきたんだよあなたたち
自覚のないまま死んだんでしょうね、本当に色々と残念です、、
心がきれいなエロイーズだったからサンディの心を救えた気がする
夢の再現の仕方もリアルで素晴らしかったし
ホラーでありながら好きなシーンが多い作品だった
エロイーズと同様に観客も一緒に夢を見ていた気になるため、歳をとっても男たちの亡霊に怯えていた彼女が本当に可哀想で、、それが心の殺人な訳で、、
同じようなことがこの時代にもまだ起きてる訳ですよね、、
女性の様々な権利が叫ばれるこの時代にひねりの効いた作品
映像美と不思議な世界
エドガー・ライト監督の前作『BABY DRIVER』の選曲や作風が好きで鑑賞しました!
映像が素晴らしく、映画館で実際にソーホーの街にいるような感覚になりました✨
個人的には鏡のなかに昔のサンディが映り、ダンスホールでジャックと踊るシーンが1番好きです!
俳優さんの演技と衣装も素晴らしいです👏🏻✨
やはり監督の選曲が素晴らしく、映画のシーンと曲が非常にマッチしていました。
音楽と映画の場面・主人公の気持ちがあっているので、映画のシーンがとても印象的で記憶に残るイメージでした。
2021年に映画館で鑑賞したなかで1番印象的な作品です(*^^*)
魅入っちゃう
最初は夢を追う少女のお話かと思ったが、全然違った。
アニヤ・テイラー=ジョイもトーマンシーマッケンジーもかわいい。
エドガーライト作品にハズレなし。大当たりばっかり。
憑依系かと思ったら、本人が憑依のスイッチをオンオフできるのは珍しい気がする。
男の子がただずっと可哀想だった。あんな良い子いるのか。
どんでん返し風だけど、この映画の醍醐味はそこじゃない。
ソーホーの雰囲気を味わう映画だった。
おしゃれでだけど怖いし少しエグいから人に勧めにくいかも。
何が面白いの?これ?
ごめんやけどこれが面白いって言うやつの感性どうなってんの??
ホラーにしたらパンチよえーし、ミュージカルかな?と思ったらまたこれもパンチよえーし、マジで面白いと思った理由教えてほしいわ。
音楽がいいっていう感想はまだ分かるが、それじゃあよー音楽聞いとけよ60年代のよー。
多分この映画って感受性強い女にウケそう。
男が見たら9割寝てしまうぐらいつまらない。
主人公の女優2人が可愛かっただけで、最後は毒飲まされても、家火事になっても、刺されてもハッピー!!!ってなんじゃい
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