劇場公開日 2021年12月10日

  • 予告編を見る

「ホラーと呼ぶには余りにもカラフル、60‘sポップスの歌詞が物語に寄り添う『シックス・センス』ミーツ『君の名は。』みたいな血塗れ青春ムービー」ラストナイト・イン・ソーホー よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ホラーと呼ぶには余りにもカラフル、60‘sポップスの歌詞が物語に寄り添う『シックス・センス』ミーツ『君の名は。』みたいな血塗れ青春ムービー

2021年12月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

母を幼い頃に亡くし祖母と二人暮らしのエロイーズは60年代ファッションとポップスが大好きな女の子。ファッションデザイナーになるのが夢だった彼女はロンドンにあるデザイン専門学校に合格、憧れのロンドンにやって来るが寮生活に馴染めず、ソーホー地区に大家の意向で改装されていない古いアパートを見つけて移り住む。実家から持ってきたビニル盤のレコードを聴きながら眠りに落ちたエロイーズは夢の中で60年代のソーホー地区に迷い込み、歌手になることを夢見るサンディに出逢い彼女に魅了されてしまう。それから毎夜夢の中でサンディに同化して夜のソーホー地区に繰り出すようになったエロイーズは現実でもサンディに感化されて生き生きと過ごせるようになるが、その裏でエロイーズとサンディには黒い影が忍び寄ってきていた。

現在と60年代を頻繁に行き来する物語ですが、60’s英国ポップスの柔らかくきらびやかなサウンドと60年代的な色遣いのシックな映像が全編を覆っているので半世紀の時間を跨いているのに一本筋の通った統一感がある不思議な作品。エロイーズがサンディに同化していく様を序盤からトリッキーな撮影と編集で念入りに描写しているので、時制が交錯する中盤以降のサスペンスに軽い眩暈のような快感が伴います。序盤からポツポツとばら撒かれる伏線が終盤に近づくにつれて矢継ぎ早に回収されていくのでクライマックスの展開がうっすらと読めてきますが、こちらの期待よりも少し遠いところにポトリと落ちる結末には凄惨と清涼が綯い交ぜになっていてホラーと一言で片付けるのが勿体ない血塗れな青春映画です。

とにかく主演のエロイーズとサンディを演じるトーマシン・マッケンジーとアニャ・テイラー=ジョイの凜とした美しさが鮮やか。物語を彩りながら歌詞の内容を物語に寄り添わせるサントラチョイスにも一切隙がないところは、現代の話なのに70’sぽい映像で統一されていた『ベイビー・ドライバー』と双璧。物語が突然暗転する冷たいサスペンスは『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』にも通底していて、作品ごとに全然異なるテイストを持ち込みながらも一貫した作家性を滲ませるエドガー・ライトの力量に驚嘆しました。

意外と印象的だったのはソーホーを徘徊する謎の男を演じるテレンス・スタンプ。物語を一瞬であらぬ方向に振り回す鋭い眼光は忘れ難い余韻を残します。

よね