「家父長制からの解放。」ミラベルと魔法だらけの家 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
家父長制からの解放。
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家族=血族を無条件にいいもののように謳い上げるものが苦手だ。それこそ『リメンバー・ミー』なんかは提示している家族像が「全員が善良かつ音楽的才能がある」という極端に限定されたもので、そこに当てはまらない敵は家族を持つこともできずに退場していく。いや、家族はそんなに都合のいいものではないし、そもそも善悪とかを超えたところで否応なしに結ばれるのが血縁ではないか。そして血族は、ときには喜びにも呪いにもなる。と、そんなテーマ性にちゃんと踏み込んだのがこの映画だと思う。
ミラベルの家族に特に悪人がいるわけではないのだが、誰もが家父長制に囚われたり、能力を発揮して家族(とコミュニティ)に尽くすことが最上だという価値観のせいで、内心ではプレッシャーに悩まされている。しかし、貢献度や能力ではないところで、一人ひとりは好きにしていいし、認められていいのだというメッセージは、短絡的な家族礼賛からようやくここまで来たかと思わせてくれるものだった。
……なのだけれど、バラバラになった家族がもう一度ひとつになるための手放したのが「魔法」だったのに、なんか奇跡が起きて魔法も戻ってきたよやったね!のラストはちょっと唖然としたし、正直蛇足だったのではないか。ファミリー映画だからと言う人もいるかも知れないが、せっかくここまで踏み込んだのだからどうしても勿体ないと思ってしまう。
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